Track42「私を嗤った奴らに復讐したいから」
「言い方がきつかったかもしれない。それに気付くのはいつも後なの。さっきのは良くなかったって、一応ちゃんと分かるのよ。でも一度口から出た言葉は戻って来てくれない。私は、どうしたらいいの?」
「どうしたらいいんだろうねー」
「大人でしょ。分からないの?」
「正論なら言えるよ。でもモモちゃんが欲しいのは、それじゃないでしょ? そしてそれは自分で答えを見つけなきゃいけないわけ。それが人生だから」
「味方って言ったのに……」
「簡単に答えが見付かったら、モモちゃんは、すぐに人を頼るようになるでしょ? 自分で見つけれなさそうなものには手を貸す。でも自分で、どうにか出来そうなものだったら教えない。自分の足で歩いて欲しいから」
「さっきのテストの話みたいに?」
「そうそう! 思いつかなかったでしょ?」
「そうね」
それでも答えを教えて欲しかった。迷いながら歩く途など恐怖でしかない。
「俺達は君のそれが個性だって分かってる」
「え?」
「俺の『傷付いたー』は愛情表現ってこと。モモちゃんに俺の心は壊せないよ」
「つまりイジメていいってこと?」
「この子は、どうしてそういう発想になるのかな!?」
「冗談よ」
「よかったー!」
「四季さん」
「はい?」
「私、学校には行かない」
「そう」
「無理しない。その代わりノアブルを一番にしてあげる」
「それはどういう意味の一番?」
「トップアーティストにしてあげるってこと。そして私は一番のドラマーになる」
「その心は?」
「私を嗤った奴らに復讐したいから」
「最高にロックだねー! 俺、そういうの大好き!」
「それで、このドライブはどこに向かってるの?」
「すっごく今更だねー、じゃあ彩斗のところに行こうか」
「え?」
「モモちゃんがスッキリした顏してるから、ご褒美に? まぁ、さっきも会いたかったは会いたかったんだろうけど可愛くない顔じゃ嫌だと思ってさ。好きな人には可愛い自分で会いたいもんでしょ?」
この人は何者なのだろう。女心が分かるあたり、やはり女の扱いに長けている気がしてならない。けれども、彼が語らないのならそれでいいと思った。私が開示したからといって、そんな義務はないのだから。私は誰かに話を聞いて貰いたかった。それだけだ。
「あ、透子さんだ!」
「え?」
「透子さーん! 乗って行ってください!」
歩道の側に車を止め、窓から顔を出した四季さんが手を振っている。日傘を差した彼女は此方に気付くと、小走りで駆け寄り後ろの座席に乗り込んだ。
「ありがとう、四季君。暑くて溶けそうだったのよ」
「いえいえ、今から迎えに行こうと思っていたので丁度良かったです」
「え、ここらへん透子さん家の近くなの?」
「ええ、少し細い道に入って行ったところなのよ。モモちゃんは……」
「行ってないわ」
堂々と言ってのける私に、透子さんが瞬きをする。その後、穏やかな笑みで「そう」と言うものだから拍子抜けした。てっきり説教でもされると思っていたから、鼻っ柱を折られた気分だ。
「モモちゃんが元気そうで良かったわ」
「透子さん、つかぬことをお伺いしますが」
「はい?」
「彩斗と付き合ってたりしませんよね」
「何訊いてんよ!?」
「だって今訊かないと二度と訊けないからね!?」
何してんのよ、とか思いながらも答えは気になる。私と四季さんは後部座席の透子さんをこぞって仰ぎ、答えを急かした。




