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<従業員の一日 ハンナ編>

番外編第2部最終話です。

NPC視点のものになります。


短いですし、内容もそれほどないので読み飛ばしていただいても結構です。

 おはようございます。ハンナです。

 シドニーちゃんから言われていたので今日のことを書こうと思います。

 私の起床時間は19時です。

 なので本当はおはようございますっていう挨拶は間違いなんですよね。

 でも私はこの挨拶が好きなので気にしません。

 カンナは20時に起こします。

 その前に軽く買い物に行き、朝食を作ります。

 焼いたパンと焼いた卵とお肉をお皿に盛りつけます。

 そして寝起きの悪いカンナを起こします。

 「カンナ! 20時になるよ! 起きて!」

 そう肩を揺さぶると決まってカンナはこういいます。

 「あと28時間は寝てたい」

 それは明日になってしまいますね。

 いえ、明後日になってしまいますね。日付変わるので。

 「起きないと朝ごはん全部私が食べちゃうよ?」

 「デブ活おつ」

 「カンナ! いつもいってるでしょ! 汚い言葉使わない!」

 「別にデブ活は汚い言葉じゃない」

 この子、ほんとに口が悪くて困っちゃう。

 チェリーが「毒舌……すぅ……イケるな」ってよく言ってますけど、良くないと思います。

 「ほーら! ご飯食べないと身体もたないよ!」

 「超らっきー。休めるじゃん。後は任せたー」

 こうなったらこっちも自棄ですね。最強のワードを出しましょう。

 「そんなことばっかり言ってるとチェリーみたいな人になるよ」

 そう言うと、ハッとした顔をしてベッドから這い出てきます。

 「さすがにアレは無理」

 チェリーには悪いけど、この言葉が一番効くんですよ。一日何度も言ってますけど。

 もちろん私はチェリーがそこまでアレな人だとは思っていませんよ?

 みんなが見てないところでお仕事してる……はずですから。

 見たことないので保証はしかねます。


 寝ぐせで髪の毛を高レベルモンスターの〔メデューサ〕のようにしたカンナと一緒に朝ごはんを食べ、お風呂に入ります。

 私達がお風呂に入る時間は、20時30分ほどなので、ラビちゃんとかぶることも多いです。今日はどうでしょうかね。

 

 脱衣所で服を脱ぎ、浴室に入ります。

 あっ今日はラビちゃんいないみたいですね。

 いるときはいろいろとお話するんですけどね。

 ラビちゃんの話は面白いですよ。

 

 まずカンナの髪をビショビショに濡らし、ワシャワシャと洗っていきます。

 「やるじゃん」

 そう言って貰えておねぇちゃんうれしいよ。

 髪の毛が洗い終わったカンナを湯船に放り込み、自分の髪をガシガシ洗います。

 

 私がお風呂に入るころにはカンナがゆでだこになっているので、湯船から釣り上げます。

 そうして縁に座らせ、足湯をさせつつ、お説教をします。

 「これくらい自分でやらないと」

 「めんでぃー」

 「カンナ!」

 「きこえまーせん」

 「…………」

 「怒った? ねぇねぇ? 怒った?」

 無視して天井を見上げます。

 いつみても綺麗なお風呂ですよね。

 何時間でも見ていられそうです。

 まぁ私がゆであがったら誰も助けてくれないのでそんなに長くは入りませんが。


 身体の芯まで温まったら、カンナを連れて浴室から出ます。

 本当なら二人分タオルを出して、身体を拭かないといけないんですが、私達には裏技があります。

 「≪召喚〔ファイヤー・エレメント〕≫」

 「≪召喚〔ウィンド・エレメント〕≫」

 私は〔火の精霊〕と、カンナは〔風の精霊〕と契約している【精霊使い】の一員です。

 本当はこういう使い方をしてはいけないっておばあちゃんが言っていたんですけど、おばあちゃん畑の水やりに〔水の精霊〕を使役していたのでノーカウントだと思います。

 

 まずカンナの呼び出した、〔風の精霊〕に私達を覆う風船のようなものを出してもらいます。

 そしてその風船内部の空気を私の〔火の精霊〕に温めてもらいます。

 こうすることで全身をよく乾燥させることができます。

 維持にENを持っていかれてしまうので一日1時間も召喚してられないんですけどね。


 私達一家は精霊使役の名門で『精霊の森 エレメンティアーナ』に本家を置きます。

 私とカンナは分家筋ですので、本家に行くのは年に数度でしたが。 

 

 全身が乾ききったら、制服を着て、仕事の準備をします。

 この時点でいつも21時30分くらいになってしまいます。精霊を使った高速乾燥ができなかったら遅刻確定ですね。

 前の職場では、通勤に30分ほどかかったのですが、ここは階段を降りるだけなので1分あれば大丈夫なのがいいですね。


 21時45分まで身だしなみの確認をし、時間になったので階段を降り、売り場に顔を出します。

 「「おはようございます」」

 こういうときしっかり重なるのは、さすが双子って感じがしますよね。

 性格はまるで違いますけど。

 「おはようございます」

 そうシドニーちゃんが返事をくれます。

 「引継ぎの書類やで。確認しといてやー」 

 「はーい」

 このようにまず引継ぎ書類を受け取り確認します。

 そこそこ売り上げがありますね。

 曜日の問題でしょうかね?

 「書いてないことで何かありますー?」

 「特にないでー? しいて言えば像舐めさん来たくらいかなー?」

 「また来たんですね。いつもチェリーがいないときにくるよねー」

 「あいつきっと見計らってきてるで。こないだこそこそしとったんみたわ」

 「ひゃー」

 「キモクソナメクジ」

 「カンナたまにはええこと言うやん」

 「シドニーちゃん褒めないで。つけあがるから」

 「もっと崇めよ」

 「いい過ぎたわ。ごめん」

 こういう掛け合いも楽しいですよ。

 ボケ二人相手にする私は疲労困憊ですが。


 一時的に3人になるのでその間の仕事は上手く割り振ってあります。

 一番力のあるシドニーちゃんが像の引き込み、カンナは陳列棚の掃除、私は消耗品の補充です。

 あっ。消耗品と言っても売り物の方ではないんです。

 お風呂のシャンプー等の備品や、売り場の掃除道具の数を確認したりするんです。

 いざ使おうと思った時にないと困りますからね。

 「じゃぁ私消耗品のチェックに行ってくるね」

 「てらー」

 「おう、いってらー。風呂場濡れてるやろ? 滑らんように気をつけてなー」

 「はーい」

 

 シドニーちゃんとカンナは実はすごく仲が良くて、私が居るとできない話とかもあると思うので売り場回りの確認は後回しにしています。

 まず上階にエレベータで登ります。

 そしてエレベータを一番下の階まで一息に降ろします。

 

 衝撃なし、スイッチ作動大丈夫。

 そう内心で呟きながら手元の紙に記載していきます。

 チェリーの制作した備品チェック項目というやつですね。

 そして階段を使い、再び4階にいきます。

 

 各々の部屋にノックして入ります。

 「フランちゃんいますかー?」

 「…………」

 返事がないですね。お出かけ中のようです。


 「ラビちゃんいますかー?」

 「…………」

 ラビちゃんも留守のようですね。


 チェリーの部屋にはノックせず入ります。

 扉を開けると、意外と可愛いお部屋が見えてきて、最初のころはびっくりしました。

 まずお手洗いを確認します。

 異常なし。

 チェックシートに記載します。

 同様に、ベッド、窓、カーテン、ランプ、扉を確認し、記載します。

 これを人が住んでいる部屋で繰り返します。

 留守ところはまた明日確認ですね。

 実際、これで確認しているのはチェリーの部屋だけなんですよね。

 みんな何かあったら降りてきて、こちらに書き込んでますから。

 

 4階、3階を確認し終え、次はお風呂場と洗濯場を確認します。

 お風呂場は先ほど確認したので簡易的に、洗濯場はみんな結構使うので念入りに調べます。

 洗剤の残量、道具の故障、その他諸々ですね。

 そして地下に下り、結界設備の起動や、最近置かれた雀卓という遊戯盤を確認します。

 結界……異常なし。

 雀卓……小さい文字の書かれたお豆腐がでてきたら問題なし。

 そして最後は1階の裏のスペースを確認します。

 ここもチェック項目が多いのですが、みんな異常に気付いたらすぐ書き込んでくれるので問題ないですね。

 売り場や街灯、看板等は逐一確認しているのでやらなくていいそうです。


 これが終わるころには人形の引き込みと陳列棚の掃除が終わっている感じですね。

 いつもシドニーちゃんとカンナが話しています。

 「そんでなー。バーンってなー」

 「こっわ。それこっわ」

 「なんの話してるのー?」

 会話に加わります。

 「シドニーがお化け見たんだって」

 「えっ?」

 「驚くやろー? でもほんまやねん。めちゃめちゃ怖かったで。おしっこ漏れたわ。この歳で尿漏れはキツイわー」

 「ビビりすぎ」

 「カンナもあったらええねん。絶対泣くでー」

 シドニーちゃんは楽しそうに笑いながら帳簿を付けています。器用なんですよね。昔から。


 そうして帳簿が書きあがるとシドニーちゃんは上がる時間になるので見送ります。

 「時間やなー。今日はあがるでー」

 「おつかれさまですー」

 「おつかれー」

 「おう、おつかれー。なんかあったら呼んでやー」

 「はーい」

 そう言って帰っていきます。

 シドニーちゃんまだ日記付けてるのかな? 今度聞いてみよう。

 

 そうして二人っきりになった22時30分過ぎごろから怒涛のお客さんラッシュがやってきます。

 カンナと二人で頑張って接客するのですが、それでも追いつかないときは上で休んでるラビちゃん以外の娘を呼ぶこともあります。

 ラビちゃんは朝早いので寝かせてあげたいんです。

 でもいつも呼ぶ前にポテトちゃんがなぜか降りてくるんですよね。制服を着て。

 何かのスキルを持ってるのかもしれませんね。

 分店の方の職人さんなのにちょっと申し訳ない気もします。


 そうして日付が変わって2時を過ぎると徐々にお客さんも減ってくるのでカンナと交代で休憩に行きます。

 まずは私が2時に、そしてカンナが3時から休憩に行きます。

 私が休憩中にご飯を作っておくのでカンナがもどって来るのは少し早いですね。

 休憩が終わったら前日の帳簿と比較して、追記をしたり、訂正をしたりします。

 その後売上表をまとめ、市場の売却履歴、店頭在庫管理表を確認して記入しておきます。

 4時の時点まででまとめるそうなのでそれに従っています。


 カンナが接客と補充をしている間に書類を仕上げ、ラビの出勤時間までは自由にやっています。

 私は【称号】の勉強、カンナはお菓子の研究と称してつまみ食いをしていますね。


 そうして5時45分くらいになるとラビちゃんが出勤してきます。

 「おはようございます」

 「「おはようございます」」

 「引継ぎをお願いー」

 そう言って制作しておいた書類をラビちゃんに渡します。

 「わかったー!」


 ここから先はラビちゃんが書いたそうなので割愛しますね。

 

 仕事が終わってご飯を食べたあとは、少し買い物に行くときもありますが、基本的には一緒にしゃべっている事が多いですね。

 

 そういえばカンナにも筆を渡してあげないといけませんね。


 「ちょっと書きなよ」

 そう言ってペンを渡しました。


 


 ちょっとよくわからない。

 いきなりなんかかけっていわれてもねー。

 全部ハンナが書いた。それだけ。

 なんて書くんだっけ?

 どうじょー。

 



 カンナにペンを持たせた私が悪かったです。

 私達従業員の一日どうでしたでしょうか?

 あまり見ることがないチェリーには絶対読んでもらいたいですね。

                                      <従業員の一日 完>

番外編第2部終了です。

お疲れさまでした。

次の番外編は第三章完結後の投稿を予定しております。

いよいよ第三章ですね。チェリーさんには頑張っていただきましょう。

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