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第6章53幕 開戦<opening of hostilities>

 『ステイシー』

 『招集がかかったねー』

 私に届いたメッセージと同様のメッセージがステイシーにも届いていたようで、すぐに返事が来ました。

 『行こう』

 『うんー』

 そう短い会話をし、私は『ダルドナ平地』に向けて移動をはじめました。


 「よう」

 奏寅がすでに到着しており、闘技場の決闘大会で見たメンバーや顔見知りもちらほらと見えます。

 「無事みたいですね」

 「まぁな。それより招集がかかったメンバーはこれだけなのか?」

 辺りを見回しながら奏寅がそう呟きます。

 「一応はそうや。都市の警戒の為に単独で戦力になるプレイヤーは向こうにのこってるっちゅー感じやな」

 もこちねるも到着したようで、私の後ろから声を掛けてきます。

 「今はそれより準備や。向こうさんも奇襲戦法を止めて本戦力での正面突破に切り替えてくるみたいやな」

 そう言ってもこちねるが視線を向けた先、『ダルドナ平地』の奥を私も眺めます。

 そこにはすでにかなりのプレイヤーが集まっており、大規模戦闘が起こることを予感させます。

 「戦争ルールが設けられていない以上、泥臭い戦闘になるかもしれんな」

 そうぽつりと呟くもこちねるの声からは不安が感じ取れます。

 「まーでも『仁義』は戦力を嫌でも分散しないといけないから今回の戦争に勝ち目はないと思うんだけどー」

 ステイシーが言った通り、ここで起きる戦闘に全戦力をつぎ込むか、と言われると否という答えが指揮を取るリーダー格プレイヤーからはでると思います。

 「まぁ気を抜かなければ負けはないだろうな。ただ……」

 「ただ……?」

 奏寅が省略した言葉の先が読めなかった私は素直に聞き返します。

 「『仁義』の個人的な強さは脅威足り得るってことだ」

 その言葉の後には無音が訪れ、皆一様に『ダルドナ平地』の奥を眺めます。


 「くるな」

 もこちねるがそう呟いた直後、こちらに火の雨が降り注ぎます。

 「≪アクア・シールド≫」

 幾人かの水属性魔法使いが上空に障壁を展開し、これを開戦の狼煙としたのか、『仁義』のメンバーがこちらに走り出してきます。

 「うちから言うことは何もあらへん。副長からも『全力で撃退なさい。今後に関わるからね』っちゅーありがたい言葉を貰って来とる。チェリーいくで」

 「わかった」

 ステイシーを除いた私ともこちねる、奏寅は各々獲物を手に『ダルドナ平地』へと入っていきます。

 

 「うらぁああ!」

 ハイレベルな大剣使いが前線でこちらの戦力を目減りさせているのを確認した私は目線でもこちねるに告げ、走り出そうとします。

 「待ち。あれはうちが止める」

 私が向かうよりも自分が向かった方が良いと判断をしたのかもこちねるがそう言って走る方向を変えました。

 「俺は向こうだ」

 奏寅は魔法集団とそれを護衛する戦士集団へ向けて走り出しました。

 私はどこへ向かおうか、と頭の中で考えながら走っているとステイシーからメッセージが届きます。

 『そのまま前方にハイレベルな魔法剣士ー。排除お願いー』

 こちらの様子をしっかり確認しているであろうステイシーにわかるように親指を立て、私は速度を上げさらに走ります。


 殲滅戦はステイシーに任せ方が効率が良いと事前に判断していた私は【暗殺者】を装備し、短剣、短刀を抜刀した状態で走りながら、練度の低いプレイヤーを次々にデスペナルティーにしていきます。

 マーリンの一件で『仁義』の構成員に対し罪人判定を出した『鋼殻都市 マスティア』のおかげでゾンビ戦術が使えない以上、ハイレベルプレイヤーを早々にデスペナルティーにしておくことで、戦闘が早く終結します。

 そう考え、≪スライド移動≫まで利用し、高速で移動する私の短剣による一閃を受け止めた者がいました。

 「早いな。【暗殺者】か」

 「ええ。では失礼します」

 私は一言そう返し、腿の付け根を斬り付けその場を去ろうとしますが、高速移動する私に並走してきます。

 「!?」

 「AGI特化しててな。お仲間さんだよ。ま、俺は【走り屋】だけどな」

 並走され、二対一……多対一の状態になると分が悪いと考えたので私は一度≪スライド移動≫を解除し、TPポーションを口に咥えます。

 「全力でやるか」

 私はそう言ったプレイヤーを見ると、イケオジという言葉が似合いそうな男性プレイヤーで、彼もTPポーションを咥えました。

 「俺はディーパル。訳あって今は『仁義』に身を置いている」

 「……私はチェリーです。今は『ヨルデン』所属です」

 「知っている名だ。ま、いい。かかってこい」

 そう言ってメリケンサックを嵌めなおしたディーパルはボクサーのようにぴょんぴょん軽く跳ね始めました。

 「では。≪影渡り≫」

 私はそう一言だけ言い、≪影渡り≫を発動させ、一瞬で距離を詰めます。

 「ん?」

 疑問の声を上げたディーパルはすぐに横に飛び、突然背後に現れた私の奇襲攻撃は失敗に終わりますが、次の手がすぐに打てます。

 私は背後そして足元からの奇襲に失敗しましたが、位置取りとしては悪くありませんでしたので、その場で右手の【ナイトファング】を上空に放り、再び≪影渡り≫を発動させます。

 「よく消えるな」

 再び向きを変え、背後を警戒し始めたディーパルの足元にある【ナイトファング】の影へと≪影渡り≫を発動させ、二度目の奇襲攻撃は成功しました。

 「やるな」

 違和感に気付いたディーパルはすぐに身を捩り、致命傷だけは回避していました。

 「ディーパルさんもかなりやりますね」

 私はそう言いながら落ちてくる【ナイトファング】を受け止め、再び装備状態にします。

 「仕切り直しだな」

 そう口は言いながらディーパルは私に殴りかかってきます。

 私はそれを両手の【ナイトファング】と【短雷刀 ペインボルト】で防ぎます。

 金属と金属がぶつかり合う音が聞こえ、直後ディーパルの左手が私の視界に入ったので私はのけぞりそれを躱します。

 「いい……動きだ」

 まずいですね。これは少し相性が良くないかもしれません。

 「≪喚起〔ペインボルト〕≫」

 左手に握った【短雷刀 ペインボルト】から精霊〔ペインボルト〕を喚起し、精霊魔法を発動できる状態にします。

 「これは……勝ち目がないな。少しだけ削らせてもらおう」

 両の手の拳を交互に私に繰り出し、時間を稼ぎ始めたディーパルに私は精霊魔法を叩きこみます。

 「≪ライトニング・ピアス≫」

 「ぐっ……! ふっ!」

 足首を貫いた私の≪ライトニング・ピアス≫に少しバランスを崩しながらも拳を繰り出してきます。

 鈍った拳の軌道をしっかりと見定めた私は右に躱し、ディーパルの右腕を切り落としました。

 「ふっ……完敗だ」

 「結構苦戦しました。MPとEPをごっそり持っていかれましたよ」

 私はそう言いながらディーパルの首を斬り付け、デスペナルティーにします。


 回復している時間が惜しいので、ポーション類をまとめて口に咥え私は当初のターゲットに向かって走り出します。

                                      to be continued...

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