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悪役令嬢は婚約破棄を言い出した王子様に決闘を申し込む。  作者: 藤宮サラ
第二章 決闘後

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アリアナの気持ち(アリアナ視点)

感想、ブックマーク、評価等、ありがとうございます。


前話の続きです。

 久しぶりに見るその顔はとても疲れて見える。


「殿下、驚かせないで下さいませ。」


「会いたいと面会を申し込んでも会わせて貰えないからな。こうでもしないと会えないだろう?」


「だからと言って、王妃陛下の宮に忍び込むなど、許されませんわ。結界があるのですよね?騒ぎになっていないかしら?」


「大丈夫だ。結界は魔法師団が管理している」


「職権濫用ですか?」


「王妃も職権濫用しているではないか?アリアナを私から取り上げて」


「いらっしゃるのであれば、事前に教えて頂かないと困りますわ。とりあえず、降ろして下さいませ。重いですわ」


「軽いよ。ちゃんと食べているのか?」


 そう言いながら、そっと下ろして、マントを掛けてくれた。だけど腕の中には閉じ込められている。


「きちんと食事は頂いておりますわ。それよりここはどこですか?」


「城の外壁の見張りの塔。入り口には見張りを置いているから、心配はない。それより王妃の所で無理はしていないか?」


 クロード殿下は片腕を外し、私の頬に手を当て、心配そうに聞いてくる。


「殿下こそお疲れではないですか?ちゃんと食事と睡眠取れています?」


「アリアナと会えないんだ。疲れも溜まる」


「わたくしのせいにされないでくださいませ。わたくしも忙しいのです。王妃陛下のお仕事があんなにあるなんて、知りませんでした。わたくしには無理ですわ」


「あの人は有能な文官だからなぁ。仕事がどんどん増えていくんだ。父とは戦友らしい」


「とても有能な方だと認識を改めましたわ」


「アリアナも十分有能だが、仕事に関しては私か肩代わり出来る部分もあるから、心配しないで欲しい」


「わたくしは別に有能ではありません。ですが、王妃陛下から婚約解消して陛下の元で働かないかと勧められましたわ」


「まだ諦めていなかったのか…」


「何を?」


「アリアナを。昔からお気に入りなんだ。だからクリストファーと結婚させて娘にしたかったんだ」


「そう言えば、殿下との婚約解消後は養女にしてくださると仰っていましたわ」


「全く…油断も隙もない。婚約解消などしないからな」


 クロード殿下の腕に力が入る。


 本当にいいのだろうか?

 心の中でモヤモヤしていた事を口にしてしまった。


「ですが、殿下に他国の姫君からの縁談があり、お見合いの日程も組まれているのでしょう?外交を考えると他国の姫君をお迎えした方がよろしいのでは?」


 そう今日見つけてしまった殿下への縁談。

 側妃制度がある限り、他の方が正妃や側妃としてクロード殿下に嫁ぐ可能性がある。


「アリアナだけだ。私の妃は。見合いはしない。計画は潰しているから心配するな。アリアナを正妃に出来ないのであれば、王太子などクリストファーに譲って、アリアナと二人で子爵領でも治める方が良いからな」


 そう殿下は仰るけど、潰そうと思っても出会いなど幾らでも作れるし。現に夜会は予定通りに開かれる。


「殿下が王太子になって頂かないとこの国が心配ですわ。それにクリストファー殿下は臣籍降下されたのでしょう?」


「ならば、アリアナが私の正妃になる事だな。他国の姫など内政干渉の元になる。私は迎えるつもりはない。それに側妃なども持つつもりは無い。だから安心して私の元へ嫁いでおいで。そうでなければ、本気でクリストファーに譲る。彼は完全に王籍離脱した訳ではない。それに、クリストファーがダメであれば、叔父上がいる」


 そういえば、王弟殿下がいらした。

 夜会でも式典でも顔を見かける事はなかったので、意識から抜け落ちていた。そもそも私とは王弟殿下としては会った事はないのよね。


 王弟殿下は国王陛下の歳の離れた異母弟になる。

 確か二十代後半の独身の方で、今は海軍司令官だった。


 私にとって、王弟殿下というより、親戚の叔父様ぐらいの感覚の方だ。父の従姉妹が王弟殿下のお母様だった関係で、我が家によく出入りされていた。

 幼い頃に遊んでくれたアレクシス殿下を思い出す。アカデミーに入学するまでは、彼は休みが取れると遊びに来てくれていた。かなり博識で議論する事が好きな人だった。


 そして私にとっては色々な意味で特別な人だった。この国で、私が前世の記憶持ちだと知っている唯一の人だったのだ。


 私が迂闊に誘導尋問に乗ってしまい、前世の事がバレてしまったのよね。でもこの世界の常識と前世の常識の違いや前世の知識を生かした魔法の使い方等を、幼い私に丁寧に教えて下さった方だった。「中身と外見が合わないとは面白い」と失礼な事を言いながら、笑う方だった。

 

 海軍のトップに立たれ忙しくなられた時期と、私がアカデミーに入った時期が重なり、もう随分と会ってはいない。


 彼も公爵位を賜っているので、臣籍降下されたと思っていたけれど。


 懐かしい人を思い出してしまう。


「アレクシス殿下ですか?ですが…」


「ああ、叔父上も完全に王籍離脱した訳ではない。彼は有能な方だ。他に何か不安があるのか?一人で抱え込まないで何でも言って欲しい。私はもうアリアナの婚約者だ」


「わたくしの気持ちの問題ですわ。殿下にお話する事ではありません」


「私はアリアナの思っている事は些細な事でも知りたい。何でも話して欲しい。」


 何でもと言われても、やっぱり身構えてしまう。


「今は自分の気持ちが良くわからないのです……殿下と本当に結婚していいのかどうか…」


「気持ちがわからなくとも構わない。私は側にいる。だから思った事を教えて欲しい。アリアナは自分だけで考え行動するだろう。私の手が届かない所へ行こうとしている様で不安なんだ」


「殿下…」


「クロードと呼んで欲しいと言ったはずだが?」


「……クロード様」


「なぁ、アリアナは貴族としての義務とか建前を先に考えているだろう?私の結婚に関しても私に有利になるにはと。私は自分の気持ちを大事にしたい。結婚生活は長いんだ。せめて共に過ごす相手は自分の好きな人を選びたい」


「ですが、殿下のお立場であれば他国の姫は有力な後ろ盾になるでしょう。それに国内貴族の勢力を考えると側妃を迎えた方が…」


「アリアナだって十分後ろ盾になるよ。私はそれが欲しくて結婚する訳ではないが」


「父が何かいいましたか?」


「公は娘の幸せが一番だってさ。他国に嫁に出しても構わないそうた。婚約は許したが、アリアナの気持ち次第でいつでも取消す用意はあるって」


「………」


「まあ、政治的な事はどうでもいい。とにかく私はアリアナに会いたかった。折角だから、恋人としての時間を過ごそう。今日は月が綺麗だろう?」


 そう言った殿下は私の体を反転させ、背後から抱きしめ、私の頭に殿下の顎を乗せる。

 殿下の温もりに、私の心臓の鼓動が激しくなる。

 満月の今日は、少し黄色みを帯びた月明かりに照らされ、城も街も森も幻想的に見える。

 夜風が心地よく私の髪を靡かせ、緊張がフッと解けた。


「本当に月が綺麗ですわ……」


 そう言った私は、ふと前世の文豪が口説き文句をそう訳したと言う逸話を思い出してしまった。

 もちろん殿下はそんな逸話は知らない。


 本当に月が綺麗だと事実をお互いに伝えただけなんだけど、なんだかおかしくなってしまう。


 ふふふ…と笑いがでてしまった。


「何がおかしいのかい?」


「いえ、昔の事を思い出しておりました。」


「そうか。私は昔君と見た満月は忘れられないな」


 幼い頃、兄とクロード殿下と私は、夜の王宮の庭園で満月を観る為に部屋を抜け出した事がある。

 私が満月を見たいとねだって、兄達が叶えてくれたのだった。もちろん、その後抜け出した事がバレて叱られたのだけど。


「そんな事もありましたわね…」


「あの頃からアリアナを私の妃にしたかった。やっと夢が叶う。早く結婚式をしたい」


 クロード殿下は北の国での事件の後から、気持ちを隠す事無く伝えてくれる。


「ですが、結婚式には準備が必要ですわ」


 そう言ったけれど、本当に結婚できるだろうか。


「アリアナがいなくならないか心配なんだ」


「わたくしは逃げませんわ」

 多分…とこっそり付け加える。


「本当か?顔を見ないと不安になる。また何処かに行ったのではないかと」


「ここにおります」


「ああ、わかってはいるんだ。だが、アリアナを狙う奴はまだ諦めていない」


「……………」

 確かにまだ色々とお誘いはあるけれど…

 私がお友達の王子様達を思い出していたら、殿下に引き寄せられた。


「アリアナ、愛している。早く私の妃になっておくれ」


 私はきっと耳まで赤いだろう。

 やっぱり殿下と他国のお姫様の縁談は嫌だな。そう思った時、ああ、これは嫉妬なんだと気が付いた。

 それは、兄を取られる様な嫉妬なのか、恋人としての嫉妬なのか、自分の居場所を取られるという嫉妬なのか…自分でもよくわからないけれど。


「本当に綺麗な月ですわね」


 私がそう言えば、殿下はそっと頭にキスを落としてくれた。


「これからも一緒に見よう。だから側にいて欲しい」


 これから二人の関係がどうなるかなんて、未来はわからない。婚約したとはいえ、問題は山積している。

 これからも困難に直面する事もあるはず。

 既に近い未来に困難が待ち構えているし。

 目下の問題は本当に結婚できるがどうかなんだけど。


 私の気持ちは?

 いつかはっきり自覚する時が来るのだろうか?


 私はそっと自分の手をクロード様の手に重ねた。

 クロード殿下の疲れが取れます様にと回復魔法をかける。


 背中に広がる温かさと、夜風の心地よさを感じながら、月の女神様に、明るい未来が待っています様にと願わずにはいられなかった。





 ゲームの世界と同じだけど、違う世界。

 私達は今を生きている。


 とりあえず、断罪パーティーと私の最悪なバットエンドは回避できたはず。


 どんな結果でも自分が選んで進んで来た道だ。 

 これからの将来も自分で選んで築いていく。


 隣で歩んでくれる人がいるのかもわからない。

 でも、どんな未来でも、希望を持って歩いて行けば、きっと幸せになれるよね。


 前世と変わらない月を見ながら、この世界に転生させてくれた神様に感謝したのだった。

 

 

 

 


 




お読み頂き、ありがとうございました。

今回で一応完結とさせて頂きます。

素人の拙い文章に今までお付き合い頂き、感謝感謝ですm(_ _)m

まだまだ書きたいと思ってはいたのですが、家庭の事情で暫く執筆は難しくなりそうなので完結としました。

最後がモヤモヤが残る形にはなってしまいましたが、皆様のご想像にお任せ致します。

番外編や閑話は不定期であれば、更新するかも。

今回、執筆に当たり色々と勉強させて頂きました。

構想や人物像の不出来や文章の拙さも、素人の初めての作品としてご容赦頂けましたら幸いです。

コロナもなかなか収束せず、長雨や洪水もあり、大変な日々だと存じますが、皆様、どうぞお身体をお大事になさってください。


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― 新着の感想 ―
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