【番外編】イスマエルとアリアナとクロード(イスマエル視点)
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番外編のイスマエル編です。番外編ばかりですみません。
今回はクロードが登場です!
どこに行くのだろうか?
彼女は市場でりんごを籠いっぱいに買って、両手に重そうに持つ。
更に近くの飴屋で、飴が入った大袋を2袋買う。
フラフラ歩きながらも、助けを求めない彼女を微笑ましく思いつつ、籠を取り上げた。
『ありがとう。重いでしょう?大丈夫?』
『アリアよりは力があると思うけど。』
『あら、わたくしも力はあるのよ。』
そんな会話を楽しみながら、歩いていると、小さな建物に辿り着く。
そこは孤児院だった。
『ここは、わたくしが昔からお世話になっている孤児院ですわ。』
『お世話になっている?』
『ええ、わたくしが保護した子供達を受け入れてくださっているのです。』
『アリアが保護?』
何でアリアが保護するのか?
『ええ。』
「リアさんだ!先生リアさんが来たよ!」
「こんにちわ。今日はりんごを持ってきたわ。私のお友達のお兄さんも一緒なの。仲良くしてね。」
「わーい!」
私の疑問は、子供によって遮られた。
彼女は子供達に囲まれて、歌を歌ったり、本を読んだりしていた。
私はりんごと飴が入った籠を年配の女性に渡す。
「彼女はよくここに来ているのですか?」
「ええ、月に一度はいらしています。」
「彼女が子供を保護していると聞いたのですが。」
「ええ、リア様が街で保護された子と、人買いから保護した子を預かっていますわ。王都は比較的恵まれていますが、地方はまだまだ貧しい家庭もあります。そんな家の子供が王都に置き去りにされるのですわ。」
「そうですか。」
「リア様のおかげで、ここは問題なく運営できていますが、国の中にはまだまだ恵まれない施設もあります。リア様はその様な施設も救済できる仕組みをと取り組んでおられるのです。」
彼女を盗み見るが、今までに無い笑顔で子供達と接している。明るく生き生きとしていて、あるがままの彼女にとても惹きつけられる。
子供達とおやつを取った後、孤児院を後にし、馬車が待つ街の広場へと向かった。時間が経つのは早いもので、もう空は茜色に染まっていた。
『殿下、お付き合い頂きまして、ありがとうございました。孤児院は私が癒される場所なのです。彼らがいるから、私も頑張らないといけないと思う事ができるのですわ。わたくしの自己満足でしょうけれど。』
アリアはそう言いながら、哀しげに微笑む。
『イスマエルだ。』
『えっ?』
『イスマエルと呼んで欲しい。』
『そうでしたね。イスマエル様』
彼女はクスっと笑った。
広場が近くなった時、路地から女の子の叫び声が聞こえた。
彼女は立ち止まり、周囲を確認する。
『イスマエル様、護衛の方はいらっしゃいますよね。わたくしはちょっと仕事をしてきます。先にお戻りください。わたくしは自宅も近いので、ご心配なく。』
そう言って、駆け出した。
『おい!待て!どこに行く!』
私も慌てて追いかけた。
仕事って何だ?と思うが、それより彼女を追うのが先だ。
私はアリアを追いかけながら、彼女が走って行った方向に向けて追跡魔法をかける。私の得意な魔法だ。
彼女の跡を追っていくと、狭い路地の行き止まりに、アリアナの姿が見えた。
彼女は呼び笛を吹く。
ピーと甲高い笛の音が辺り一面に響く。
「このアマ!何しやがる。」
屈強な男3人と対峙している。
男達の向こうに10歳ぐらいの少女が屈んで震えている。
「その子を放しなさい。」
「何馬鹿言っているんだ。ああお前も一緒に売り払ってやろう。よく見れば、綺麗な顔をしているじゃないか。きっと高く売れるぜ!」
「バカな事言ってないで、早くその子を放しなさい。」
「なに!このアマ!」
男達がアリアナに飛びかかろうとした。
私は慌てて止めに入ろうと、彼女の元へ急ぐ。
ほんの数秒だったはず。
私が彼女の元へ辿り着いた時には、男達は倒れていた。
『アリア!危ないじゃないか!』
『イスマエル様こそ、何で帰らなかったのです。危ないじゃないですか!』
『君は女の子だろう!何でそんな無茶するんだ!』
そこへ、騎士団らしき集団がバタバタと駆け付けた。
「あのー。お取り込み中、申し訳ありません。」
リーダーらしき若者が声をかけてくる。
「あんた達、遅いわよ!私が通りかかったからいい様なものの。何サボっているの!」
「少将、申し訳ありません。」
「誰が少将よ!そう呼ぶなって言ったでしょう!」
「はっ!失礼いたしました。」
「後はお願い。拘束魔法かけているけれど、きちんと縛って連行して。女の子の事も頼んでいい?」
「了解です。」
「それと、私がいた事は、団長には内緒よ。」
彼女は今までと全く違う姿を見せる。
少将って言っていたよな?どういう事だ?
彼らにテキパキと指示を出していく。
私が呆気に取られていたら、背後から足音が2人分聞こえた。
振り向くと、騎士服のクロードとその側近らしき人物がいた。何故こんなところに王子であるクロードがと疑問に思うが、彼の声に遮られる。
「誰に内緒だって。」
クロードが低い声を出す。
「きゃ!」
「イスマエル様助けて!」と言いながら、アリアが私の背に隠れる。
「アリアナ、出ておいで。この事件の件、報告して貰おうじゃないか。」
クロードが怒りを含んだ声で、アリアに話しかける。
「わたくしは今日はお休みを頂いてます。報告はそこの騎士達がしますわ。」
彼女は私の後ろから答える。
クロードはアリアの返事を待たず、近付いて来る。
私は彼女を後ろに隠し、クロードに向き直る。
彼とは、何回も外交の場で顔を合わせていた。
「久しいな。クロード。」
「お前は、イスマエルか?」
「ああ。アリアナ嬢は今日は私の頼みを聞いて、街を案内してくれたんだ。たまたま事件と遭遇しただけだ。これから我が国の大使に彼女と呼ばれているので、これで失礼するよ。ああ、彼女はきちんと送り届けるので、心配するな。」
私はそう言って、彼女を庇いながら、クロードの横を通り抜けようとした。
クロードは、彼女の腕を掴む。
「アリアナ、行くな!」
彼の瞳には、明らかに彼女への恋情と私への嫉妬が浮かんでいた。
その瞳を見た瞬間に、私はアリアを彼には渡したくないという感情が現れた。
気が付けば、クロードの手を払っていた。
「アリアが嫌がっているだろう?彼女は私との約束がある。君は仕事だろう?」
私はクロードの手が離れたアリアを背に庇い、クロードと対峙する。一触触発かと思ったが、一緒にいた男が助け舟を入れる。
「クロード、落ち着け。相手も王族だ。大使とのトラブルもまずい。」
クロードは怒りをなんとか堪えている様だ。
かなり親しい側近なのだろうと思っていると、その彼がアリアに親しげに話す。
「アリアナ、明日の午後、俺の執務室に来い。今日の報告だ。その後は家に帰るぞ。母上が心配している。」
「嫌よ。報告する事ないわ。私は捕まえただけよ。何も知らないわ。後はあいつらを尋問して、報告書書くのは、彼らの仕事でしょう?私は忙しいの。家でゆっくりする暇ないんだから、そうお母様にも伝えて。明日も彼と予定があるの。構わないで!」
と言って、私の腕にしがみ付く。
「お前なぁ…そんな事して。説明に来ないなら、押しかけられるぞ。」
「誰が?」
「そんなの決まっているだろう?」
「兄様?そんなに暇なの?」
「ちが〜う!」
「じゃあ、お母様?」
「違うって。」
「じゃあ誰よ!これ以上いろいろ言われるのなら、魔法師団は辞めるわ。というか、元々正式に所属している訳ではないし。わたくしに構わないで!」
アリアのその言葉にクロードが鋭い眼差しを向ける。
「それは許さない!」
アリアは怯えて、私にしがみ付く。
「怖い!」
「クロード、怖がらせるなって。アリアナ、じゃあ、いつだったらいいのか?」
「新しい仕事始めたから、当分無理!」
「新しい仕事?俺は聞いてないぞ。」
「だって昨日始めたばかりだもの。」
「お前、いつも何かやらかす前に相談しろって言っているだろう!」
「だって言ったら反対するじゃない。 言う訳ないでしょう!」
突然始まったやり取りに呆気に取られていた。
随分親しげだと思ったら、兄の様だ。
兄とわかり、安心した自分に苦笑する。
私は彼女の本当の恋人でもないのに。
彼女は私の後ろから、顔だけを出してやり取りしてる。その姿はさっきの大男相手に啖呵を切った人物とは思えない。
私にしがみ付きながら、話している姿は守りたくなる。
クロードは私の事を険しい眼差しで見ている。
アリアはクロードから呼び出されると言っていた。
弟の婚約者なのにとそのとは訝しく思ったが、彼はアリアに惚れている。そう確信するまでに時間は掛からなかった。
アリアは今は仮とはいえ、私の恋人だ。
この好条件を最大限に生かしてやる。
クロードには渡したくない。
そう、私は自覚してしまった。
アリアが私にとって、特別な女性になっている事を。
これ以上、クロードといる事は得策では無い。
私は、アリアを連れて、
「失礼。先を急ぎますので」
と、その場を後にした。
背後から、クロードが
「アリアナ!」と呼ぶ。
私はアリアの腰に回した手に力を入れ、後ろを振り返らなかった。
お読みいただき、ありがとうございました。
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イスマエル編、この後1話で一旦終了の予定です。イスマエル編がなかな上手く纏まらなく、現実逃避してしまい、アリアナ視点の閑話に走ってしまいました。反省です。はい。今から頑張ります。
明日、イスマエル編を投稿の予定です。
お付き合い頂けますと幸いです。




