アリアナの不安(アリアナ視点)
感想、ブックマーク、評価ありがとうございます。
この回で最終話とするつもりが…
終わりませんでした。予告詐欺になってしまい、申し訳ありません。
妃教育として、王宮へ上がって、二ヶ月が過ぎようとしていた。
私は相変わらず、忙しく働いていた。
もう文官としてブラックの職場に勤めていますと言った方がいい。
ヒロインのバットエンドは悪役令嬢がブラックの職場で過労死に追いやられるなんて、ゲームにあったかしら?
悪役令嬢としてのバットエンドは回避したはずなのに、何だか回避できていない様な気分。
仕事内容に不満がある訳ではなく、好きな様にさせて貰っているけれど。
最初は腫れ物を触る様に接していた若い文官達も今ではすっかり打ち解けてくれた。
年配で使えない文官は移動させ、父にそれ相応の経験があり使える人物を回してもらう。
対外交渉を彼に任せて、私は持ち込まれる書類の仕分けとアデール様のスケジュール管理に専念した。
また、文官達をそれぞれの得意分野でグループ分けをし、計算が得意な者は、予算などの計算業務、外国語が得意な者は翻訳業務、その他の業務と分け、私の元にも数人置いて、書類の仕分け作業やスケジュール管理の要領を覚えさせた。
上がってくる書類は例年同じ内容の物がある。
全てではないが、覚書があれば、随分楽になるのでは?と、グループ毎にマニュアルを作らせた。
パソコンやコピー機が本気で欲しい…
開発は難しいよね……
まだまだ発展途上だけど、随分仕事は楽になったと思う。
心なしか、若い文官達の顔色が良い。
あれこれ手出ししている私を見ながら、アデール様は満足そうだ。
「やっぱりアリアナはここに就職よね?」
そう仰れば、周囲がコクコクと肯く。
「アデール様、わたくし妃教育ではなかったのですか?」
「だって貴女がいないとまた大変になるじゃない?」
「わたくしがいなくとも、仕事を回せる様、準備はしておりますわ」
「でも、困るわ。ねぇ貴方達?」
忠臣である文官達は、また首を縦に振る。
「陛下、それ以上アリアナ嬢を困らせてはなりませんよ。あの公爵が愛娘を文官にさせるなどあり得ません。最近は領地に連れて帰ると宣言されていますよ」
父が補佐で回してくれた年配の文官が王妃陛下をやんわりと牽制してくれる。
仕事が多いのは変わらないから、私が抜けたら人員を補充しなければ、回らないよね。だからアデール様がここに就職と言う気持ちもわかるけど…
仕事が減った分、また仕事が増えて、イタチごっこの様に毎日遅くまで仕事に追われる。
今日も随分遅くなってしまったなぁ。
自室での楽しみは、自分の仕事だった。
魔法具店の報告書を確認し、幾つかの指示を書き出す。
ヨハネス殿下に頼まれていた新しい産業を考え、思いつくまま、ノートにアイデアを、書き散らす。サーモンが取れるのであれば、塩蔵して輸出して貰えば、塩鮭が食べれる?なんて自分の欲望も入っているけれど。あの豪快なお肉の丸焼きは美味しかったなぁ。流石にあれは北の国でしか食べれないよね。もう一度行きたいなぁ。
ついでにイスマエル陛下に即位のお祝状を認める。以前に注文していた品が、今日届いていたから、忘れないうちに書いておかないと…
イスマエル陛下からは、金の細い鎖で作られたブレスレットを頂いた。箱を開けると内装の下のよく良く見ないと分からない場所に手紙が仕込んであり、気付かなかったらどうするんだろう?と思いながらも手紙を開いた。
彼の父である皇帝を討ち、皇位に就いたイスマエル陛下。表向きは急な病による皇位継承らしい。今は国を立て直し、国民の生活を安定させる為に頑張っているそうだ。迎えに行きたいが今は国を離れられないので、継承式に来て欲しいと書いてあった。
相変わらずの言葉には笑ったけれど、彼は今、国を立て直す最中で大変な状況なのよね。負傷者もそれなりに出て、市民にも被害が出たそうだ。元々枯渇気味だった国庫だけでは足りないので、彼自身の私財も使い、復旧に全力を尽くしているらしい。そんな中、私への贈り物など気を遣わずともいいのに。生真面目な彼の性格を思えば、精一杯の気遣いなのだろう。
そう思って、私も即位のお祝いにと懐中時計を送る事にした。
私は、お礼状と医薬品と食料の援助を商会を通じて手配する事を書いた手紙を認め、先に出していた。
今回は正式なお祝状と別に、私の近況報告と継承式に行けるかどうかはわからないという事、他に何か困っていないか等を書き、最後に体に気を付けて、きちんと食事と睡眠は取ってくださいねと付け足した手紙を用意した。
小さく折り畳み、用意していた箱の内装の下に忍ばせた。皇位継承のお祝いの贈り物である懐中時計の箱だから、きっと彼も見つける事ができるだろう。
明日出して貰おう。ついでにルミエール商会にも連絡しないと。明日の予定を考えながら手紙をしまい、部屋着に着替え、ベランダに出た。
この部屋は、中庭に面していて、月明かりが庭園を幻想的に映し出している。
今日、外交文書を整理していた時に、クロード殿下に縁談が幾つも持ち込まれている事を知ってしまう。
一部の書類には、非公式での面会の予定も。
そして来週、王宮で開かれる夜会は、彼の見合いの場として、候補の姫達を招待しているという。
ワザと私の目に触れる様に、書類を回したのよね。きっと…
側妃希望の令嬢がいるのは知っていたし、他国からも縁談が持ち込まれるはずと予測はしていた。
だけど実際に申し込まれており、私の知らない所でお見合いが組まれているという事実を目の前に突き付けられ、私の心はざわめき立った。
外交面を考えたら、他国のお姫様を迎えた方がいいとわかっている。この国には側妃の制度があり、クロード殿下の母君も側妃だ。私を側妃にと言う声が出ていてもおかしくはないよね。
けれど、わたしには一夫多妻は前世の記憶もあって受け付けられない。だとしたら、私が身を引くしかないのかも。
クロード殿下に会うと気まずくなりそう。殿下も縁談の申し込みに関しては知っているはず………
やっぱり文官の道も残しておいた方がいいのだろうか?でも文官の仕事より、好きな事ができる方がいいな。やっぱり研究所に引きこもるのが一番かなぁ。
ただ、婚約式で誓ったのに、婚約を解消できるのかな?
このまま私がクロード殿下と会わなければ、彼と他国のお姫様との縁談が進むかも…
その為に引き離されているのかもしれない…
胸の中でモヤモヤした気持ちが湧き上がる。
そんな事を考えていたら、上からバザっと黒い布が落ちて来た。前も似たような事があったよね?と思った時には、私はその黒い布に包まれ、抱き上げられてしまう。そのまま、転移魔法でどこかへ連れて行かれてしまった。
声を上げる暇も無いほど、あっという間の出来事だった。
抱き上げている腕は私を優しく包み、連れ去られているにも関わらず、恐怖を感じない。
マントから柑橘系のほのかな香りが漂う。クロード殿下の物と同じだった。
そっと黒い布が頭から外されると、クロード殿下の心配そうな顔がそこにあった。
「アリアナ、驚かせてごめん。会いたかった…」
お読み頂き、ありがとうございました。
今回だけで書ききれず(汗)
次回を今日、明日中に更新したいと思います。
未熟者で申し訳ありません。




