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ねぇ、戻りたい【電撃大賞4次落選作】  作者: 衍香 壮
Third Single「サーカズム」
37/83

Track36「ギルティ」

 このまま家に帰れば両親が慰めてくれるのだろう。けれども、それに縋る気にはなれない。かと言って、不健全にも不登校な幸が、彩斗さんを独り占めしているのかと思えば面白くない。わざわざ確認しに行くのは癪だし、口の達者な幸のことだ。尻尾を巻いて逃げ出してきたことを知った瞬間、自分を棚上げし馬鹿にしてくることだろう。わざわざネタを与えてやるつもりはない。だからと言って行き場もなかった。


「モーモちゃん!」


「四季、さん?」


 けたたましいクラクションが鳴り響く。視線を音の在り処へ向ければ、車の窓から顔を出す四季さんが居た。ということは彩斗さんも!? なんて車の後部座席目掛けて走る。マジックミラーを見通す為、手で影を作るも、そこには誰もいなかった。


「はぁ~~~~」


「溜息ふっかいねぇー、そんなに彩斗に会いたかったわけ?」


「当たり前じゃない! 彩斗さんは私の心のオアシスなのよ!」


「見た目ヤンキーじゃん」


「ヤンキーじゃないわ! 彩斗さんを馬鹿にするのは四季さんでもユルサナイ」


「最後カタコトなのが絶妙に怖い」


 そう言いながら優しく笑った彼が「乗りな」と言う。車に乗り込むと、冷え切った車内が私を歓迎した。


「この涼しさギルティだわ」


「君、本当に中三?」


「なによ。制服が似合わないとでも?」


「いーや、でもモモちゃんはラフな服着て、ドラム叩いてんのが似合うね」


 車を発進させた彼が、人好きのする笑みを浮かべる。それに頬を染めたりはしないが、照れ臭さから目を逸らした。飾り気のない褒め言葉は素直に嬉しい。けれども「ありがとう」と象ることは出来なかった。


「事務所に行くんじゃなかったの?」


「んー、だって今、会いたくないでしょ? 家にも帰りたくないだろうし」


「……なんで分かるのよ」


「俺も同じだったからね」


 通り過ぎた事務所を目で追い訊ねる。振り仰いだ彼の目は郷愁に染まっていた。


「どういう意味?」


「モモちゃんさ、彩斗と透子さん以外に敬語使わないよね」


「だから何よ? 私は、あの二人以外メンバーとは認めてないんだから」


 こんなことを言いたかったわけではない。口から零れる言葉は本心ではないし、語弊がある。けれども、それを主張する気にはなれなかった。


「そういうこと言わない方がいいよ」


 ほら、この人も、こうやって否定するのだ。正しさは毒でしかない。私の言い方も悪かったが、一方的に毒薬を飲まされるのだけは懲り懲りだった。


 息を止め、生唾を呑み込む。スカートの襞を握り締め眼を固く閉じれば、彼の声が降り注いできた。

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