表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢は婚約破棄を言い出した王子様に決闘を申し込む。  作者: 藤宮サラ
第二章 決闘後

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

102/120

北の国とアリアナ1(ヨハネス視点)

ブックマーク等、ありがとうございます。

励みになります。

 卒業パーティーの騒ぎの後、姫は消えた。

 彼女を追って、王子たちも姿を消した。

 転移魔法か…と呟いてしまう。


 いとも簡単に転移出来る魔法力が羨ましいと思った。

 だが、僕にはこれからやらなければならない事がある。


 頭を切り替えて、直ぐに帰国の準備をする。

 側近に急に帰国しなければならない事を詫びる書状をこの国の王家に届けてもらう。

 普段はフランベール国の色々な町を見ながら帰国するのだが、今回は時間が無い。

 この国にある我が国の大使館の転移ポイントを使い、国に戻る事にした。


 僕が見た先見が正しければ、彼女は僕の国へやって来る。卒業パーティーの前日に挨拶として、手を取った時に、またイメージが流れ込んできた。

 かなりはっきりとした映像だったから、間違いなくここ数日で起きる事だろう。

 彼女を迎え入れる準備をしなければ。



 久々の城は変わりがなかった。


『お兄様!お帰りなさい!』

 妹が屈託のない笑顔で駆け寄って来た。


『マリー、ただいま。いい子にしていたか?』


『もちろんよ。いつまでも子供扱いしないで!』


 クスクス笑いながら、母がマリーの後ろから、歩いてくる。


『母上、ただいま戻りました。お願いがあります。私の友人の女性を暫く滞在させたいのです。手配をお願いできますか?』


『ヨハネス、お帰りなさい。女性なのにお友達?貴方が結婚を申し込んでいる彼女じゃないのかしら?』

 母は嬉々としている。


『確かに彼女に国として結婚を申し込んでいますし、私は好意を持っていますが、彼女は私の気持ちを知りません。ですので、友人として迎えて下さい。父上は?』


『女神の森で狩に出かけていらっしゃいます。』


 やはりと思う。

 先見は間違いない。


『父上はいつお戻りの予定ですか?』


『明日の午前には戻ると伺っています。』


『ありがとうございます。明日私も父上を迎えに行きましょう。』


 明日、父上がアリアナ姫と一緒に女神の森から出てくるはずだ。彼女は姿を変え、父上と並んでいるところを先見で見たのだ。

 姿は違えど、あれはアリアナ姫だ。

 彼女の手を取った時に見えた映像だから、間違いない。


 本当は今すぐ迎えに行きたい。

 だが、先見を覆す事は出来ない。

 悶々としながら、彼女の為の準備を整えた。


 次の日の朝、騎士団の一隊と一緒に女神の森の入り口まで出向く。


 入り口の木々が揺れ、数名の騎士と共に父が出て来る。

 アリアナ姫は何処だ?

 次々と出て来る騎士たちに守られて、アリアナ姫が出てきた。

 先見で見た様に、姿を全く変えて。

 わかっていても、実際に目にすると、やっぱり驚いてしまう。

 この周辺国では見ない顔立ちで、漆黒の艶やかな髪に琥珀色の丸い大きな瞳で、愛らしい。

 以前のアリアナ姫は近付く事さえ、躊躇う様な美しさであったが、今は愛玩動物の様な可愛らしさが前面に出ている。

 とりあえず、怪我も無く、元気そうで安心した。


 彼女は整列する騎士団に目を丸くして驚いている。

 そうだろうと思う。父上は狩人そのものの格好で、どうかしたら山賊と間違われてもおかしくない風貌だ。

 騎士団が捕まえに来たと勘違いしてもおかしくない。

 あまり驚かせてはかわいそうだと、父に声をかけて、私は前に出た。


『父上、無事にお戻りで何よりです。そちらのお嬢様は?』


 アリアナ姫だとわかってはいても、知らない振りをしておく。

 彼女の魔法力であれば、いつ逃げられてもおかしくない。警戒されない方がいいに決まっている。


『ああ。この娘はリナ。森で拾ったから、連れて帰る。』


 リナって、ルーカスが呼んでいた愛称か。

 姫はルーカスの事が気になっているのか?

 胸の奥がズキッと痛む。


 自分が抜け駆けの様な事をしている自覚はある。

 だけど、先見で見た事は覆らないという理屈と、姫を保護する為という口実で、姫を独占したいという気持ちを隠し、今ここに立っている。


 自分の感情を隠し、平静を装って、父に話しかけた。

『父上、犬猫でないのですから、簡単に拾ったなど口にされないでください。せめて保護したと。』


 アリアナ姫を拾ったなど、失礼だ。


 姫に目を向けると、微笑んでいた。

『お初にお目に掛かります。リナと申します。』


 僕も知らない振りをして、挨拶をする。

 そして彼女を逃さないよう、自分の馬へと誘導する事にした。


『ヨハネスです。では、私が馬に乗せましょう。』


 僕がそう言えば、父はニッと意味深な笑みを浮かべた。


『そうしてくれ。』


 父も何か気付いているのかもしれない。

 天性の野生の感は侮れないものがある。


 僕は姫に微笑みながら、馬に乗せて、自分は後ろに乗り、彼女を支えた。

 彼女は馬に乗れるのだろうか?

 少なくとも怖がっている様子はない。


 腕の中に彼女がいる事が、信じられないほど嬉しい。

 例え片思いでも、今までゆっくり話す隙さえ無かったのだ。


 今の彼女は、とても親しみ易く感じる。

 彼女は姿を変えているから、僕が気付いていないと思っているのだろう。

 だけど意識しているのは、わかってしまう。

 心の中で、クスっと笑い、彼女の驚いた顔を想像してみる。

 きっと、もっと目を丸くして、可愛いのだろうなぁ。


 もっと知らない振りをして、彼女の違う一面を見てみたいけれど、彼女が気を張り詰めるのは、望んでいない。今なら彼女にそっと話が出来る最高の機会だと思う。

 号令とともに、隊列が動き出すと、僕は彼女の耳元で囁いた。


『姫、ご無事で何よりです。私がお迎えに行けず、失礼いたしました。どうぞ我が家でごゆっくりお過ごし下さい。』


『は?』


 彼女の体が強張ったのがわかる。 

 だけど、彼女はシラを切った。


『私は姫と呼ばれる様な身分ではありませんわ。殿下とは初対面ですわよね。』


 殿下と呼んでいるところが、姫らしい。

 父も僕も身分を明かしていない。

 父は城以外では、王だと名乗ることは無い。

 僕も名前しか伝えていない。


『殿下と呼んでいる時点で、姫が私の事をご存知だと証明しているとは思いますが…私は言いましたよね。歓迎しますと。詳しい話は、後で落ち着いてからにしましょう。少し急ぎますので、舌を噛まない様お気を付けてください。』


 僕はそう言って、馬のスピードを上げた。

 父が飛ばし出したのだ。

 騎士団も同じ様にスピードを上げていく。


 半刻ほど馬を走らせると、城に着いた。

『お疲れでしょう。先にお部屋にご案内させます。必要な物は部屋に揃っているはずですが、足りない物がありましたら、侍女に申し付けてください。』


『恐れ入ります。ですが、殿下にご迷惑をお掛けする訳には…』


 彼女が固辞しようとするのを強引に遮った。


『その件は、後で昼食を取りながらでも、ゆっくり話をしましょう。』


『かしこまりました。』


 姫を用意した侍女に預けて、僕は両親に話があると、申し出る。


 家族の居間で、二人にアリアナ姫の事を伝える。

 素性を明かしていた方が、彼女を守りやすい。

 父は見た目は山賊の様だが、戦いの場では、有能な戦士であり、指揮官であった。


 それに父はアリアナ姫を無理矢理国に帰す事はしないと確信があった。

 義理堅く、正義感の塊である父は、アリアナ姫が受けた仕打ちに間違いなく同情するだろう。


 父と向き合って、背筋を伸ばす。


『彼女はフランベール国のファーガソン公爵家のご令嬢です。彼の国の第二王子から婚約破棄され、王家からその身を狙われています。我が国で保護すべきだと。』


『彼女がお前の姫か?』


『はい。私の片恋ですが。』


 そう言えば、父はニヤリとした。試されているのがわかってしまう。お前は彼女を守れるのかと。


『フランベール国から身柄引き渡しを要求される可能性は?』


『幸い、彼女の姿形が全く違います。女神の森で保護した遠い異国の者でフランベール国とは関わりがないで、構わないでしょう。』


『彼女の意思は?』


『まだ話ができておりません。これから確認致します。』


『うむ。あの娘の意思次第だな。彼女が望むのであれば、城で保護する事は認めよう。後はお前に任せた。くれぐれもフランベールとは揉めない様に。』


 やはりフランベール国との問題が一番だな。

 どう動くかを考えながら、父に礼を執った。


『かしこまりました。』


 父との会話が終わると、母が声をかけてきた。

 まだ彼女とは、挨拶をしていなかったが、遠目で見かけたそうだ。


『ヨハネス、彼女がアリアナ姫なのですか?とても愛らしいお嬢様でしたが。』


『そうです。冬の間の手仕事の販売先を開拓してくださった方です。疲れていると思い、先に部屋へと案内しました。晩餐の時にでもご紹介いたします。』


『まぁ、それではお礼をしなければなりませんね。』


『母上、彼女は姿形を変えています。アリアナ姫とは認めないでしょう。彼女はフランベールだけでなく、他国からも狙われていますから。彼女の意思を確認してからになりますが、このまま我が国に滞在して頂くのであれば、リナ嬢として接するべきかと。』


『そうですわね。ですが、失礼のない様に。公爵家とはいえ、ファーガソン公爵家は周辺国にも名を馳せています。本来なら公爵家に保護していると伝えるべきなのです。彼等の大事なお嬢様なのですから。我が国で保護するにしても、いずれ時期を見てご連絡を差し上げる事を忘れない様に。陛下もですよ。城でも城以外でも、威厳と王らしい振る舞いを忘れないでくださいませ。』


『ああ、それは無理だなぁ。リナと会ったのは森の中だからなぁ。』


『陛下!』


 父の無茶振りはいつもの事だ。

 森の中では山賊にしか見えないだろう。

 よくも母は嫁いだものだと思う。


 とりあえず、両親の許可を得る事が出来た。

 次はアリアナ姫への説明と説得だな。


 どう説明するべきかと考えながら、彼女の部屋へと向かったのだった。




お読み頂き、ありがとうございました。

ヨハネス視点を一話で終わらせるつもりが、終わりませんでした。次回もヨハネス視点になってしまいます。m(_ _)m

不定期更新ですが、次回はなるべく早く更新出来る様、がんばりますので、お付き合い頂けますと嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=158316304&s
― 新着の感想 ―
[一言] アリアナの容姿が変わったのは、これから説明があるのでしょうか。 婚約解消ができたので、アリアナには自由になってほしい気もするけれど、 ルーカスとは過去のことなので、結ばれてほしくないですねぇ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ