【番外編】北の国のヨハネスとアリアナ1(ヨハネス視点)
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今回は、ヨハネス視点です。
元々軽い気持ちで出してしまった人物。国名も慌てて付けました。反省です。
『』は外国語表記です。
僕は北の国・ノルン王国の王太子、ヨハネス-ノルンだ。ノルン王国と正式な名称はあるが、北の国と呼ばれる事が多い。それは我が国が北の寒冷地にある為だ。北の国では魔法を教える学校がなかったため、フランベール国の王立魔法アカデミーへ留学し、2年目、最上級生だ。
今日は、インターナショナルパーティーが開かれている。
国際交流部が主催し、各国の文化を紹介する事と、各国からの留学生との交流を図る為のパーティーである。
白薔薇姫と呼ばれるアリアナ嬢が、このクラブの中心的な役割を果たしている。驚いた事に、彼女は5ヶ国が堪能だった。
彼女は皆と和やかに話している。
彼女に視線を向けながら、1年前を思い出していた。
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僕の魔法力はムラがある。何とか安定して魔法を使えるようになりたいと思っていた。我が国は元々魔法力を持つ者が少なかった事もあり、僕はこの国に留学した。
初めてアカデミーに足を踏み入れた時は、緊張した。
国の学校では、フラン語の成績をはじめとする座学はトップクラスで、先生から褒められていたが、新しい学校で馴染めるだろうかと。
最初に危惧したように、言葉の壁が立ちはだかった。
自国であんなに勉強したにも関わらず、先生の話も、友達の話も、単語がいくつか聞き取れるぐらいだった。
まず話すスピードが違う。考えながら聴いていると、話がわからなくなる。
そして、僕が話すフラン語は、理解してもらえない。文法を間違えないようにと考えながら、話すので、話すスピードが遅くなるし、聞き返されると、焦って、次の言葉が出てこない。頭が真っ白になってしまうのだ。
更には、辞書にない造語がたくさん飛び交う。自分達の世代が作り出した言葉だ。当然僕はついていけない。
会話が成り立たないという事が、こんなにも心を疲弊させるとは思わなかった。
だんだん僕は他人を避けるようになる。
教科書は辞書片手になんとか読めるが、皆と読むスピードが違う。当然、読む量が足りず、授業に付いて行くのが難しい。
文章を書く時も文法を考えながら書く事が、こんなに大変とは思いもしなかった。
授業が終わった後、課題に取り組むも、終わらない日々が続き、自分自身がこんなに出来ない人間だったのかと落ち込む。
自国で優秀な王子だと言われていただけに、今まで自分が作り上げてきた矜恃をズタズタにされて、ショックだった。
フラン語で躓いても、僕には相談できる友人がいなかった。
数少ない知り合いの王子達にはプライドが優先して相談できない。
早々に落ち込み、ホームシックになった。
そんな僕を心配してくれて、同級生の女の子が声をかけてくれた。
『ヨハネス殿下、ごきげんよう。この国はいかがですか?』
それが、白薔薇姫、アリアナ-ファーガソン嬢だったのだ。
驚いた事に彼女は僕の国の言葉、ノルン語を上手に話した。そして、有難い申し出をしてくれた。
『ヨハネス殿下、授業でわからない事があれば、仰ってくださいませ。わたくしでよろしければ、喜んでお手伝い致しますわ。誰でも母国語でない言葉で勉強するのは大変ですから。』
彼女が天使に見えた。
『本当に?』
『ええ、わたくしの他にもお手伝いしたいと考える生徒はおります。殿下は明るいお顔がお似合いですわ。どうぞお顔を上げてくださいませ。』
彼女は僕が下ばかりを向いていたのを、気付いていたんだ。彼女との接点は少なかったのに。
僕は自分の殻に閉じこもり、周りに助けを求めなかった事を悔いた。
自分から声をかければ、世界が広がったのに。
彼女は僕を留学生のクラブに誘い、他の生徒たちと交流を持たせてくれた。
『ヨハネス殿下、こちらはニコラス様です。ノルン語を学んでいらっしゃいます。よろしければ、殿下が直接教えていただけると嬉しいのですが。わたくしは母国語ではありませんので。』
と、彼女はノルン語に興味がある生徒を紹介してくれた。
『私で良ければ、喜んで。』
ニコラスにノルン語を教える代わりに、ニコラスが僕にフラン語を教えてくれる。
自分が教えるという事は、思いの外、自分自身を取り戻す事に役に立った。ズタズタだった矜恃が、回復されていく。
ニコラスはフランベール国の伯爵家の次男だと言う。
頭の回転が早く、ちょっとした冗談をよく言う。軽いだけかと思ったら、剣の腕はクラスの上位で、魔法もA組にいる事からそれなりに出来るらしい。気がついたら、親友になっていた。
彼のおかげで、僕のフラン語はグングン上達した。
重くのしかかった劣等感も、霧が晴れるように消えていった。
『ニコラスと知り合えて、嬉しいよ。』
『俺もだ。普通なら王子様にこんなに親しく話せないよな。アリアナ姫に感謝だな。』
『彼女は素敵だなぁ。』
『ああ、男は皆彼女に一度は惚れる。』
『お前もか?』
『当たり前だ。俺の身分が高ければと何度思ったか。』
『お前はモテるじゃないか?』
『お前だって、女子からは人気だぞ。綺麗顔立ちにすらっとした体、男にしとくのはもったいないってな。ドレス着せてみたいって、言っていたぞ。』
『冗談でも気持ち悪い事言うな。お前だって、微笑みの貴公子なんて言われているんだろう。』
『お前ほどモテていない。お前は身分もあって、顔も良くっていいなぁ。』
『私がモテているのか?』
『お前自覚ないのか?』
『どうしたら、私がモテていると言えるのか?』
『最近、女子に構われているだろう?』
『あれは白薔薇姫が、私が馴染めるようにと皆に声をかけてくれたからじゃないのか?』
そう、あれから女子が構まってくれるのは確かだ。でもそれは姫が皆に頼んでくれたんだと思っていた。
『あーあ。無自覚怖い!』
『なんで怖いなんだよ!お前こそ、女子からお誘いが良くきているじゃないか?下級生まで人気で羨ましいな。』
『俺の事はどうでもいい!アカデミーにいる間ぐらい、片恋でもいいから、白薔薇姫を想いたい。』
『それはわかるなぁ。白薔薇姫いいよなぁ。』
『でも、彼女はクリストファー殿下の婚約者だ。』
『婚約しているのか?』
『なんだ?お前も彼女に惚れたのか?』
『悪いか?彼女は私が落ち込んでいる時に、声をかけてくれ、お前を紹介してくれたんだ。彼女がいなかったら、私は早々に国に戻るか、心が壊れていたよ。』
『そうだったなぁ。彼女、ノルン語完璧なのに、俺にお前の世話をして欲しいって頼んで来たんだ。ご丁寧に手作りクッキーまで添えて。』
『ちょと待て!お前アリアナ姫のクッキー食べたのか!』
『もちろん、大事に頂いたよ!』
『それ、ズルくないか?』
『お前の面倒を見た対価だ。』
『私にも食わせろ!』
『もう無い。残念だったな。』
『うー。私も食べたい。』
『バザーまで待つんだな。姫が手作りクッキーを出品される。』
『本当か!それはいつだ?』
『1ヶ月後ぐらいだったはずだ。ただし、男子だけではなく、女子も含めた争奪戦だから、覚悟しろよ。』
『女子もかよ。』
『白薔薇姫だ。皆な憧れなのさ。身分が公爵令嬢で王子の婚約者だけど、皆に優しい。お前も世話になっただろう?』
『ああ〜。私だけに優しくして欲しい…』
『それは皆思っているさ。クリストファー殿下以外は。』
『クリストファーは自分の婚約者だから、優しくされているんだ。いいなあ〜。』
『違うよ。クリストファー殿下は白薔薇姫を避けている。姫が優秀過ぎて、比較されるのが辛いらしい。』
『確かに白薔薇姫は完璧だ。隣に立つには覚悟が必要だな。だが、クリストファーも王子だろう?』
『なぁ、お前はクロード殿下を知っているか?』
『一度挨拶はした事がある。一つ上の学年だろう。』
『彼は完璧な王子だろ?』
『ああ。王子様って感じだ。』
『彼が第一王子なんだが、母君の身分がクリストファー殿下の母君より低い。二人のうち、どちらが王太子になるかと言われている。』
王家によくある後継者問題か。
『だから、完璧王子と常に比較されているクリストファー殿下は、完璧な白薔薇姫と一緒だと辛いのさ。』
『だからって、姫を蔑ろにしていい訳ではないだろう?』
『クリストファー殿下はそうは思っていないのだろう。何で白薔薇姫の魅力に気付かないのか、不思議だが。彼は常に違う令嬢と一緒なんだ。姫はそれを諫めず、遠巻きに見ているだけなんだ。』
『あんな素敵な婚約者なのに?』
『俺たちも心配はしている。でも姫は自分に魅力がないから仕方ありませんね。って悲しそうに笑うんだ。信じられないだろう?』
『もったいない。クリストファーとは婚約解消して、私の嫁に来て欲しい。』
『婚約は解消されるかもしれないと噂は流れているが、婚約解消を狙っている奴はいっぱいいるからな。』
『私も父上に願って、白薔薇姫に求婚しようかなあ。』
『お前はいいよな。身分があって。俺は遠くから見るしか無い。でも姫がアカデミーにいる間は皆の姫だ。抜け駆けは許さないからな。』
そんなやり取りをしたなぁと、思い出す。
お付き合い頂き、ありがとうございました。
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明日、後半を投稿予定です。
どうしてもアリアナクッキー争奪戦が書きたかったので。お付き合い頂けますと幸いです。




