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第6章50幕 波<wave>

 「そんな気はしてたよー。≪アース・シールド≫」

 ステイシーは驚く様子もなく、土属性魔法で障壁を生成し防ぎます。

 「わーお。土属性も扱えるんだね」

 「これでも【魔王】持ちだからねー」

 「ふーん。じゃぁこれはどうかな?」

 そう言ったプレッツェルから先ほどよりも多くのMPが消費される気配を私は腕を治しながら感じ取ります。

 それほど大きなダメージになるものではありませんでしたが、ステイシーは救助が遅れたことを気にしたのか、治す様に言ってくれていたのでそこに甘えた感じですね。

 「≪バーニング・ボルト≫」

 火属性と雷属性の複合魔法を発動したプレッツェルはニヤリと笑います。

 その表情を見ていると、突如方向を変えた≪バーニング・ボルト≫が私の方へと向かってきます。

 私は腕の治療のため、聖属性魔法を発動中でしたので、避けるすべを発動する間もなく、顔を背け目を閉じます。

 「安心するがいい」

 聞き覚えのある声が聞こえ、正面に誰かが立つ気配を感じます。

 直後放電と爆発が同時に起き、私は後方に少し転がり、私の前に立った人物も一緒に転がります。

 「間に合ったかな?」

 両手に握った魔銃から煙を上げながらサツキが地面から立ち上がり、私に手を差し伸べます。

 「ありがとう」

 「なに。気にすることはない。ただ……」

 継続ダメージが入るであろう火傷を負ったサツキの腕を見た私は、自分の治療の続行よりも、サツキの治療を優先します。

 「すまないね。エルマももうすぐ来るそうだ。もこちねるとマオは正門に向かっている」

 正門と呼ばれる東門では先ほど奏寅が到着し、敵を食い止めているので大丈夫だとは思いますが、援軍がいるに越したことはありません。

 「ん? 伏せろ!」

 サツキが何かを感じ取ったのか、大声を出しながら私に飛びつき、地面へと押し付けます。

 頭上を光属性魔法が通り抜け、辺りを一瞬照らします。

 「もーう。おそいよ!」

 「悪い。俺はこっちの二人をやる」

 「了解!」

 プレッツェルと誰かの会話が聞こえ、この光属性魔法が、その誰かの仕業であることが分かります。

 「よぉ。お二人さん。よくも仲間を殺ってくれたな。お礼参りってとこだ。受け取りな。≪アライメント・フラッシュ≫」

 こちらに敵意を向けてくる大柄の男性の前に複数の光の珠が浮き、漂います。

 「結構俺強いんだぜ。≪スプレッド≫」

 そう宣言すると光の珠が炸裂し、細い光線となり、私とサツキに降り注ぎます。

 「≪シャドウ・シールド≫」

 「だよな? ≪ホーリー・スピア≫」

 私が≪シャドウ・シールド≫を生成し、光線を防ごうとすると、光線が到達するよりも先に、≪シャドウ・シールド≫を≪ホーリー・スピア≫が貫きます。

 そして無防備になった私の身体を≪ホーリー・スピア≫が()()()()ました。

 「なに!?」

 「チェックだな」

 背後に回っていたサツキがまだ治療の終わっていない手で、魔銃を頭部に突きつけます。

 「種明かしは?」

 「知りたければそちらも何か言うのが先ではないか?」

 「いいだろう。一つ教てやろう」

 「目的は?」

 「ボスの命令だ。ボスの目的は戦力調査。可能なら高レベルプレイヤーの殲滅、排除。一人につき1000万金だ」

 「そうか。今のは≪【踊る幻影(ミラージュ・ダンス)】≫。ワタシの装備品の効果でね」

 ≪【踊る幻影】≫はサツキの持っている【惑靴 ミラ・ララメル】という装備品の効果で、効果は一定時間自分の幻影と指定した人物の幻影を範囲内の任意の場所に生成すること。

 座標までも誤認させることができますが、範囲攻撃に弱いというデメリットがあります。

 「そう言うことか。感知系取っておくべきだったな」

 「あぁ。もう会うことはないと思うが、次は感知系を持ってくるんだな」

 そう言ったサツキが引き金を引き、デスペナルティーにします。

 「ふぅ。本戦争にまで発展はしていないみたいだが、これでは時間の問題だな。いま対峙している連中はワタシたちならばそこまで苦戦はしないだろう。だが知恵は使ってくる分厄介ではある」

 連携も取れているしな、と加えサツキはステイシーの方を見ます。

 その様子を見て私もステイシーの方を眺めると、苦も無くといった様子でプレッツェルをあしらっていました。

 「えーん。なんで?」

 「簡単だよー。君がまだ弱いだけー」

 的確に逆属性の魔法で防がれているプレッツェルからは余裕が消え、疲労が蓄積している様に見えます。

 「そろそろ反撃に行くよー≪ライトニング・ドラグーン≫」

 龍の形を模した雷がプレッツェルに向かい、プレッツェルは防ぐために土属性魔法で障壁を生成しますが、なぜか発動しません。

 「あっ!」

 何かに気付いたようなプレッツェルと笑ったであろうステイシーの横顔を見た直後、プレッツェルがいた場所には誰もいなくなっていました。


 「ステイシー最後のって……」

 「MP切れだよー。たくさんの属性で強力な魔法を使うからそろそろMP切れかなって。土属性は結構発動にMP持っていかれるしねー」

 「おしゃべりはいいが、この後はどうするんだ? 見たところまだ都市内部には侵入されてはいなそうだが」

 サツキがそう言い辺りを見回すと、こちらに歩いてくる三人が見つかりました。

 「おまたせ!」

 エルマとマオ、そしてもこちねるがこちらに歩いてきます。

 「もう断続的な戦闘が始まっとる。都市の内部でもや」

 もこちねるがそう言い、私達は少し驚きます。

 「正門では奏寅さんが、裏門は私とステイシーがいたんだよ?」

 私がそう言ってもこちねるを見ると、ふるふると首を横に振りながら答えます。

 「事前に侵入していたんや。それもかなり前から」

 「それって……」

 「前から計画されていたことっちゅーわけや」

 「正直前から計画されていただろうとは思っていたよ。だが今はそれどころではないだろう?」

 サツキがそう言って、都市の方を見ます。

 「せや。ここからはバラバラに行動してもらうで。ステイシーとチェリーは都市外部。残りは内部や」

 「わかった」

 「りょー」

 私とステイシーがそう言うと、サツキやマオ、エルマも頷きます。

 「気張ってや。あとなるべく手の内は見せんようにな」

 そう言ったもこちねるの言葉の真意をくみ取った私達はバラバラに別れ、第二陣の警戒に当たります。

                                      to be continued...

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