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なーんて思ってた時期もあったよなぁ……


書きたいから始めちゃう、不定期更新作品です。


取り敢えず、3話分更新‼︎

よろしくお願いします‼︎









「テオ。お前をオレのパーティーから追放する」

「……………は?」



僕、テオドールは勇者アルドのパーティーにいる斥候だ。

勇者アルドとは同じ村の出身で。

幼い頃、村を魔物に滅ぼされてから……共に魔王を倒そうと誓い合った中だ。

一緒に冒険をしていて、彼が勇者に選ばれた時も……その前も、共に頑張ってきた。

魔王を倒すために、聖具顕現を成すための巡礼を共に乗り越え……最後の巡礼地を訪れた今日。



観衆を集める都合上、《祈祷の儀》を前日に控えた夜に言われた言葉は、まさかの〝追放〟だった。



「ま、待ってくれよ‼︎なんで急にっ……‼︎」

「はっきり言って……君の代わりの仲間が増えたんだ」

「…………………は?」


彼の後ろにいるのは、騎士ミリー、魔術師モルガ、聖女ユーティカ。

巡礼の旅をしていた時に、パーティーに参加していった仲間達だ。

だが、いつの間にか……そこに見知らぬ顔が増えていた。


「アタシは、盗賊のツィーア。もう君はいなくなるけど、よろしくぅ」


盗賊は、確かに斥候と似たような役割ポジションだ。

斥候が探知や索敵だとすれば、盗賊は罠の解除や宝箱の解錠などを得意とする。

でも、だからって斥候の僕を追放する必要は……。


「何故?という顔をしておりますが……はっきり言って、貴様の役目はツィーアで充分なんですよ。同じ役割を持つ者など、必要ありません」

「……………え?」


何を言っているのか?

盗賊と斥候では、得意とするモノが違うのに。

同じ役割だと思っているのか?

ミリーの言葉に続くように、他の三人も頷く。


「そうよ。それに、貴方、怪我しまくるじゃない?」

「…………悲しいことに……このパーティーの中で、一番怪我をするのは貴方です。わたくしは、貴方を治すためにこのパーティーに参加した訳ではありません」


当たり前だ。

斥候は速さが売りであり、防御力は高くない。

だけど、後衛に攻撃を仕掛けてきた敵と接近戦をするのは僕なんだ。

それに、敵は前からだけじゃない。

左右後ろのフォローはいつも僕がしてたんだぞ?

聖女に沢山の防御魔法をかけてもらえるアルドや、自己治癒技能がある騎士とも違う僕が、魔術師と聖女の護衛をしていれば……怪我をするのは当たり前じゃないか。


「だから、お前の代わりにツィーアを仲間にすることにしたんだ」

「…………そ、んな……」


なのに、僕の頑張りは……無駄だったなんて言うのか。

呆然とする僕は、皆の顔を見る。

しかし、その目に宿るのは疎ましさ。


「みんな、優しすぎぃ。はっきり言ってあげなよぉ」


ツィーアはケラケラと笑いながら、僕に近づく。

そして……ザクンッ‼︎と肩にナイフを突き刺した。


「あぁぁぁぁぁあっっっ⁉︎」

「勇者パーティーに弱い奴は必要ないんだよぅ。とっとと失せな、雑魚君♪」


…………みんな、その言葉を否定してくれない。

本当に……そんなことを……思っていたのか?

いつだって、僕達は互いに支え合えるいいパーティーだと思っていたのに。

みんな、本当は僕が邪魔だって思っていたのか?

アルドは、逸らしていた目を僕に向ける。


そして……告げた。




「テオ……いや、テオドール。お前は弱い。だから、お前はオレ達が魔王を倒すのに邪魔なんだ。迷惑なんだ。オレ達のために、ここで消えろ」




…………あぁ……なんなんだよ……それ……。

僕は悔しくなりつつも、アルド達の疎ましい視線に耐えきれず……ゆっくりと頷く。

そして……まともに働かない頭で……傷つけられた肩を押さえながら……緩慢な動きで、なんとかその部屋から出た。


「……………っ……‼︎」


弱い、のか。

僕は、アルド達の迷惑になってたのか。

なら、もっと早く言ってくれればよかったのに。

そうすれば……そうすれば………。

僕は扉の前でグッと拳を握り締める。

そんな時………。



『あはは〜。面白かったぁ〜‼︎悪い子だねぇ、アルド様ぁ〜?別にアイツ、弱くはなかったんでしょう?』



……………………………は?

中から聞こえたその声に、目を見開いた。


『…………邪魔なのは間違いないけど?』

『それは、アタシ達とエッチなことができないからぁ〜?』


アルドとツィーアの声。

僕は、頭を鈍器で殴られたような衝撃を受ける。


『勇者と仲間である我々の絆を強くするためには、彼は邪魔だっただけですよ』

『あらあら……わたくしの言葉は、真実でしたわよ?』

『アイツはこのパーティーに必要ないわよ』


…………ミリーとユーティカ、モルガの嘲るような笑い声。

そして……。



『…………否定はしないけどね』



アルドの嘲るような声。



…………………親友だと思っていた。

…………………戦友だと思っていたんだ。

村の仇を、一緒に取るんだって……誓ったのに。

なのに、なのに。



アルドはそんな不当な理由で、僕を追放したのか。



「っっっ‼︎」


僕は我慢できなくなり、勢いよく駆け出す。

宿屋を飛び出して、大通りを闊歩する酔っ払い達を追い越して。

裂かれた肩から、血が飛び散る。

でも、そんなの構わない。


悔しさと、憎さと、訳が分からない感情がぐちゃぐちゃと僕の中で暴れる。



「クソっ……クソぉぉおぉぉぉぉぉぉおっっっ‼︎」



向かった先はこの地にある知恵の神を祀る大神殿。

まだ、ギリギリ閉まっていなかった神殿の中に飛び入り……大聖堂に飾られた大理石で作られた智の神の像を見上げる。



悔しかった。

あんなどうでもいい理由で、共に戦ってきた時間を。

共に困難を乗り越えてきた友情を。

全て捨てた奴らが憎かった。



だから……。




「例え、一人になってもはーーーー」







*****






「なーんて思ってた時期もあったよなぁ……」




東の島国で冬の定番となっているらしい炬燵コタツに入りながら、これまた東の島国でオヤツとして食べられている煎餅をボリボリと食べながら俺は呟く。


「んー?どうしたんじゃ?」


向かい合うように炬燵に入っていた黒髪黒目の美少女……魔王アイシャがキョトンとしながら聞いてくる。

俺は苦笑しながら答えた。


「いや、例え一人になろうと魔王を殺そうとしていた俺が……魔王()茶を飲んでるって人生変わるもんだなぁと」

「そうじゃなぁ〜……。妾も勇者・・と共に茶を飲むのは初めてじゃ」

「だろーな。でも、取り敢えず……」

「そう……取り敢えず、じゃ」


俺はアイシャは右手(アイシャからは左手)側の炬燵に入りながら、チュチュしてる子供姿の俺達に叫んだ。




「聖剣が俺達の子供姿で睦み合うんじゃない‼︎」

「魔剣が妾達の子供姿で睦み合うのでない‼︎」










これは、追放された勇者と魔王のーーー。

最果ての地……魔王城ならぬ魔王屋敷でのスローライフの話ーーー。







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