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悪役令嬢は婚約破棄を言い出した王子様に決闘を申し込む。  作者: 藤宮サラ
第一章 決闘まで

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【番外編】イスマエルとアリアナの契約(イスマエル視点)

ブックマーク、評価、感想、ありがとうございます。毎回読んでくださる方がいらっしゃると思うと、続けていく気力になります。

番外編、続行です。アリアナのその後もボチボチ書いていますが、王子たちの話が終わらない…反省しています。


『』は外国語として、表記しています。

 彼女は私の言葉に、満面の笑みで答える。


『殿下が話がわかる方で助かりましたわ。』


『で、恋人役というが、具体的に私は何をすれば良いのか?』


『ええ、これが契約書ですわ。』


 彼女は2枚の書類を取り出す。


 そこには、幾つかの契約内容が書いてあった。


 恋人として振舞う事、これは契約すると言ったからには問題ない。


 週に2回以上一緒に食事を取る事、これはどんな意味があるのか?


『なんで食事を一緒に取らないといけないんだ?』


『打ち合わせを兼ねてですわ。話を擦り合わせなければ、他の方に疑われるわ。』


 それはそうだが…


『食事はこの建物で二人だけだから、問題ないですわ。』


 学校パーティーや社交界の夜会はエスコートする事。社交界まであると、辛いな。


『学校のパーティーはわかる。社交界はいかなければならないのかい?』


『ええ。わたくしが参加するものはご一緒して頂きたいですわ。わたくしも厳選しますから、そんなには多くならないと思います。』


 一緒に外出をする。とある。女性と外出などした事がないが。

『この外出とは?』

『全てとは申しませんが、わたくしが希望した時に一緒に外出をしていただきたいのです。仲の良い事を見せる為に必要ですわ。』


 国際交流部に入部するとあるが…

『国際交流部とは?』

『わたくしが主催しております、留学生と一般生徒との交流会でございます。わたくしの恋人であれば、一緒に過ごす時間が必要ですわ。』


 社交界だけは大変そうだが、厳選すると言っていたので、何とかなるだろう。


 と、書類の先を読む。

 彼女は、緊急援助物資を送る事、干ばつ対策の費用の融資の実現、技術者の育成、南の国の経済についてのコンサルティングを、対価として用意するとあった。


 これでは、彼女の負担はかなりの量になる。


『これは貴女の負担分が多いのでは?』


『殿下の貴重なお時間を頂くのです。これぐらいの負担は当然です。』


『この契約内容で宜しければ、サインをお願いいたします。ご希望であれば、魔法契約もできますが?』


『いや、貴女を信用しよう。』


 私はサインをした。


『それでは、殿下はわたくしのことを、アリアナもしくはアリアとお呼びくださいませ。』


『貴女はどちらがいいか?』


『殿下のお好きな方で。』


『では、アリアと呼ぼう。貴女も私の事はイスマエルで良い。』


『それは恐れ多いので、イスマエル様と。』

 彼女は微笑みながら言った。


 とんでもない事に巻き込まれているにも関わらず、私はこれから起きるであろう事に期待をしている事に気付く。


 そこで、改めて彼女の相手は誰だと考えたが、思い出せない。王子と言っていたか?


『アリアの婚約者とは、誰だ?』


『ふふふ…やっぱりそこからですよね。我が国のクリストファー殿下ですわ。』


『クリストファーか…』


 クリストファーも同じクラスだったか?

 彼は数回会った事があっただろうか。

 私の視界には彼は入っていなかった。いや、今まで誰も視界に入れていなかった。


『申し訳ない。私は誰も視界に入れていなかったようだ。』

 そう、素直に謝れば、


『存じておりますわ。だから恋人役をお願いしたのです。』

 彼女はそう言って微笑んだ。


『早速ですが、イスマエル様にお付き合い頂きたい場所がございます。一つは明日、町にお付き合いください。もう一つは1ヵ月後のパーティーに、エスコートしていただきたいのです。』


『明日は授業だろう?』


『ええ。なので、殿下は体調不良でお休み頂くのです。わたくしも明日は持病が酷くなるので、お休みします。先生方には話しておきます。』


『は?』

 私は彼女の言葉が理解できない。


『それはどういう意味だ?』


『明日は授業を休んで、契約の一部を実行しますわ。明日の朝、お迎えに上がります。』


 そう、彼女は言って微笑んだ。


 翌朝、私は珍しくスッキリ目が覚めた。

 朝食を終え、身支度を整えていると、侍従が来客を伝える。


 昨日の狐につままれたような話は、本当だったか。


 迎えに来た従僕に案内されるまま、馬車に乗る。

 馬車には、アリアが既に乗っていた。

 彼女は町娘のような、シンプルな水色のワンピースを着ていた。昨日は女神の様だと思ったが、今日の彼女は妖精の様だと思う。


『ご機嫌よう。イスマエル様』


『おはよう、アリア。昨日の話は本当だったんだな。』


『あら、わたくしが(たばか)ったとも?』


『いや、昨日は狐につままれたかと思った。』


『わたくしは女狐ですか。』


『いや、失礼な事を言った。申し訳ない。』


『ふふふ…いいのです。最高の褒め言葉ですわ。それにしても、殿下は人の良い方ですわ。女狐如きに素直に謝ってくださるなんて。』


『私は女狐とは言ってないぞ。それに自分が悪いと思えば、謝る事は当然だろう?』


『それが出来ない方がどれほど多いか。』

 彼女はため息をつく。


『ところで、持病は良いのか?』


『ああ、あれはわたくしが授業を抜ける為のいい訳ですわ。王宮へ呼ばれる事が度々あるものですから。先生方にはきちんと説明しております。』


『王宮?クリストファーはアカデミーにいるのにか?』


『呼び出しは、クリストファー殿下からではありませんわ。クロード殿下や王妃様です。』


『クロード殿下?』

 何で第一王子が彼女を呼び出すのか?


『ええ、兄がクロード殿下の政務官をしておりまして。わたくしも幼馴染みですから。』


 そんな話をしていると、馬車が止まる。

『着きましたわ。』

 彼女をエスコートして、降りると、魔法具の店の前だった。


『ここは?』

『魔法具の店ですわ。入りましょう。』


 何で魔法具の店なのかと思いながら、彼女についていく。


「いらっしゃいませ…って、オーナー、どうされたのです?表からいらして。」


「あら、わたくしが表から入ったら何か問題あるのかしら?」


「いえいえ、滅相もない。そちらはお客様でいらっしゃいますか?応接室を用意いたしましょうか。」


「わたくしの執務室でいいわ。お茶を用意して。」


 彼女は30代ぐらいの店員と気軽に話している。

 しかし、今彼はオーナーと言っていなかったか?

 私は訝しげに彼女を見たが、彼女はそんな私の視線をものともせず、


『殿下、こちらへ』

 と私を執務室へと案内した。


『ここは?』


『わたくしの執務室ですわ。』


『アリアの?』


『ええ。ここはわたくしの店ですから。』


『君の父上のではなく?』


『確かに最初は融資を受けましたが、今は返済は済んでおります。まぁ父は完全には手を引いてはくれませんが。』


 私は驚いた。()()の変わった令嬢だと思っていたが、とんでもない思い違いだったらしい。いや、変わっているのは間違いないだろう。普通の令嬢は店など経営しない。彼女は一体何者だ。


 そこへ、先程話していた店員がお茶と共に入って来た。


『イスマエル様、彼はわたくしの右腕のセオドールです。セオドール、彼は南の国のイスマエル皇太子殿下です。』


『お初にお目にかかります、セオドールでございます。殿下の御高名はかねがね承っております。どうぞお見知りおきを。』


 驚いたことに、彼も流暢なサイード語を話した。


『殿下、彼が援助の実務を担ってくれますわ。殿下の信頼できる部下の方を紹介して頂けますと、最初の食料援助について、具体的に話を進めますわ。』


 彼女は真っ先に私が憂いていた我が国の民の為に動くと言う。

 私は驚いた。てっきり援助などの話は恋人役が終わってからだと思っていた。契約の成功報酬だと。


『殿下?』


 私があまりにも驚き、言葉を発する事が出来なかったら、彼女が怪訝そうに私に声を掛ける。


 私は慌てて

『いや、すまない。ちょっと驚いただけだ。ありがとう。我が国の民の為に。』


『まだお礼は早いですわ。民に届いてから、仰ってくださいませ。で、どなたかご紹介いただけますか?』


『ああ、王都にある我が国の大使館に我が腹心の部下が一人いる。』


『では、今から大使館にお伺いしてもよろしいですか?』


『彼は大使館内にいるはずだから、可能だろう。』


『こちらにいらっしゃる大使は信用に足りる方でしょうか?』


『彼は私が幼少の頃から仕えてくれている忠臣だ。』


『では、大使ご夫妻をわたくしにご紹介くださいな。わたくしも以前お会いした事はありますが、殿下からお口添え頂くと、話が早く済みそうですので。』


 そうして、我々は王都に向かった。



お読みいただき、ありがとうございました。

ブックマーク、評価、感想、いただけますと、嬉しいです。


次回はイスマエルとアリアナのデート?場面を書きたいと思います。

明日までに仕上げる予定です。


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