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悪役令嬢は婚約破棄を言い出した王子様に決闘を申し込む。  作者: 藤宮サラ
第一章 決闘まで

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【番外編】イスマエルとアリアナのパーティー(イスマエル視点)

ブックマーク、評価、そして感想、ありがとうございます。感謝感激です。

昨日から悩んでいた、今日の投稿分、皆様の励ましのおかげで、なんとかまとまりました。

ありがとうございます。

番外編、続行です。お付き合い頂けますと幸いです。

『』は外国語として、表しています。

 アリアと最初に外出してから、3週間がたった。


 あの後、結局アリアには、詳しい話を聞けなかった。


 その後調べさせたが、アリアナには兄が一人いて、クロードの側近だという事だった。そしてアリアナと兄は幼い頃から王家と親交があったらしい。


 あの事件の時、アリアは確かに拘束魔法を使った。

 授業での彼女の実力とは全然違った。

 騎士は少将と言っていた。あの騎士はこの国の魔法師団の者だった。彼女は魔法師団とも関係があるのか。


 詳しく知りたいと思う反面、拒絶される事が怖くて、話を聞く事が出来なかった。


 彼女はよく我が国の大使館に顔を出すようになった。

 大使夫人にとても気に入られ、夫人と二人で過ごす事も多々ある。彼女は私の国の料理を習っているようだ。


 また、我が国の資料と睨めっこしている時もある。そして、次々と策を打ち出す。


 その一つが名産品の販売ルートの確保だ。

 我が国の輸出品は、宝石が主だった。

 彼女は、食品や美容液なども特産品として売れると、夫人方が集うお茶会に顔を出し、宝石と共に売り込んでくれた。

 サンプルはその為の物だったのだ。

 そう、話が上手いのだ。自分から言い出す訳ではなく、他の人が知りたくなるように会話を誘導する。

 結果、入手が難しいが、物は良い物だと言う評判が社交界でたった。

 彼女はそこを見逃さず、販売ルートを確保し、高値で売れるようにお膳立てした。

 その辺りの商人も真っ青になる手腕だ。


 もう驚く事はないかと毎日思うのだが、次から次へと驚かされてばかりだ。

 今まで、図書館に籠もっていた事が嘘のように、私も忙しい。


 あれほど億劫だった社交界も、とても有益であった。

 アリアは私に、貿易の相手となるような相手を紹介してくれた。


 一番は彼女の父君のファーガソン公爵だったが。

 彼は手広く事業を手掛けており、今回の商談もかなりの金額になりそうだ。


 その他にも灌漑に関しての専門家や農業の専門家など、適切な人物を次々と紹介してくれた。

 彼女の人脈の広さに驚かされる。


 ある日、大使と二人で打ち合わせしていたら、突然大使がアリアの件で話があると言う。


『殿下、アリアナ嬢を妃にお迎えになられては?』


『彼女はクリストファーの婚約者だ。』


『それは存じております。ですが、殿下こそアリアナ嬢を必要とされていらっしゃるのでは?』


『必要?』


『アリアナ嬢が最初にいらした時に仰ったのです。殿下が寝食忘れて、図書館に籠もっていらっしゃると。せめて食べる事だけは大事にして欲しいから、我が国の料理を教えてほしいと。殿下はここ3週間でお顔の色も良くなり、目もやる気が満ちています。これはアリアナ嬢のおかげではありませんか?』


『アリアナが?』


 そう、一緒に食事を取るようになり、私は食事を抜く事がなくなった。


『ええ。そして私が、我が国の為に色々と働いてくださる事を、感謝申し上げると、感謝は殿下に言って欲しいと。』


『私に?』


『殿下こそが、民の声を聞き、民の為に働いていると。アリアナ嬢は自分の為に働いているのだから、気にしないで欲しいと。』


『アリアナがそんな事を。』


『でも私はアリアナ嬢は我が国の為に、働いてくださっていると思います。彼女ほど殿下の妃に相応しい方はいらっしゃらないと思いますが。』


『彼女は私の事は、友人ぐらいにしか思っていない。私が彼女に興味がないから、一緒にいても問題無いと思っているそうだ。』


『では、このまま彼女がクリストファー殿下とご結婚されても良いのですか?クリストファー殿下には女性との噂が絶えない方だと。しかし、王妃様はクリストファー殿下の補佐として、アリアナ嬢を必要とされています。例えクリストファー殿下が他に心を寄せる方が出来たとしても、アリアナ嬢が妃となる事は覆らないでしょう。』


『それはアリアも言っていた。お飾りの妃にするつもりだと。』


『アリアナ様は賢い方です。ご自分の感情を殺してでも、国の為にご結婚されるかもしれないですね。』


『それは嫌だと言っていたぞ。だがら私に期間限定で恋人の振りをして欲しいと。』


『恋人の振り?殿下はそれを信じていらっしゃるのですか?』


『違うのか?』


『アリアナ嬢ほどの方が、無責任な事をなさるとは思いませんが。それは殿下を図書館から出す為だったのでは?』


『……』


『アリアナ嬢が偽りとはいえ恋人なのでしたら、殿下はこのチャンスを大事にされなければ。』


『 しかし…』


『では、アリアナ嬢が他の男性とご結婚されてもいいと?』


『それは嫌だ。』


『殿下はアリアナ嬢の事はどう思っていらっしゃるのですか?ただのご友人ですか?』


『アリアナは私にとって、なくてはならない人だ。誰にも渡したくない。』


『では、殿下、しっかりとアリアナ嬢のお心を掴んでくださいませ。私共も応援しております。』


 こんな話をしていたら、アリアと夫人が戻って来た。


『イスマエル様はダンスを嗜まれますか?』


『多少は。我が国のダンスなら自信はあるが、この国のダンスはあまり踊った事がない。踊れるとは思うが、上手くはないな。』


『1週間後の学校のインターナショナルパーティーで、わたくしをエスコートしていただきたいのです。そして最初のダンスを踊っていただきたいのですが…』


『クリストファーはエスコートしないのか?』


『彼はきっとカーラ様をエスコートされますわ。』


『他にはいないのか?』


『頼めば喜んでエスコートしていただける方はいらっしゃいますが、後が大変なのです。殿下はわたくしの恋人でしょう?お願いしますね。』


『だが、ダンスは…』


『殿下のお国のダンスで構いませんわ。わたくし習いましたから。』


 いつの間にと思う。聞けば、ここで夫人に習っていたそうだ。

 一体いつそんな暇があったのか?

 驚く事も最早慣れてしまった。気がつけば、


『ああ、よろしく頼む。』

 と答えていた。


 彼女の超人的なスケジュールに、彼女の体が心配になったが、いつも大丈夫と言う。

 笑ってはいるが、その表情の奥に寂しさが隠れているようにも感じる。


 それから数日後、彼女が大使館での打ち合わせの後、ソファーでうつらうつらとしていた。疲れが溜まっていたのだろう。

 寝顔は歳相応で可愛らしい。

 もう私はアリアに惹かれている事を素直に認めた。

 彼女が欲しい。

 彼女を手に入れる為に動こう。

 そう決めた日になった。


 私は彼女の手を取る。こんな華奢な手で、我が国の民を助けてくれたのかと思うと、とても尊い手に見える。

 私は手の甲にそっと口づけする。追跡魔法を発動して。

 彼女が私から離れても、居場所が判るように、困った事があれば、私を呼ぶ事ができるように。


 これで私は彼女の居場所を把握できる。そう思うと少し安心した。


 しかし、別の追跡魔法の気配を感じ、唖然とする。その追跡魔法はとても強い。術者の執着を感じる。


 彼女は知っているのか?いや、彼女は知らないのだろう。

 釈然としない気持ちになる。


 彼女の側でこれだけの執着を示している人物。クロードの顔が思い浮かぶ。


 先日の大使の言葉が脳裏を横切る。

 そう、私こそ、彼女を必要としている。

 彼女を奪って何が悪い。クリストファーは彼女を大事にしないだろう。その兄であるクロードの側も彼女には居心地が悪い筈だ。


 そう思った瞬間に、クロードの魔法を解術するべく、呪文を詠唱して、アリアの額にキスを落とした。

 私は魔法解術も得意だったからだ。

 しかし解術は上手く出来なかった。奴の執着を見せつけられた気分になる。

 ただ、完璧な解術は無理でも、一部は解術できた。


 まだ、私には時間がある。

 これからじっくり攻めて行こう。

 アリア、覚悟しておくれ。




 忙しく過ごしていたら、あっという間に、パーティーの前日になる。

 その日は国際交流部主催のバザーかあった。

 アリアはその日は朝から忙しかったようだ。

 我が国の名産品も、いつの間にかアリアが手に入れて、並べられていた。


『いつの間に…』


『大使夫人がご用意してくださいました。頑張って売り込みますから、ご心配なく。明日はよろしくお願いしますね。』


 そして、インターナショナルパーティー開始前、別館の貴賓室に呼び出された。

 そこには、我が国の大使夫妻が立っていた。

 あれよあれよと言う間に、着替えさせられる。

 我が国の正装とされる民族衣装である。


『殿下、よくお似合いです。』


『夜会服でなくとも良いのか?』


『問題ありません。これは我が国の正式な服装です。』


 そこへ、夫人がアリアの準備が終わった事を告げる。

 夫人に伴われ、部屋に入ってきたアリアは、我が国の民族衣装を着ていた。

 金色の髪と同色のサッシュと中央の我が国独特の刺繍、ドレスの暗い緑色に良く映えていた。彼女は首飾りとイヤリングは、金で出来た花のモチーフにアンバーがあしらわれた可憐な意匠のものだった。

 長い金色の髪は横に編み込まれ、所々に花が散らされている。

 落ち着いたドレスは、一層彼女の麗しさを際立たせる。


『殿下、お声掛けくださいませ。』


『あー、良く似合っている。』


『殿下!それだけですか!』


『ふふふ…良いのです。殿下にとって、あれ以上のお言葉はないのでしょう。十分ですわ。殿下もとても素敵ですわ。民族衣装だと殿下の魅力が引き立つのですね。今日は他の女子生徒から羨ましいがられそうですわ。』


 彼女は微笑む。

『参りましょう。殿下。今日は最初のダンスが、殿下のお国のダンスです。お国をアピールするのに絶好の機会ですわ。』


『ああ、よろしく頼む。』


 そして、パーティー会場に足を踏み入れた。


 会場から、感嘆の声が聞こえる。

 そう、彼女は眩いばかりの美しさだった。

 我が国の衣装がよく似合う。このまま花嫁にしてしまいたい。


 周囲の男達から、射る様な視線を感じる。

 だが、彼女は私のものだ。

 今、彼女の隣を許されているのは、この私だ。


 彼女と二人で、我が国のダンスを踊る。

 難しいダンスだが、彼女は軽やかに踊った。


『このダンスは楽しいわ!』


『それは良かった。驚いたよ。こんなに上手だなんて。』


『ふふふ。殿下も素敵ですわ。女子が群がりますよ。』


『アリアだけでいい。それに、今は私の恋人はアリアだろう?』


『ええ。そうですわね。でも、殿下が本当に気になる方がいらっしゃるのであれば、わたくしとの恋人の契約は白紙に戻しますわ。もちろん、殿下のお国への援助等はそのままで。』


 アリアから恋人解消の話が出るとは思わなかった。

 改めてアリアは私の事を友人としか思っていない事にショックを受けるが、嫌われている訳ではないと思い直す。


『アリアがいい。このままでいておくれ。』


『わかりましたわ。でも先程のお話はお心に留めてくださいませ。』


 今、アリアの一番近くに立つ事を許されているのは、私だ。


 周囲の射る様な視線を挑発するように、私とアリアは密着して踊る。


 アリア、君を奪って国に帰るよ。我が国で君が心から笑って過ごせる様に、幸せにするよ。


 そう心の中で、誓った。






お読みいただき、ありがとうございました。

イスマエル編、一旦終了です。

ブックマーク、評価、感想、頂けますと嬉しいです。毎日書き続ける気力になります。

また、昨日までの皆様のブックマーク、評価、感想の御礼として、アリアナの小話を今日の夕方までに投稿したいと思っています。昨日現実逃避して書いてしまった分を今見直しています。軽く書いた短めの小話です。

番外編、まだ続行予定です。

お付き合い頂けますと幸いです。

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