Track38「虚しい嘘」
「ねぇ」
「なによ」
「さっきのホント? 彩斗が透子さんとイチャついてたって」
「こんな虚しい嘘吐くと思ってんの!?」
「ですよねー! でも、でも、それだけで決めつけるのは早くない?」
「じゃあ訊けば?」
「え?」
「彩斗さんに訊けばいいじゃない」
「いやいやいや、なーに言ってんのかなぁ? モモちゃーん」
「きっも」
「君さ、だんだん彩斗に似てきたよね」
「だったら何よ」
「なんでもないです。はぁー、まさか彩斗が……すぐメンバーを食うようなチャラ男だったなんて」
「彩斗さんを貶さないでくれる? そもそも四季さんにチャラ男とか言われたくないと思う」
「なんで!?」
なんでも何もないだろう。色素の抜けた金糸。均衡の取れた顔立ちに、派手な出で立ち。軽い言葉や鮮やかな動きは、どれをとっても女性と真摯に付き合うようには見えない。それが悪いとは言わないが、そんな人に好きな人を貶さないで欲しかった。
「金髪だし」
「彩斗も金髪だけど!?」
「彩斗さんのは似合うからいいの!」
「俺のは似合わないの!?」
「別に似合わないわけじゃないけど彩斗さんのが似合うわ」
「ホントに!? へへー、彩斗の真似して良かったー」
「きっも」
「それスゲー傷付く」
剥れた四季さんが、文句を垂れる。私は、それに一切返事をせず、自らの掌に視線を落とした。〝傷付く〟それは私が嫌と言うほど言われた言葉。どうやら私の言葉は他人を傷付けてしまうらしい。本人の意思とは関係なく動く口に、恨み言を連ねたい気分だった。
「モモちゃん」
「なによ」
「突然、黙らないでくれる!? 急に無言は怖い!」
「四季さんのそういうテンションのが怖いわよ!」
「なにそれ傷付く!」
「傷付く、傷付くって……その言葉に私が傷付くとは思わないわけ!?」
無駄口を叩く口唇を掌で覆う。零してはいけない思いを吐き出してしまわぬよう、私は物理的に口を封じた。
「そうだねー、モモちゃんはそんなことで傷付くようには見えないかも」
ほら、この人もこうやって私を傷付けてくるのだ。哀しさを映した瞳を隠すよう瞼を下ろす。澄んだ耳には車のエンジン音と四季さんの声だけが入ってきた。




