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VRゲームでも身体は動かしたくない。  作者: 姫野 佑
第3章 ファイサル
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第3章2幕 隠し扉<hidden door>

 一夜明け、酒気も抜けたころ警告音がなり、私を起こします。

 寝ぼけた頭で、それを認識します。

 空腹や、脱水、尿意など様々な警告が出ていたので意識が一気に覚醒し、一度ログアウトします。


 現実世界に戻ってきた私は、頭部の専用端末を素早い動作で外し、すぐトイレに行きます。

 あっトイレットペーパー切らしてる……。

 その衝撃の事実に青ざめ、トイレを見渡します。

 幸いなことに、水に流せるティッシュが置いてあったのでそれを利用し事なきを得ます。

 これは危なかった。危うく女性をやめなければいけないところでした。

 そして買い置きしてある牛乳をコップの縁ぎりぎりまで注ぎ一息にあおります。

 やはり牛乳は良いですね。

 昔中学生だったころ牛さんってあだ名だったんですが、牛乳飲んでいるから牛っていうのはひどいと思います。

 牛は牛乳出すほうです。


 自動調理機を音声で操作し、食事が出来上がるまで暇なので、久々に携帯端末のアプリゲームを起動します。

 放置しておくだけでキャラクターのレベルが上がったり、装備品を獲得できる最近人気の種類です。

 しばらくやっていなかったのでかなりの量溜まっていて、消化するのにも一苦労ですね。

 ポチポチと携帯端末の画面を触りつつ、完成した食事を機械的に口に運んでいると面白そうな広告を見つけることができました。


 『つけているだけでダイエット!』

 『気になる脂肪も一網打尽!』


 ぬっ! と思い、食事そっちのけでその広告をタップし、ページへ飛びます。

 脂肪が気になる部分にそれを貼るだけで電流が流れ、筋肉を稼働させ脂肪を燃焼させる代物のようですね。

 これは……いいですね! 買いましょう!

 購入者の情報を漏れなく記入し、明日の到着を待ちます。

 太ももと二の腕の謎の脂肪はこれでやっつけられますね!

 そうして冷めた食事を食べ終え、部屋に戻ります。

 少し、パソコンでネットサーフィンをし、動物の動画や面白いと評判の動画投稿者の作品を一通り見ます。

 そうして久々のリアルを満喫した後、生活必需品のトイレットペーパーや牛乳等を注文し、<Imperial Of Egg>にログインします。


 ベッドに横たわっている状態でログインした私は、布団を跳ね除け、立ち上がります。

 「んー」

 そう言葉に出しながら右手を上に上げ、左手を頭の後ろから回し右の二の腕を掴み身体を伸ばします。

 やはり寝起きにはこの行動ですね。

 あくびとともにやるとベストです。

 

 部屋を出て、売り場を覗きに行きます。

 「おはようございます」 

 そう挨拶すると、フランとラビが売り場にいるようで返事をくれます。

 「チェリー! おはようございます」

 「おはようございます!」

 いい挨拶ですね。ラビのにこやかな表情のおかげで疲れも飛んで行ってしまいました。

 ラビの護衛も頼まれてはいるのですがあ、ラビはレベル100に迫ろうかというほどなのであまりその心配もないような気がします。

 国で雇われた護衛の人も物陰からチラチラ存在を主張していますし。

 あれじゃこっそり護衛している意味がないと思います。

 

 「売上とかどうかな?」

 そう呟き、カウンター横に置いてあるファイルを取り出し、確認してみます。

 「読めばわかると思うけど最近少し売上が上がってるよ!」

 そうみたいですね。ポーション類がやけに売れていますね。あとは品質のいい武具もなかなか売れています。

 「悪くないね。市場であまり武具が売れてないみたいだったから心配だったんだけど、杞憂だったかな」

 「お店に直接来て購入する人がふえたよ」

 そうフランが教えてくれます。

 「接客とか大丈夫そう?」

 「大丈夫」

 「大丈夫だよー!」

 「よかった。そうだ、素材の買取とかやる余裕あるかな?」

 「うーん。本店だとちょっと余裕ないかも」

 「覚えることが多くてちょっと厳しいかな?」

 フランとラビがそういうのであれば素材の買取は『セーラムツー』のブルドーさんに一任させた方がいいかもしれませんね。

 「ならもし素材持ち込みの人が来たらブルドーさんのほうに案内してもらってもいかな?」

 「もうやってる!」

 えっ……。この娘たち仕事ができすぎて怖い……。

 現実だったらこんなに仕事できる人は使い倒されて即病院送りですよ?


 最近の傾向などが概ねわかってきたので、手持ちの物の中から売り物になりそうなものを見繕います。

 〔魔眼 レイズ・アイ〕……?

 こんなのどこで拾ったんだろう。

 とりあえずそれっぽい値段で売ってしまいましょう。


 少しこの国のお姫様の様子も気になったので、≪感覚同調≫を発動させ、視界を共有します。


 『いやだー。そんなのいやだー』

 『姫様……後生ですから……』

 『童は遊びにいきたいのだー』

 『姫様……後生ですから……』

 『勉強あきたのだー。おっ! そうだ『ファイサル』に行ったとき童を護衛した3人組を呼ぶのである!』

 『あちら様にもご都合がございますので……それと、さすがに毎日、あの方々の話を出されると胃痛が……』


 「…………」

 わがまま姫様のトップをひた走りしていますね。

 そうして≪感覚同調≫を解きます。

 向こうは大丈夫そうですね。

 にしてもこの魔法は便利ですね。視覚だけ共有しているつもりだったんですが、少し意識を集中しただけで音声まで聞き取れてしまいました。

 

 「チェリー? どうしたの?」

 そうラビに話しかけられ、我に返ります。

 「あっごめん。ちょっと考え事してた」

 「もー。久々にお店に来たらこれなんだもん!」

 「ごめんねー」

 「そういえばチェリーに相談があるんだけどいい?」

 そうフランが話しかけてきます。

 「んー? どうしたの?」

 「えっとね、これを見てほしいんだけど」

 そう言って革のベルトを取り出します。

 「これはベルト……だね。ここに簡易倉庫を装着できるのかな?」

 ベルトの横に着いた、四角いスペースを指さしながら言います。

 「そうなんだけど、このサイズのストレージが売りに出ていなくて……」

 「なるほど。それなら私がちょっと他の都市まで行ってみてこようか?」

 「「えっ?」」

 なんですか? その反応は。

 「なにかな?」

 「いや、ちょっとびっくりしてただけ」

 「ならいい。『ディレミアン』とかならあるかな?」

 「たぶん」

 「わかった少し行ってくるね。≪テレポート≫」

 そう言いすぐさま転移します。


 『商都 ディレミアン』にはたびたび来ているのでフレンドの店や、たまり場、穴場のご飯屋さん等も知っています。

 私も情報通の仲間入りですかね。

 そうして目的のお店にスライド移動しつつ、通り過ぎていく人を眺めます。

 みな少し顔が怖いですね。

 前来たときはそんなことなかったんですが。

 速度をあまりあげすぎないようにスライド移動していたので一度TPが尽きてしまい、ポーションを飲む羽目になりましたが、無事目的の店に到着しました。


 本通りから路地に入り、アウトローな雰囲気が漂う裏商店街のようなところにポツンとあるそのお店はプレイヤーが経営するお店です。

 結構物好きなプレイヤーもいるんですよ。ここは特別で品揃えが素晴らしく、基本的になんでも手に入れることができるんですよね。立地が最悪なのでほとんど人来ないそうですが。

 ギシィとなる扉を開け、店に入ります。

 「こんにちはー」

 「いらっしゃーい。おやー。昨日ぶりだね」

 そう声の主であるステイシーが言います。


 昔、ステイシーにここで店を開いている理由を聞いたことがあったのですが、答えてもらえなかったので、そのうちまた聞きたいと思います。店は『ディレミアン』なのにギルドは『ヴァンヘイデン』ですからちょっと腑に落ちませんが。

 

 「簡易倉庫でこのくらいの大きさのものある?」

 「うん。あるよー。でも今日来たのは正解だったねー」

 普段、ステイシーは全国各地を放浪しているのでめったに店にいないんですよね。

 実際、お店にいなかったら、市場を見てそこで購入して帰るつもりだったのでラッキーです。

 「今日はなんで開いてるの?」

 「うーん。今日は少し用事があってねー」

 店に用事……?

 「まーまー、それは置いておいて、これでどうかなー?」

 求めていた大きさの簡易倉庫を見せてくれます。

 「うん。大丈夫。これ在庫は何個ある?」

 「全部で30個かなー」

 「わかった。25個もらってもいい?」

 「結構大量買いだねー。従業員さんに渡すのかなー?」

 「たぶん従業員の子がホルダーを作ったからそうなんだと思う」

 「そっかー。お代は合わせて5万金だねー」

 「うん」

 そう言ってお代を支払います。

 「さて取引は終了したところで、チェリーこの後暇かなー?」

 「これを置きに行ったら特に用事はないかな」

 ハリリン達の諜報が終わるまで何もできませんしね。

 「わかったー。じゃぁちょっとお店閉めるからここで待っててー」

 「ん? わかった」

 お店を閉めるのに、ここで待っててってどういうことなんだろうと思いながら、待ちます。

 数分で看板を片付け、店終いをしたステイシーが戻ってきます。

 「おまたせー。パーティーにはいってもらっていいかなー?」

 「あっうん、わかった」

 そうしてステイシーのパーティーに加入し、どこに行くのかと待っていると、ステイシーが本棚を「よいしょー」って言いながら押しています。

 えっ?

 私が疑問の声をあげるまでの間に本棚は横へずれ、地下へ向かう階段が現れました。

 「このダンジョンの先に用があるんだー。かなりモンスターも強いし気を付けてねー」

 店の地下に……ダンジョン……。

                                      to be continued...

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