……………俺、勇者だったんかい。
3話目‼︎今日はここまで‼︎
不定期ですが、よろしくお願いします‼︎
俺が持ってきた剣と、魔王アイシャが持ってた剣が人(俺とアイシャに似た子供姿)になって、キスし出しました。
説明求ム。
「と、取り敢えず……お主ら、聖剣と魔剣かえ?」
アイシャが恐る恐る質問する。
ちなみに、聖剣とは魔王を倒せる可能性が高い人(勇者)が持つ剣で、魔剣は魔王が使う剣のことらしい。
『あぁ。その通りだよ、魔王……いや、愛の女神様』
『えぇ。勇者と魔王という存在があるように、聖剣と魔剣も対なのよ』
二人?二振り?はそう言いつつも、ベタァ……として離れない。
というか……。
「聖剣だったんだ……あれ……」
俺として使ってた聖具……あの剣が聖剣だったことに驚きなんだが。
聖剣は俺の言葉に『あはは‼︎』と笑った。
『何をおかしなことを。テオ様は勇者任命されただろう?』
「いや、されてねぇけど?」
「『『え?』』」
アイシャ達の声が重なる。
俺は頭を掻きながら答えた。
「確かに、勇者召喚はされたぞ?でも、俺と同じパーティーメンバーだったアルドってヤツも一緒に召喚されて……そいつが勇者だって、メルファート王国の奴らは言ってたけど」
「『『はぁっ⁉︎』』」
勇者召喚とは、この世界にいる勇者の資格持ちを魔法陣で召喚することを言う。
かくいう俺も召喚されたんだが……普通な一人であるのに、俺とアルドが召喚されたもんだから、俺は巻き込まれて召喚されたってことになったんだ。
それを説明すると、アイシャはガバッと立ち上がり、聖剣達も凄い剣幕で詰め寄る。
恐い、圧が凄い。
「いやいやいや、おかしいじゃろ⁉︎なんで、テオではなくもう一方の方になるんじゃ‼︎」
「…………顔じゃね?」
「いや、お主も中々顔が良いぞ⁉︎」
「…………いや、俺は普通だって」
アルドの容姿は、赤毛に緑の瞳のキリッとした男らしい容姿だった。
反して、俺の容姿は至って普通だ。
亜麻色の髪に同じ色の瞳。
目立たない普通の顔立ちに、普通の身体つき。
………まぁ、ここに来るまで悪鬼羅刹の如く沢山魔物を殺したから筋肉はついたかもだけど。
それ以外はいたって普通な………。
「お主、馬鹿かのぅ。聖剣の容姿を見ろ」
「………………小さい頃の俺にそっくりだ」
「色じゃ、色」
「…………銀髪碧眼がどうしーーーえ?」
「えいっ」
アイシャがパンッと手を叩くとポンッと鏡が出現する。
そこに映る俺は………。
「銀髪碧眼っ⁉︎」
なんか、凄いことになっていた。
いや、顔立ちは変わってないはずなのに……色が変わってるだけで五割り増しぐらいのイケメンに見える。
なんだこれっ⁉︎
『あぁ、もしかしなくても勇者補正かもね。聖剣を手に入れたから発動したんだよ。勇者ったら仲間が多いほど強くなるから……更に仲間が増えるように勇者補正も入るんだよねぇ』
「……………それって……」
『強い女性でハーレム作ってる勇者が多かったわよねぇ』
聖剣と魔剣の明け透けな言葉に俺は再び頭を抱える。
……………俺、勇者だったんかい。
ってことは、アルドは偽勇者ってことか?
…………俺、勇者なのに偽勇者に勇者パーティーを追放されたのか?
……………なんか、いっそ喜劇だな……。
…………あぁ、そうだ。もうこの際だから、ついでに聞いとこう。
「…………聖剣……その、さっきのアイシャの話は真実か?」
『真実だね。アイシャ様は元女神様だよ』
『えぇ。兄姉様方に嫉妬されて、この世に閉じ込められてしまったのよ』
……………流石に、聖地巡礼を経て手に入れた聖具の言葉だから、これ以上疑う必要はないだろう。
つまり、魔王討伐は兄妹喧嘩の一環………。
うわぁ……いい迷惑ぅ………。
「……………というか、妾……なんで聖剣と魔剣がそんなイチャイチャしてるか疑問なんだが……」
『それは……長い年月をかけて殺し合いをしてれば愛が芽生えるモノだろう?』
『互いの命を奪い合おうとすればするほど、惚れてしまうのは必然でしょう?』
「ねぇわ」
「ないの」
俺達は全力で首を振る。
ねぇわ、殺し合いの果ての恋なんてねぇわ。
というか、物騒過ぎるだろ。
「…………やっべぇ……なんか、色々とあり過ぎて、色々と放棄してぇ」
「どんまいじゃな」
「お前の所為だわ。というか……今までの勇者はどうしてたんだよ」
「どういうことじゃ?」
「俺みたいに話そうとする奴もいただろ?」
「いや、おらんよ」
「え?」
「言ったじゃろ。勇者補正があるのだと。仲間が増えれば増えるほど勇者として強くなる。それに合わせて、魔王を倒すっていう志?みたいなもんがブレなくなるんじゃ。ある意味、洗脳?妾、今までもこんな感じじゃったんだが……容赦なく殺されそうになっては、返り討ちにして、記憶を消してどっかの国にまとめて転移させてたんじゃよ?」
そして、まさかの魔王を殺しに来た勇者を殺し返してない現実。
………………はぁ……俺の信じてたもんがことごとく壊れていく……。
『ちなみに、その時点で僕は勇者の手から離れて次の勇者の聖具になっていたよ。どうやら、勇者の記憶を失くすと死亡扱いになるみたいでね。でも、今代はアイシャ様と敵対する気がないみたいだから僕はハニーとイチャイチャライフを満喫できるって訳さ』
『嬉しいわ、ダーリン♡』
「目の毒じゃから、適当な部屋で二人っきりでイチャつけ」
アイシャが苦虫を噛み潰したような顔で、しっしっと手を払う。
聖剣は、魔剣に連れられて台所を後にした。
残されたのは俺とアイシャの二人。
アイシャは、俺を真っ直ぐに見つめて質問してきた。
「さて……テオはこれからどうする?」
「………………は?」
「妾を殺すかえ?そうなるならば、妾はお主の記憶を消さねばならん」
「………………………」
ずっと全部魔王が悪いんだと思っていた。
だけど、それは間違いで。
本当の原因は人間だった。
なら、俺が彼女を恨むのはお門違いだし……アイシャが魔王なんて言われてるのは、こいつの兄姉達が、女神に戻そうとしているからだと知った今は。
「………………殺さねぇよ。流石に、善悪が分からないほど愚かじゃない」
「………ふふっ、良かった。にい様、ねえ様への反抗とはいえ……流石に命を狙われる日々はちぃっと疲れてしもうたからな」
アイシャは疲れた笑み浮かべる。
………あぁ……そうか。
死んでも女神に戻るだけとは言っても、死ぬのに変わりがない。
そうやって命を狙われる日々は……疲れるに決まってる。
「………聖剣はテオが死ぬまでは引き継がれることはないじゃろうが、にい様達がどんな行動に出るかが分からん。この世界の運営で詳しいことをしていたのは、にい様だから妾は詳しく分からんが……勇者に相応しい適性者がおったら、新たな勇者として選ぶやもしれんし。この場が戦いの場になる前に……離れた方が得策じゃ。少し休んだら、どこにでも行くが良い」
アイシャはそう言って、止まっていた食事の手を再開させる。
……………確かに、こいつの言う通りだ。
勇者ってのは魔王を殺せる可能性が高い奴のことを示す。
なら、何人いたっておかしくない。
でも………。
「ここに置いてくんねぇかな」
「………………うむ?」
アイシャは、こてんっと首を傾げる。
俺は彼女の目を見てはっきりと告げた。
「偽勇者に勇者パーティーを追放されたからな。ムカつくから、敵になってやろうと思って」
どうせ帰る場所ねぇし。
追放そのままこの場所を目指してきたから……今、俺の扱いがどうなってるか分からないし。
勇者パーティーから追放されてるなんて、明らかにデメリットしかなさそうだし。
……………アイシャの方が理不尽くってるっぽいから一人くらい味方がいてもいいかなって思ったし?
でも、そんなこと言ったら恩着せがましいだろ。
アイシャは驚きつつも……小さな声で、質問してきた。
「……………別に構わんが……妾といたら人間の敵になるぞ?」
………………コイツが魔王とか、ねぇな。
たかが人間ぐらいの心配をするとか、魔王だったらしないだろ。
「その人間が産み出した魔物に俺の家族を、村を滅ぼされたんだ。構わねぇよ」
「…………ふむ。なら、好きにするが良い」
とか言いつつ、顔が嬉しそうにニヤけてんな……コイツ。
なんだかんだと言って、独りぼっちは寂しかった感じか。
まぁ、これからは俺とかあの無駄にイチャついてる聖剣と魔剣がいるから……これからは、寂しくはならないだろ。
「んじゃあ、よろしく。アイシャ」
「よろしくな、テオドール」
こうして、俺はーーー。
魔王城ならぬ魔王屋敷で暮らすことになったーーー。