Track17「子供のように」
「はじめは顔を出して載せた。でも皆、この体格からはこんな音は出ないとか。子供に出来るわけがないとか。映像と音がずれてるとか……いちゃもんばっかり付けるの。だから顔を隠したの。隠して肩パッド入れて歳と性別が分かんないように……」
「肩パッド?」
「ああ、そうそう。俺がなんでMOMOを男だと思ったかって肩幅だったんだよね。とても女の子っぽくは見えなかったから」
思わず聞き返す俺に四季が答えを提示する。四季に向けていた眼差しをモモへ戻せば、奥歯を噛みしめているのが分かった。
「肩パッド……アハハハハ! お前すげぇな! 肩パッド入れてたのにあんな動きしてたのかよ! ズレたりしなかったのか?」
「たまにズレるから大変だったに決まってるでしょ!」
「だよな! 凄いわお前……アハハハハ!」
「馬鹿にしてんの!?」
「ちげぇよ。すげぇなって言ったじゃん。お前、カッコイイよ」
立ち上がりモモのもとへ向かう。目の前に立つと、頭一つ分ほどの身長差が可愛らしく思えた。
「あんだけ出来るようになるまで頑張ったんだな」
優しく頭を撫でてやる。驚きで強張った肩を解すように、優しく語りかけた。
「なっ……!? が、頑張ってなんか……!」
「よしよし、褒めてくれる奴がいないなら俺が褒めてやるからな」
「髪がグチャグチャになるでしょ……」
「悪いな。良い子はよしよししたくなるタチなんだ」
文句を垂れ流しながらも彼女が拒絶することはない。それに緩みそうになる口端を諫めた。
「隼」
「……悪かった」
「よし、お前も後で撫でてやる」
「いらねぇよ!」
「いいなぁ! 仲良いのいいなぁ! 俺も混ぜてよー!」
「キモ」
テーブルに両手を附いた四季が子供のように叫んでいる。それに一瞥を繰り出せばモモが笑っていた。揺らいだ湖面が、すぐさま居直ることはないが少しばかり落ち着いたようだ。
「泣きたい時は胸くらい貸してやる」
モモにだけ聞こえるよう囁き肩を叩く。お前も座りな、と合図を送り、モモの隣に腰掛けると大人しく従う彼女が居た。顔を伏せているのは泣きそうに歪んだ顔を見られないようにだろう。背中を撫でてやると、小さな肩が震えていた。