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………………なんか……上下関係がはっきりしちゃった気がする。

本日はここまで。

また気が向いたら更新します。








「おはようございます、テオ様」





朝、魔王屋敷の扉を開けたら……真っ白い馬がおりました。


バタンッ。


俺は何も言わずに扉を閉める。

そして、大きく息を吐いた。


「今日の外仕事は止めておこう」

『テオ様〜‼︎出てきて下さい〜‼︎』


ドカカカカカッ‼︎


「ノックどころの騒ぎじゃねぇ‼︎止めろ、扉が壊れるだろうがっっ‼︎」


連続ノックに扉の耐久値が心配になった俺は慌てて、扉を開く。

………………え?


「おはようございます、テオ様」


…………馬。

いや、馬だよな?

もうこの際、喋るとかはツッコミ入れねぇよ。

野菜だって意思があるし。

でもさ………。



馬って、翼を持ってたっけ?



「…………お前……隠れ里にいた馬?」

「はい。アイシャ様の愛情と、テオ様の魔力で進化しました」

「しんか」


馬って進化すると翼が生えるのか。

……………あれ?馬って鳥類だっけ?


「他にも進化したため、喋れるようになったひよこ六匹と子羊、子牛が二匹ずつおります。今日からお世話になります」

「すまん、話が見えん」

「お二人のおかげで進化しましたので。お二人の元でご恩を返そうかと」

「ご恩を……返す……?」

「まぁ、成長するまでお世話をお願い致しますが。あ、親達には許可を頂いておりますし、わたくしが責任者でございます」


……………………おぅ……。

ちょっと現実についていけないな……。

ここに来てから俺の常識がフライアウェイしてんだけど。

どうすりゃいいの?

全てを受け入れるしかないの?

分からない。

誰か教えてくれ。


「どうしたのじゃ〜?」


後ろからやって来たアイシャは、翼の生えた白馬を見て固まる。

そして、勢いよく俺を見た。


「馬って翼あったかの⁉︎」

「ねぇよ‼︎」

「妾、びっくりじゃよ⁉︎」

「俺もびっくりだよ‼︎」




取り敢えず……馬達は、屋敷の庭園に住むことになりました。

後日、畜舎を建築します……何故か俺が。



一つ分かったことは……俺とアイシャが揃うと、生態系が謎進化を遂げるということでした。



わぉ、びっくり‼︎





「やべぇ……驚きのあまり、一瞬俺が俺じゃなくなった……」


屋敷のリビングにあるソファに座った俺は痛む頭を押さえながら、呟く。

隣に座って俺の肩に頭を預けていたアイシャも、流石に馬、翼生える事件(動物達が喋る事件)に疲れたようだった。


「妾も疲れたのぅ……進化とか初めてだもん……びっくりするのじゃ……」


愛され体質ゆえ色々普通じゃないアイシャが驚くぐらいって、余程のことだよな?


「今日は休もう……少しぐらい休んでも罰は当たらねぇ……」

「じゃな……」


俺もアイシャに凭れるように力を抜いて、脱力していると……人形侍女(魔王屋敷の謎機能)が静かに目の前のテーブルにお茶を置いて退室する。

ぐてーっと二人してお茶を飲んで休憩していたら……アイシャが「あぁ、そうだった」と思い出したように呟いた。


「テオ」

「なんだ?」

「明日、街に買い物に行くぞ」

「…………………ん?」

「ん?」


………………俺達は互いに顔を見合わせ、首を傾げる。

いや、ちょっと待て。


「お前、魔王だよな?」

「魔王じゃな」

「街に行って大丈夫なのか?」

「だって、魔王って言わなければバレぬもん」


……………………なんだとっっ⁉︎

俺はガバッと身体を起こして、彼女を見つめる。


「えっ⁉︎魔王って魔王城(屋敷だけど)にいなきゃいけないんじゃないのか⁉︎」

「いや、別にいつもいる必要はないぞ。世界のルール的な問題で、魔王への挑戦者が現れた時は強制転移させられてしまうが……別にどこに遊びに行こうと問題ないのじゃ」

「えぇぇぇ……」

「今までの魔王達は、娯楽なんて享受せずにただ勇者に倒されるのを待つだけじゃったらしいけどな」


…………えぇぇぇ……歴代の魔王、可哀想すぎるだろ……。


「まぁ、妾、詳しいことは分からないのじゃ。この世界の仕組みを作ったのは兄様じゃし。妾がしたのって生き物達に感情を与えたぐらいだし」

「ぶふっ⁉︎」


え?俺達に感情を与えたのって、アイシャなのか?

それ、アレじゃね?

神様じゃね?

あ、神様だったか。


「とにかく、テオの洋服とか買わなくちゃな。ついでに遊ぼう?な?」

「絶対、遊ぶのメインで俺の服とかはついでだろ」

「だってだって‼︎妾、テオと遊びたいんじゃよ‼︎ねぇ、お願い‼︎今日疲れたし‼︎」

「うぐっ⁉︎」


上目遣いで俺の腕をぎゅーっと抱き締めるアイシャ。

ちょ、止めろ。

胸が、俺の腕が埋まるっ……‼︎


「わ、分かったから‼︎いくらでも付き合うから腕を離せっっ‼︎」

「わぁーいっ‼︎」


アイシャは俺の腕を離して、ソファから立ち上がり嬉しそうに飛び跳ねる。

…………こ、これが愛され系女神の本気か……‼︎

女性耐性がないから、無駄に冷や汗が………。


「楽しもうな、テオ♡」

「………………おぅ……」



愛され体質、恐い。






*****






遊びに行く街の近くにある森に転移(アイシャの魔法)した俺は、一瞬「ん?」ってなった。




俺は大きな門から見える王城の屋根を見ながら……この街に入るための列に並び、隣に立つフード(愛され体質を緩和する魔法がかけられているらしい)を被ったアイシャに質問した。


「…………………………なぁ、アイシャ」

「なんじゃ?」

「ここ、街じゃなくて王都・・じゃね?」

「うん」

「それも、勇者召喚が行われた王都だよな?」

「そうじゃが、どうしたんじゃ?」


…………………ふぅ……。

俺は息を吐き、アイシャの両頬に手を添える。

そして………思いっきり引っ張った。


「そーいうのは先に言っておけよっっっ‼︎この馬鹿ぁぁぁぁぁぁ‼︎」

「ふみゃぁぁぁぁぁぁぁあ⁉︎」


同じ列に並んでる周り(奴ら)の目線が、ギョッとしてるけど、仕方ないだろ⁉︎

何があって、自分が勇者召喚された王都にまた来なきゃいけないんだよ‼︎

っていうか、俺、追放されてんだよ‼︎

それ以前に、お前は魔王だろーにっっっ‼︎


「だってー‼︎この国の王都が一番楽しいんだもん‼︎妾、テオと遊ぶならここが一番楽しいって思ったんだもんーっ‼︎」




………………今更ながら、この世界の地理の説明。


この世界は大まかに五つの地域に分かれている。


南にある砂漠地帯が多めの地域が、武の神を信仰していて……信仰する神ゆえなのか、とんでもなく血の気が荒く……屈強な部族が多い。


東の地域は、魔の女神を信仰する人々が多く……魔法で他の地域には見られないほどに高度で、凄まじい発展している。


中央の地域は、癒の女神を信仰しており……僧侶の修行の地とされており、回復役ヒーラーはここで治癒術を学ぶ。


西の地域は智の神を信仰する国が多く、研究機関や教育機関など……世界屈指の学術都市ならぬ学術地方と化している。


そして……最果ての地と呼ばれる北の大陸(地域)

一応、西の地域に北の大陸に繋がる大橋(いつから存在するかが分からない)があるが……まぁ、人は滅多に寄り付かないな。

まぁ魔王が住む地だしな。

勇者の最終目的地だし、未知の大陸扱いだから勇者以外近づこうともしないんだろ。


一応、それぞれの地域に神殿があるんだが……信仰的やら宗教的なモノやらはちょっとよく分からないから、説明は省く。

まぁ、元々農民でしかない俺がこんだけ知ってるんだから充分だと思う。


……………で。

地域の説明に絡めて、重要な大国が五つ。

それぞれの神殿がある大国(又は帝国)と、勇者召喚をする王国だ。



………つまり、俺らが来た王都ニールスは……その勇者召喚をするメルファート王国の王都でして。



魔王と敵対する国だよ、うん。




「………マジねぇよ…どんだけだよ……」


俺は頭を抱えて呻く。

アイシャは周りをキョロキョロしてから……俺の腕を抱えて、耳元に唇を寄せる。


ぷにっ……。


く、唇がっっっ‼︎耳に触れましたけどっっっ⁉︎


「逆に堂々としてる方が、バレないもんじゃぞ?だから、気にしすぎちゃ……だーめ」

「っっっ⁉︎」


囁くような声に、耳元に吹きかけられる息。

慌てて耳を手で覆ったけれど、ゾワリッと背筋が粟立った。

無茶苦茶……ゾクっとしたんだけど……。

アイシャは耳元から離れて、俺の唇に指を添える。

そして、にっこりと微笑んだ。


「……………妾とのデートに集中してね?」

「………………………ふぁい……」




………………なんか……上下関係がはっきりしちゃった気がする。







「………馬鹿ップル……」

「………王都に入るために長時間並んでんのに……」

「なんでこんなん見せられなきゃいけねぇんだ……」

「クソっ……彼女欲しい……‼︎」





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