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悪役令嬢は婚約破棄を言い出した王子様に決闘を申し込む。  作者: 藤宮サラ
第二章 決闘後

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ルーカスの暴走(ルーカス視点)

ブックマーク等ありがとうございます。

ルーカス視点ですが、かなり暴走しています。

溺れる場面もありますので、ご注意下さい。

この回を読まなくとも、前話と次話であらすじはわかります。

 梨奈を見失ってから、独自に探していたが、先日北の国に潜らせていた者から、黒髪の少女が王宮で保護されていると報告があった。

 何年も前から、梨奈の特徴を伝えていて、見つかったら連絡する様にと伝えていたのだった。


 急ぎ、北の国へ行き、その少女が王宮から出て来るのを待つ。今日は王族も民と一緒に作業をする予定があると聞きつけ、待ち伏せしていたのだった。


 出てきた少女を見た時は驚いた。

 前世の梨奈そのものだったのだ。

 衝撃が大きく、その少女が梨奈で、アリアナ嬢は梨奈ではなかったのかと、思ってしまった。


 頭の中は混乱するが、よくよく考えると、この世界は魔法がある。アリアナ嬢が姿を変えたとしてもおかしくはない。とにかく、彼女を手に入れる為、部下を動かした。


 彼女が向かった作業所らしき建物の近くに行き、部下に通りすがりの者に話しかけさせた。言葉がわからないから、誰か呼んで来ると、彼は作業所へと向かい、作業をしている女性達に声をかけた。

 アリアナ嬢だったら、ここまで出てくるだろう。彼女は数ヵ国語ができるのだから。


 その間、俺はマントのフードで頭を隠し、木陰で待機する。


 少女が側に来て、声をかけて来た。

「何かお困りですか?」


 私がフードを外すと、目を見開き、固まっている。


『えっ!ルーカス殿下?本物?』


 恐る恐る彼女が尋ねてくる。

 俺の名前が出てくるのであれば、間違いなくアリアナ嬢で梨奈だ。


『梨奈、探したよ。アリアナ嬢としての姿もいいけれど、梨奈の姿も可愛いね。高校生の梨奈に会ったみたいだ。さあ、一緒に行こう。』


 俺がそう言ったら、彼女は踵を返そうとした。

 慌てて腕をとる。


『離して!貴方とは行けないわ。』


『嫌でも来てもらう。』


 彼女の腕を取り、このまま連れて帰ろうとしたところに邪魔が入った。


 クロードとアリアナの兄が邪魔をしたのだ。


『その娘を放せ。』


 何故ここにいる?ここは北の国だ。

 それに、彼女の姿は違うのに、何故邪魔をする?


『嫌ですね。彼女は私の婚約者です。行方不明になっていたのをやっと発見したのです。貴殿こそ彼女とは関係無いではないですか。』


 彼は剣を抜いた。

 私は護衛の騎士に目で合図を送る。

 騎士達が剣を抜いて彼等に立ち塞がるが、彼の騎士達も剣を抜いて対峙する。


「彼女は嫌がっているではないか。」


「貴殿には関係ない。邪魔をするのであれば、排除します。」


 そう言った俺はは上着の内側から、銃を出した。

 この世界では銃は見たことが無い。

 だから、自分で設計から始め、試行錯誤の上、やっと去年完成させた物だった。

 魔法力の少ない俺にとって、使い勝手が良い武器だったのだ。


 俺は腕を上に上げ、銃を上に向け、一発撃った。

 パンと辺りに響き、皆が驚いた顔をする。

 これがどんな武器なのかと、訝し気にこちらを見る。


 俺は銃口をクロードに向けた。


 その時、梨奈が叫び、クロードに銃の威力を説明し、注意を促す。

 梨奈は銃を知っているから、当然彼等に威力を伝えるだろうと予測していた。

 だから、もう一押しと、近くに立て掛けてあった桶に向け、発射する。


 ヨハネスも駆けつけて来たが、俺の武器を前に手出しできない。


 アリアナは俺を睨みつけていた。


『こんな武器、作ってどうする気?』


『魔法力が少ないならば、補うのは当然だろう?』


『危ない物を作らないで。世界が変わってしまうわ。』


『俺が作らなくともいずれは誰かが同じ物を作るさ。早いか遅いかの違いだ。それに今の所、作ったのはこれだけだ。』


『詭弁だわ。そんな武器、早く仕舞って!』


『梨奈が俺と一緒に来てくれるなら。』


『嫌よ!』


 この言葉で、俺の中の何かが壊れた。

 ただでさえ、今のアリアナは梨奈の姿だったのだ。

 自分の前世の想いが溢れ出し、これ以上彼女と離れる訳にはいかない、嫌と言われても、彼女の本心ではない筈だ、俺と一緒にいる方が梨奈は幸せになれる、梨奈を俺から取り上げる者は皆敵だ。そう思った。


『じゃあ仕方がないな。』


 俺は銃を梨奈の顳顬(こめかみ)に当てながら、彼女の背後にまわり、拘束した。

 そしてクロードに視線を送る。


「彼女の命が惜しければ、剣を捨てて、両腕を上げて下さい。魔法もダメですよ。」


「やめて!クロード殿下と兄を巻き込まないで!」


 梨奈が叫ぶ。

 だが、目の前の二人は一番の障害だった。


 案の定、二人は剣を投げ捨てる。


「クロード殿下、防御魔法は絶対に解かないでください!彼の武器は遠くからでも攻撃できます!」


 梨奈が彼等を守ろうとする事に腹を立て、左腕を彼女の首に絡ませた。


 彼女の顔が苦痛に歪む。


「彼女は連れていきます。貴方達はそこから動かないで下さい。」


「国際問題になってもいいのか?」


「彼女はリナだ。アリアナ嬢ではない。貴殿から守る為の正当防衛だ。」


「アリアナに武器を当てておいて、何を言っている?ここはお前の国ではないぞ。2ヶ国敵に回す事になる。」


「構いませんね。リナが手に入るのであれば。」


 私の特殊部隊の一部が彼等に剣を突きつけるが、梨奈が言った様に防御魔法だけは解いていない様だ。

 構わない。

 彼等が防御魔法の中にいる間はこちらにも手出し出来ないだろう。


 俺はアリアナに武器を当てたまま、後ろに下がっていく。首の縛めは解いていたが、武器はしっかりと梨奈に向いていた。

 俺の背後には、護衛がしっかりと守っていて、逃亡の準備を始めている。

 俺の行動を見越して動いてくれる優秀な特殊部隊だ。


『リナ、君が大人しく付いて来れば、彼らには手出しはしない。俺も無闇矢鱈に傷つけたくはないからね。』


『どうして?私は貴方と行かないわ。離して!』


『聞き分けがないと、引き金を引くぞ。』


『馬鹿な事言わないで。』


 そう言って、梨奈は短剣を俺に突き当てた。

『離して!』


 短剣が首元にあるにも関わらず、俺は落ちていた。


『嫌だね。』


『私が刺してもいいの?』


 梨奈に刺されても自業自得だ。

 今目の前の梨奈の手を離す方が、俺にとっては死に値する。


『そしたら俺も引き金を引こう。君も一緒に死ねば、又やり直しが出来るかもしれない。』


『やり直しではないわ。今の人生は今しかない。この世界の中で、私は精一杯生きている。貴方もでしょう?前の世界でも私の人生に悔いはないわ。貴方が罪悪感に囚われる事はないの。だから、この武器を下ろしてちょうだい。』


 罪悪感なんだろうか?

 いや、梨奈と一緒に生きていきたいだけなんだ。


『梨奈はどうするんだ?俺に付いて来てくれるのか?』


『私は私がしたい事をするだけだわ。残念だけどこんな事をするルーカス殿下の元へは行けないわ。』


『じゃあ、リナを殺すしかないか。心配しないで。俺もすぐに後を追うから。』


 そうだ。一緒に死ねば、また同じ世界に生まれ変わる事ができるかもしれない。


『馬鹿な事言わないで。ゲームの世界とは違うと教えてくれたのは、ルーカス殿下じゃない。死ぬなんて簡単に言わないで。次に生まれ変わるかもわからないでしょう?』


『本気だよ。それともクロードの命を奪う方が先かな?』


『彼は関係ない!私達の前世に巻き込まないで。』


『彼は関係あるみたいだけど。それとこの銃、魔法が効かないんだよね。防御魔法でも防げないかも。』


『嘘!』


『魔法が効かない素材を探してね。時間はかかったけれど、なかなかいい働きをしてくれるよ。先にクロードを片付けよう。』


 そう言って、クロードに銃を向けた。


『私も本気で刺すわよ。』


『そうすれば?俺はクロードに向かって撃つだけだ。これでも俺は戦場に出た事がある。銃を使う以上、命がけなのは覚悟しているさ。』


『他の人には一切手出ししないと約束して。』


『それは大人しく一緒に来てくれるって事?』


『………』


『まぁいいや、梨奈が大人しく来てくれれば。悪いけど、手は縛らせて貰うよ。途中魔法を使われても困るからね。』


 俺は彼女の短剣を取り上げ、首に巻いていたスカーフで彼女の手首を縛る。

 本当はこんな事はしたくはなかった。

 でもここで彼女を逃すわけにはいかない。


 そうして、騎士が連れてきた馬に彼女を乗せて、私も後ろに乗る。


 銃は牽制の為に出したままだ。


 さあ、彼女を連れて帰ろう。

 クロードの実力があれば、直ぐに追い付かれるだろう。なるべく足留め出来る間に逃げ出した方が良い。


 片腕を梨奈の腹を支えながら、銃を持つ。

 片手で手綱をしっかりと握って、馬を走らせた。


 暫く走った橋の上で、先導の護衛の騎馬が止まってしまう。一体どうしたんだと先頭に出てみると、橋のたもとで荷車が横転し、荷物であろう芋が散乱していた。それを拾おうと人々が屈んで、道を塞いでいる。


「どけ!」


 護衛が叫ぶが、皆芋に夢中だ。

 後ろから、追手が来ている。こんなところで足留めなど御免だ。


 手にしていた銃を空に向けて撃つ。

 パンと甲高い音がした後、乗っていた馬が暴れ出してしまった。


 片手で手綱、片手に銃を手にしていた為、梨奈を支え切れなかた。馬が前脚を高く上げた時、梨奈の体が馬上から放り出される。


 慌てて手を差し伸べたが、間に合わなず、彼女は川に真っ逆さまに落ちていった。


『梨奈!』


 俺も迷わず飛び込んだ。

 梨奈の体は水流に流されながら、川底へと向かっていく。やっと手が届いたと思った時、梨奈の周囲が光り出した。


 一瞬驚いたが、今はそれどころではない。

 自分の息も後少ししか持たないだろう。

 掴んだ手を力任せに引き寄せ、川面に向けて梨奈を引っ張り上げる。


 やっと水面から顔を出し、息をしたが、腕の中にいる梨奈は意識が無い。

 こんなところで梨奈を失うわけにはいかない。

 やっと会えたんだ。

 梨奈だけでも助けないと、また同じ後悔をするだろう。


 梨奈の頭が沈まないように支えながら、川岸を目指す。だが流れが早く、意識の無い梨奈を抱えながらは難しい。


 岸辺を見たら、一番近い所にクロードがいた。

 梨奈が助かるには彼に引き上げてもらうしかない。

 そう決断した俺は、クロードに目を合わせる。


 すると、ロープが魚の様に泳いで、手元まで届く。

 手にすると、普通のロープだ。梨奈の上半身にくくりつけ、片手を上げると、ロープが岸に向かって引っ張られる。俺は梨奈の頭が沈まないように支えながら、岸まで辿り着いた。


 クロードとエリックが梨奈を引き上げてくれる。

 彼等なら梨奈を助けられるだろう。

 それを見たら、力が抜けてきた。

 騎士の一人が俺にも手を差し伸べてくれたが、手を掴む力が残っておらず、あと少しのところで離れてしまい、川に流されてしまった。

 最後に梨奈を見ると、青白い顔をしていた。

 梨奈を頼んだ。そう叫んだが、水音にかき消されていく。


 神様、梨奈を助けてください。

 頭の中には、自分が岸に上がる事より、梨奈の真っ青な顔で一杯だった。


 俺のこの世界での人生はこれで終わりか…

 また後悔ばかりだな。


 梨奈と一緒に生きていけるのであれば、この世界で生きていく意味があると思った。

 自分でも梨奈に執着し過ぎだと自覚はある。だけど前世の記憶が余りにも重かった。


 前世では、梨奈を引き留めたばかりに、彼女も一緒に事故に巻き込まれ、死んでしまった。

 何故、あの日、あの場所で声をかけてしまったのだろう?機会はもっと前にあったんじゃないか?

 何度も後悔したのだが…


 今世でも俺のせいで溺れさせてしまった。

 どこで間違ったのだろう?

 また転生する事ができるだろうか?

 梨奈に会って謝りたい。


 流されながら、そんな事を考えていたら、意識が朦朧としてきた。


 梨奈……


 そう呟いた後、完全に意識を手放した。






お読み頂き、ありがとうございました。


次はクロード視点です。

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