Track22「残酷な言の葉」
「London Bridge is broken down,
Broken down, broken down.
London Bridge is broken down,
My fair lady」
「上手いじゃん」
褒めてやれば照れたように鍵盤を見つめる。横目で此方を伺う仕草に笑いそうになった。
「ココからは一緒です」
「「Build it up with wood and clay,
Wood and clay, wood and clay,
Build it up with wood and clay,
My fair lady」」
二番の歌詞を共に奏でる。顔を見合わせていれば「次からはお一人でどうぞ」と言われた。音響に身を委ね、感情を束ねた声に乗せる。旋律は鮮やかに、けれど確実に狂っていった。
「Wood and clay will wash away,
Wash away, wash away,
Wood and clay will wash away,
My fair lady.
Build it up with bricks and mortar,
Bricks and mortar, bricks and mortar,
Build it up with bricks and……お前、耳が聞こえねぇのか?」
喉元から残酷な言の葉が零れ落ちる。途端、幸の手が止まった。バレないとでも思っていたのだろうか。会話が成立している為、気付きもしなかったが、彼の指先が彩る旋律は明らかに乱れていた。
鍵盤から流れるのは秩序の崩れた音。乱れ足を楽譜に刻んでいく様は、憐憫よりも哀愁を誘った。これが彼の〝理由〟か、と眉根を寄せる。顔を伏せている様がまた痛々しく思えた。
「四季は知ってるのか?」
「はい。そういうことですのでバンドは無理そうです」
「なんで笑ってんだよ……?」
「今更なんですよ。僕にはもうピアノを弾く資格なんてないんです。なのに……」
「来い」
「え?」
「立て」
吃驚を零す幸の二の腕を掴み、椅子から引きずり下ろす。怒りのまま扉を開けると、妖しい笑みを携える四季がいた。




