Track33「秘密の告白」
「どこか苦しいんですか?」
「なんでもないわ。ねぇ、もう一回リハーサルって出来るかしら?」
「弾けそうなんですか?」
「今ね、凄くギターを弾きたい気分なの」
上手に笑えた気がした。彼が出会った数多の女の子には敵わないだろう。けれども、私史上最高の笑みだったと自負出来る。
「俺、四季に言ってきます」
「ありがとう」
ワゴン車から駆け下りていく彼の背を窓越しに追う。誰も見ていないことを確認しながら、私は自身の額に手をやった。そのままポンポンとしてから左右に動かす。
「やっぱり気持ちよくないわね」
この呪いは他人にやって貰わないと意味がない。だからこそ、恋心を秘める代わりに告白を赦して貰うことにした。彩斗君への告白を。旋律に乗せて、清澄な音色にしてから歌わせてあげる。分からなくていい秘密の告白だ。
「綺麗にしたらいいわよね……?」
美しくない私の、美しい告白を断罪しよう。彼を困らせない為に、私は音を奏で続けるのだ。
「透子さん! いいって!」
彩斗君の呼び声に、私は安堵の息を吐いた。
「タメ口の彩斗君って新鮮ね」
「え? 俺タメ口なってました!? すみません!」
「いいのよ。可愛かったから」
私を助けてくれた時も、いつもの話口調に戻っていたが、それは心に秘めておこう。アレは私だけの思い出だ。
「俺に〝可愛い〟なんて変わってますね」
「そうかしら? 面倒見が良くて、無邪気に笑うところなんて魅力的だと思うわよ」
「やりー、透子さんに褒めて貰っちゃった」
「こんなので良ければいくらでも」
「おまじない、またしておきます?」
「遠慮しておくわ。モモちゃんと幸君に怒られそうだもの」
「弾けそうですか?」
「ええ」
——弾かなければいけない理由を見つけたから。
それは告げなかった。私が壊れてしまうような気がしたから。
「ご迷惑お掛けしました! よろしくお願いします!」




