Track18「メロディライン」
「じゃあ一段落したみたいだし、今後の方針ね!
まず〝ラクリマ〟を完成させたらPV撮影に移ろうと思ってます。その後にネットで公開。同時にゲリラライブをして、反響次第で箱を押さえる。メジャーデビューを前提にしてるし事務所の方針も、それで決まってるけど。固定ファンの威力は凄いからね。暫くはインディーズであることを売り出すつもりです。あ、因みにデビューライブも企画してます! ココまでで質問は?」
「あ、あの……箱って?」
「ライブハウスのことです! 普通は一番初めにそこでやるんですけど、ノアブルは、ちょっと勝手が違うので。そもそもこんなに早く、皆さんが揃うと思ってなかったんですよねー、だからライブはまだ先かなって。でも折角揃ったんだし、彩斗の外出問題も解決したし、したいなって思うんです。テレビ出る前の肩慣らしがてらいいかなって」
「成る程」
「大丈夫ですよ。ライブなんて慣れですから。やっぱり透子さんも緊張します?」
これが授業ならノートでも取り出しそうだな、と思いつつ問い掛ける。彼女は顔を上げると、自信無さげに俯いていた。
「そうね。元々、人前に出るのってあまり得意じゃなくて」
「……ねぇ、俺気になってたんだけど、なんで突然碧井さんを透子さん呼びしてんの!?」
「さっき約束したから」
「約束ってなに!? 俺、知らない!」
「そりゃ、四季はいなかったからな」
「俺も透子さんって呼ぶ! 青郷君は隼君って呼ぶからね!」
「……俺まで巻き込まないでくださいよ」
「わ、私は嬉しいです……! 下の名前で呼ばれることって無かったので。私も四季さんって、お呼びしていいですか?」
「勿論! 透子さんって本当に癒し系ですよね!」
「お前、キモイんだよ話進めろ。バーカ」
「彩斗は俺に冷たすぎない? まぁ、いいや。
曲は他にも出来上がってるから後で譜面を渡します。録れるぶんは録っちゃって、メジャーデビュー後はタイアップと共に売り出してくつもり。因みに今できてるのは『ラクリマ』の外に五曲『ルシッドドリーミング』『サーカズム』『Rejection』『ジェイド』『vogue grace』どれも譜面まで出来ちゃってるから各自練習をお願いします。彩斗は仮歌が入るまで待っててね」
「いや、メロディライン入ってれば大丈夫だぞ。ラクリマと同じ感じなら全然余裕」
「そ? じゃあ、そのまま曲を渡すわ。えーっと、あとは特にないかな。何か質問ある人?」
「私、この後録ってくの?」
「モモちゃんは録ってくよー、他の皆は解散してもOKだけど見学して……いくね。その顔は」
眉をハの字にした四季が呆れた表情を浮かべている。その後、俺達は連絡先を交換しモモのドラムに歓声を上げた。