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ねぇ、戻りたい【電撃大賞4次落選作】  作者: 衍香 壮
Second Single「ルシッドドリーミング」
34/83

Track33「秘密の告白」

「どこか苦しいんですか?」


「なんでもないわ。ねぇ、もう一回リハーサルって出来るかしら?」


「弾けそうなんですか?」


「今ね、凄くギターを弾きたい気分なの」


 上手に笑えた気がした。彼が出会った数多の女の子には敵わないだろう。けれども、私史上最高の笑みだったと自負出来る。


「俺、四季に言ってきます」


「ありがとう」


 ワゴン車から駆け下りていく彼の背を窓越しに追う。誰も見ていないことを確認しながら、私は自身の額に手をやった。そのままポンポンとしてから左右に動かす。


「やっぱり気持ちよくないわね」


 この呪いは他人にやって貰わないと意味がない。だからこそ、恋心を秘める代わりに告白を赦して貰うことにした。彩斗君への告白を。旋律に乗せて、清澄な音色にしてから歌わせてあげる。分からなくていい秘密の告白だ。


「綺麗にしたらいいわよね……?」


 美しくない私の、美しい告白を断罪しよう。彼を困らせない為に、私は音を奏で続けるのだ。


「透子さん! いいって!」


 彩斗君の呼び声に、私は安堵の息を吐いた。


「タメ口の彩斗君って新鮮ね」


「え? 俺タメ口なってました!? すみません!」


「いいのよ。可愛かったから」


 私を助けてくれた時も、いつもの話口調に戻っていたが、それは心に秘めておこう。アレは私だけの思い出だ。


「俺に〝可愛い〟なんて変わってますね」


「そうかしら? 面倒見が良くて、無邪気に笑うところなんて魅力的だと思うわよ」


「やりー、透子さんに褒めて貰っちゃった」


「こんなので良ければいくらでも」


「おまじない、またしておきます?」


「遠慮しておくわ。モモちゃんと幸君に怒られそうだもの」


「弾けそうですか?」


「ええ」




 ——弾かなければいけない理由を見つけたから。




 それは告げなかった。私が壊れてしまうような気がしたから。


「ご迷惑お掛けしました! よろしくお願いします!」

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