婚約式1(クロード視点)
ブックマーク、感想等ありがとうございます。
婚約式前のクロード視点です。
待ちに待った今日、アリアナとの正式な婚約が整い、婚約式が行われる。
本当は結婚式が良かった。
だが、王太子の結婚式は準備に時間がかかるので、式は早くて一年後だと言われてしまったのだ。
仕方がないので、婚約式で我慢する。
アリアナが誰のものかをあきらかにするだけでも、世間の見方は違うだろう。
長かった。
あれは何歳の頃だっただろうか?
アリアナと初めて会った日から、彼女の隣に立てる様、努力をして来た。
何度も無理だと思った。特にアリアナとクリストファーの婚約が決まった時は絶望的だった。
だけど、変わらず懐いてくれていたアリアナの笑顔だけが希望だった。
そして、アリアナとクリストファーの婚約は解消され、今日の日を迎える事が出来た。
諦めるなと励ましてくれた母には感謝しきれない。
当のアリアナは、私が心から求婚しても信じてくれないが…
(殿下の想う方はどなたですか?身分が問題なら、何か方法があるはずですから、わたくしもお力になりたいです。教えてくださいませ。それに後ろ盾に公爵家が必要なのでしたら、わたくしを娶らずとも後ろ盾になる方法は幾らでもありますわ。殿下は最愛の方を正妃にお迎えされたいのではないですか?)
そう言われた時には、固まってしまった。
母は側妃であったが、目立った嫌がらせや不当な扱いを受けた事はなかった。しかし、立場は正妃が上だ。母を見ていれば、愛する人を正妃にと思って何が悪いと思う。そこはアリアナの言う通りだ。
だが、私の愛する人はアリアナなのだが……
しかし、アリアナは私の愛する人が彼女自身だと全く思っていない様だ。
何度も口説いているが、鈍感力だけは人一倍な様で、私が口説いているのは、王命だと思っている。
兄の立場として、長くいたせいかもしれない。
だが、もう待ってはいられない。
先月、攫われ溺れて意識を失っていた時の様な身を引き裂かれる思いはしたくはない。
取り敢えず外堀を埋める事が大事だ。
逃げられたり、取られたりする前に。
そう考えて、婚約式を前倒しに決めた。
大々的に婚約を周知するには、一番いい方法だ。
婚約式の日程をアリアナに伝えたら「それはおめでとうございます。お相手はどなたですか?」と聞かれた。
アリアナは私と婚約した事をわかっていなかったのだ。顔が引きつりながらも、私とアリアナの婚約式で、王命だと伝える。
この件をエリックに話したら、笑われた。
「お前が悪い。婚約の話は卒業パーティーのドサクサの時と、アリアナが溺れてやっと意識が戻った直後に言ったのだろう?あのアリアナが覚えている訳がない。あいつは自分に都合が悪いと忘れるんだ。」
私との婚約は都合が悪いのか。
エリックの言葉が心に刺さる。
「アリアナは私が嫌いなのか?それとも他に好きな奴がいるのか?」
そうエリックに問えば、
「お前の事を俺と同じ兄としか見ていないんだ。好きも嫌いもない。だからアリアナもお前には懐いているんだろうな。他に好きな奴がいるかは知らないなぁ。お前が自分で聞いてみれば?」
アリアナから好きな人がいると言われても、認めたくはない。私が兄としか見られてなくても構わない。
一番近い場所にいれば、アリアナを私に振り向かせる事が出来るはず。
そして迎えた今日、もう逃げられないだろう。
そう思えば、自然に口角が上がる。
控室で待ってはいたが、落ち着かず、エリックを呼べば、アリアナのところにいると言う。
ならば、私もと、アリアナに会いに行った。
ドアの前に立った時に、アリアナの声が聞こえた。
「お兄様、わたくしやめて帰ってもよろしくて?」
思わず立ち止まる。アリアナは本当に私との婚約は嫌だったのか?
耳を澄ませば、エリックがこの婚約を、応援してくれているのか、反対しているのか、わからない言葉をかけている。
「お兄様、ご心配をお掛けして、ごめんなさい。次からはお兄様を一番に頼るわ。」
「ああ、そうしてくれ。お前が婚約しようと、嫁に行こうと、俺が兄である事には変わらない。頼れよ。」
「ありがとう。お兄様。」
我慢できなくて、部屋に入ってみれば、エリックがアリアナを抱擁している。
もちろん家族の抱擁だが、アリアナが一番にエリックを頼ると言ったことが、気に障る。
もちろんエリックは兄だからこそ、言ったのだろうけれど。
「誰を一番に頼らなければならないか、まだわからない様だな。どうしたら理解できるか、考えなければならないか?」
そう言って、エリックをアリアナから引き離した。
「私のアリアナに手を出さないでくれ。」
エリックはニヤリとする。
「アリアナは俺の妹だ。それはどんな事があっても変わらない。お前はただの婚約者だ。婚約が無くなれば、他人だよ。」
アリアナも心配そうに、私達二人を交互に見ている。
「殿下?兄ですよ?家族です。」
それは十分承知している。
だが、簡単にアリアナから気を許されているエリックを見ると、嫉妬心が湧き上がる。
「兄だろうが許せない。アリアナは私のものだ。」
「クロード、お前、アリアナはまだわかっていないぞ。婚約も義務だと思われている。まだ口説き落とせていないのか?」
エリックが痛い所を突いてきた。
何度も気持ちを伝えているのだが…
「………悪かったな。アリアナが信じてくれないのが悪い。」
「だから婚約式を急いだのか?」
「悪いか?アリアナが婚約解消したと知った各国から縁談の申し込みが来ているんだろう?国内の上位貴族は抑えられても、国外は難しい。それならば早く周知するに越した事はないだろう。」
公爵家だけで無く、国としてもアリアナ宛の婚姻の申し込みを受けている。
他国からは私宛の縁談もだ。
王太子が決まっていない段階では躊躇していた婚姻の申し込みが、私が王太子になる事が決まって、安心して申し込めると他国は判断したらしい。
もちろん、国内の有力貴族の娘からの申し込みも多数あった。正妃が無理なら側妃にと言い出す者も。
中にはアリアナは一度婚約しており、傷物だとあからさまに中傷する者もいる。アリアナが知れば、自分は相応しくは無いと、また逃げ出す可能性がある。そんな貴族にはそれ相応の対応をしていた。
そんな事を考えていたら、アリアナが挙動不審に視線を動かした。視線の先には、文箱があった。
一体何を隠しているのか?
「アリアナ?」
そう呼びかけてみたら、アリアナは慌てて視線を逸らす。
「その文箱には何が入っているのかな?教えてくれないか?」
「わたくしのお友達からのお祝いのカードですわ。殿下がお気になさる様な物ではありません。」
そのお友達が曲者なんだ。彼女に纏わりついていた王子達からのカードか。
「ふ〜ん。じゃあ私も当事者だから、見てもいいよね。」
アリアナは明らかに狼狽ていた。間違い無いだろう。王子達は何を書いているのか?
中身を確認しようと手を伸ばしたが、文箱はエリックに取られてしまった。
王子達からのカードより、先にアリアナにきちんと気持ちを伝えろと諭され、エリックは文箱を手に取って部屋を出た。彼も文箱の中身は気になるのだろう。
彼に任せておくか。と気持ちを入れ替えた。
お読み頂き、ありがとうございました。
婚約式まですすめませんでした。
長くなってしまい、結局二話に分けたので、今回は短めになってしまいました。
明日続きを更新予定です。




