【番外編】クロードとアリアナの出会い1(クロード視点)
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クロードとアリアナの出会い、なんとか今日に間に合いました。
1話にまとめるつもりが、長くなってしまい、2話に分けています。
番外編が長い…反省しています。
頭の中の脇役が…なかなか大人しくなりません。
このまま番外編を書いていいのか、アリアナ編に戻るべきか…
お付き合い頂けますと嬉しいです。
今日は色々と忙しい日だった…と、自室でワインの入ったグラスを傾ける。
久しぶりにアリアナを抱きしめる事が出来た。
キスを落とした時のアリアナの柔らかな唇の感触が忘れられない。唇が触れ合うだけであったが、全身が喜びに溢れた。
日中のレオンハルトの事は腹立たしいが…
私は物思いにふける…
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アリアナと過ごした幼少時代を思い出す。
私とアリアナの出会いは、私が6歳、アリアナが5歳の時に開催された、母が主宰するお茶会の席だった。
私の将来の側近となるべく貴族令息と、将来の伴侶となりうる令嬢を見極めるという目的だ。
アリアナは彼女の母と兄と一緒に登城し、私と対面した。
彼女の兄エリックとは、すでに、一緒に勉強していた。
母親同士が娘時代の親友であり、彼は私の将来の側近候補だった。
そんな彼は、一つ下の妹の話をよく持ち出した。
喧嘩もするようだが、言葉の端々に妹への愛情が浮かんでいる。
私には弟はいるが、母が違う為、一緒に過ごす時間は限られていた。
エリックの話す妹の事はとても興味深く、自分にも妹が欲しいと思ったのだった。
初めて見たアリアナは、花の妖精が庭園から迷い込んで来たのかと思った。
金色の髪がキラキラと光り、空色の澄み切った瞳、愛らしい顔立ちに小さなコスモス色の唇。
ピンクのドレスに身を包んだ彼女は誰よりも愛らしかった。
彼女は5歳とは思えないほど、上品に挨拶をした。
「はじめまして。アリアナです。きょうはおまねきいただきまして、ありがとうございます。」
ドレスをつまみ、礼をする。可愛らしいレディだった。
彼女はコロコロと笑い、周囲が明るくなっていく。
我儘は言わず、大人の話にも大人しく耳を傾けていた。
男の子たちの話や遊びも、嫌がりもせずに参加する。
当然、彼女の周りは人が絶えない。
当然、私の母も大変気に入った。女の子がいなかったので、このまま家に帰さず、娘にしたいと言い出すほどだった。
流石に親友に断られたが。
私はエリックと一緒に行動したので、必然的にアリアナも一緒に過ごす事になる。
彼女の屈託のない笑顔や、純粋に慕ってくれる姿に、私は心惹かれずにはいられなかった。
お茶会が終わった後も、母は彼女を良く王宮へ招いてくれた。
ある日、母が私に提案する。
「アリアナもあなた達と一緒に勉強したらどうかしら?彼女はとても賢いから、一緒でも問題ないと思うのだけど。クロードはどう思う?」
母は私の幼い恋心を応援してくれたのだ。
彼女は嫌がるかと思ったが、喜んで付いてきた。
驚いた事に彼女は勉強熱心だったのだ。
語学など彼女の方が上達が早く、エリックと二人焦って勉強しなければならなかった。
私が7歳の誕生日の日、
「今日、クロード殿下のお誕生日だと知らなかったの。プレゼントを用意出来なくてごめんなさい。」
とアリアナは悲しそうな顔をして言った。
私の誕生パーティーは明日の予定だから、アリアナが知らなくとも、仕方がない。
でも、私はちょっとした悪戯心をおこす。
「アリアナからのキスが欲しいな。」と強請ったら、彼女は私に屈むように言って、唇に軽く触れ合うだけのキスをそっとしてくれた。
真っ赤になりながらも「王子様とお姫様のキスみたいね。」と無邪気に笑った君はとても眩しかった。
彼女の姿は王宮でも話題となりつつあった。
特に、私達の家庭教師達はアリアナを絶賛した。
そんな噂を王妃も耳にしたのだろう。
アリアナは7歳になる頃には、王妃主宰の子供向け茶会にも招かれる様になる。
彼女の将来性と家柄に目を付けたのは、私の母だけではなく、王妃も同じだったのだ。
可愛く、賢い令嬢で、身分も筆頭公爵家。将来の王妃に相応しいと。第二王子の立太子に向けて、これ以上の後ろ盾はないと考えている様である。
彼女はそんな大人の思惑はわからないから、どこでもニコニコとして、皆に可愛がられていた。
そして、異母弟のクリストファーも彼女が気に入ってしまった。
それを王妃は見逃さなかった。アリアナが8歳の時に、弟の婚約者に早々に決めてしまう。
侯爵家出身の王妃に、子爵家出身で側妃の身である母が敵うはずがなかったのだ。
私は子供ながらに、悔しかった。
まだ愛情など理解できる年ではなかったが、アリアナとは将来一緒に過ごしたいと思っていたからだ。
母はそんな私を慰めてくれた。
「まだ二人とも幼い子供です。貴方達が大人になった時に状況が変わる事もあります。貴方がしっかり勉強し、立派な王子になれば、陛下もファーガソン公爵もお考えを改めて下さるかもしれません。それまでは、我慢なさい。母も陛下とファーガソン公爵には重々お願いしておきますから。」
私は一層勉学や武術、魔法学を極めようと励んだ。
どれも将来アリアナを迎え入れる為に必要だと思ったからだ。
アリアナがクリストファーとの婚約が決まった後、王妃はアリアナをクリストファーと一緒に勉強させる事にしたらしい。
アリアナのいない勉強は張り合いがなかったが、1ヵ月過ぎる頃に、私達の家庭教師の元に戻って来た。
彼女が言うには、クリストファーの勉強の進み具合が遅く、アリアナが出来る事に腹を立てて、追い出したそうだ。
彼女はニッコリして、
「これで、クロード殿下とお兄様と一緒に勉強できるわ。」と言った。
彼女の兄のエリックは
「お前、何をしてきたのか?」
と訝しげに彼女を見る。
「特別な事はしてないわ。先生が出された課題が余りにも簡単だったから、すぐに終わってしまったの。退屈だったから、先生とお話ししていただけなのに、クリストファー殿下がうるさいって言うの。」
「ちなみに先生と何を話していたんだ?」
エリックが問いただす。
「お城の塔からどれくらい先まで見えるのかとか?」
「それだけで、追い出されたのか?」
「今年の小麦と砂糖の値段についてとか?」
「他には?」
「風車の上手な使い方と畑の生産性を上げるためにはどうしたらいいのかとか?」
とアリアナが首を傾げる。
エリックが呆れた顔をする。
「お前なぁ…子供らしい会話にしろよ。」
「あら、わたしも子供よ。子供だって気になれば聞いていいじゃない。だって大事な事でしょう?」
エリックは頭を抱える。
可愛く無邪気な顔をして、考える事が大人並みである。
「それで?」
私は先を促す。
「お城の塔からの眺めは計算できるはずだったのだけど、途中でクリストファー殿下に邪魔されて。クリストファー殿下は掛け算が苦手なの。」
私は笑いを堪えながら、アリアナに続きを促す。
「砂糖と小麦の価格は先生と意見が合わなくって。先生はもっと近隣の国の情勢を知っておくべきだわ。今年は隣の国が不作だったからきっと値段が上がるのに。」
アリアナは口を尖らせて、教えてくれる。
その姿も可愛らしい。
「他は?」
「風車はもっと色々な事に使えると思うの。今は粉挽ぐらいしか使っていないけれど。水も汲み上げる事ができれば、畑の水撒きや女性の水汲みが楽になるわ。畑はね。わたしは良い土を作ればいいと思うのだけど、先生は畑を広げるしかないって。」
「そうだね。」
「そんな事話していたら、クリストファー殿下が、うるさい!って言うから、先生とチェスをして時間を潰していたの。」
「それで?」
「先生がベルン語で軍での駒の動かし方を教えてくださったの。楽しかった。私もベルン語で色々質問していたら、クリストファー殿下がお前とはもう一緒に勉強しないって言ってくださったの。わたしは何も悪いことはしていないわ。」
「言ってくださったじゃないだろう。クリストファー殿下は怒っているぞ。アリアナ…お前は殿下に合わせて勉強することは出来ないのか?」
エリックが呆れた様に言う。
「無理!」
「それは難しいだろうなぁ。エリック、諦めろ!」
私は噴き出しながら、エリックの肩を叩いた。
そして、アリアナの髪を撫でながら、
「アリアナと一緒に勉強できて嬉しいよ。」
「わたしもクロード殿下と一緒の方が楽しいわ。」
「クロードだ。アリアナと私は友達だろう?」
「クロードさま」
アリアナは首を傾げながらも、笑っている。
また一緒にいる事が出来る。そう思うと嬉しかった。
お付き合い頂き、ありがとうございました。
後半は明日までに仕上げ、投稿する予定です。
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感想も一言でも大歓迎です。
アリアナのその後を構想中。
レオンハルトルートかクロードルートかどちらも外れ、新しいキャラが出てくるか…
悩ましいです。




