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ねぇ、戻りたい【電撃大賞4次落選作】  作者: 衍香 壮
Third Single「サーカズム」
39/83

Track38「虚しい嘘」

「ねぇ」


「なによ」


「さっきのホント? 彩斗が透子さんとイチャついてたって」


「こんな虚しい嘘吐くと思ってんの!?」


「ですよねー! でも、でも、それだけで決めつけるのは早くない?」


「じゃあ訊けば?」


「え?」


「彩斗さんに訊けばいいじゃない」


「いやいやいや、なーに言ってんのかなぁ? モモちゃーん」


「きっも」


「君さ、だんだん彩斗に似てきたよね」


「だったら何よ」


「なんでもないです。はぁー、まさか彩斗が……すぐメンバーを食うようなチャラ男だったなんて」


「彩斗さんを貶さないでくれる? そもそも四季さんにチャラ男とか言われたくないと思う」


「なんで!?」


 なんでも何もないだろう。色素の抜けた金糸。均衡の取れた顔立ちに、派手な出で立ち。軽い言葉や鮮やかな動きは、どれをとっても女性と真摯に付き合うようには見えない。それが悪いとは言わないが、そんな人に好きな人を貶さないで欲しかった。


「金髪だし」


「彩斗も金髪だけど!?」


「彩斗さんのは似合うからいいの!」


「俺のは似合わないの!?」


「別に似合わないわけじゃないけど彩斗さんのが似合うわ」


「ホントに!? へへー、彩斗の真似して良かったー」


「きっも」


「それスゲー傷付く」


 剥れた四季さんが、文句を垂れる。私は、それに一切返事をせず、自らの掌に視線を落とした。〝傷付く〟それは私が嫌と言うほど言われた言葉。どうやら私の言葉は他人を傷付けてしまうらしい。本人の意思とは関係なく動く口に、恨み言を連ねたい気分だった。


「モモちゃん」


「なによ」


「突然、黙らないでくれる!? 急に無言は怖い!」


「四季さんのそういうテンションのが怖いわよ!」


「なにそれ傷付く!」


「傷付く、傷付くって……その言葉に私が傷付くとは思わないわけ!?」


 無駄口を叩く口唇を掌で覆う。零してはいけない思いを吐き出してしまわぬよう、私は物理的に口を封じた。


「そうだねー、モモちゃんはそんなことで傷付くようには見えないかも」


 ほら、この人もこうやって私を傷付けてくるのだ。哀しさを映した瞳を隠すよう瞼を下ろす。澄んだ耳には車のエンジン音と四季さんの声だけが入ってきた。

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