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第6章46幕 無駄骨<make vain efforts>

 私はマーリンの周囲をぐるぐると旋回しながら装備を変更します。

 右手の【ナイトファング】、左手の【春野】を【神器 プルトーン】と【神器 エレシュキガル】へと変更し、いつも通りの魔法戦闘スタイルに戻します。

 続いて、自身の身体に設置するタイプの魔法を一つ、いつでも発動できるようにしておきます。

 「今更何をしたって無駄だ!」

 そう言ったマーリンが火力高めの闇属性魔法、≪ダークネス・アルレイズ≫を発動したように感じた私は、対抗できる魔法を【称号】から発動します。

 「≪シャイン・ハイネス・リアバリア≫」

 純粋に威力、速度、大きさが強化された≪ダーク・ボール≫と、純粋に範囲、強度、持続性が強化された≪ホーリー・シールド≫がぶつかり、辺りを揺らします。

 「甘めぇ!」

 そう言って私の背後から≪シャドウ・ボルテックス≫を発動しようとしますが、こちらは≪スライド移動≫による高速移動で躱します。

 しかし、相対座標として私の装備品の何某かを設定していたようで、恐るべき速度で追尾してきます。

 「チッ」

 予想外の展開に私は舌打ちを無意識に打ちながら、後方に≪アース・シールド≫と≪ホーリー・シールド≫を展開します。

 「隙だらけだなぁ! おい!」

 私が後方へと向き直った瞬間耳元にマーリンの声が届きます。

 「乗ると、思ってました。≪開放(リリース)≫」

 「ぐぁ!?」

 私は自身の身体に設置する≪インレイス≫という闇属性魔法を事前に発動していました。

 効果は、物理攻撃の倍返しカウンター。

 つまり距離を詰めて殴って来た今のマーリンには効果てきめん、というわけです。

 「くっそ……がぁ!」

 「≪アクア・キューブ≫」

 そして何か魔法を発動しようとしたマーリンに先手を打ち、≪アクア・キューブ≫で閉じ込めます。

 「≪フィル・ウォーター≫」

 マーリンを閉じ込めた水の牢屋を水で満たし、≪窒息≫させます。


 数分が立ち、ぼごご、という空気が漏れる音が最後に聞こえ、マーリンは絶命し、デスペナルティーのエフェクトに包まれました。


 「あいてっ!」

 謎の空間にいたはずの私は、もはや廃都市と言っても過言ではないほどボロボロになった『攻殻都市 マスティア』の地面に尻もちをつきます。

 「チェリー!」

 「チェリー」

 私を呼ぶ二人の声はステイシーとムンバのものでした。

 「何があったんだ? 言え」

 「分からない。マーリンさんのスキルが発動したら異空間?みたいなところに飛ばされて、そこでタイマンしてきた」

 「勝ったのか?」

 「一応」

 私がそう言うと、ムンバが少しほっとしたような表情をします。

 「僕は殺されて最後まで見ていなかったからわからないけどー、マーリンは指名手配がギリギリ間に合ったみたいで当分戻ってこれないと思うよー」

 「それって……」

 「情報はあとまわしちゅーことや」

 そしてステイシーのさらに背後からもこちねるの声が聞こえ、私はギョっとします。

 「もこちんさん、どうしてここに?」

 「あほかいな! こんな大騒ぎ、ブラジルにいても気付くで!」

 「ブラジルはこのゲームにないけどな!」と自分でツッコミながら笑うもこちねるのおかげで少しだけ心が落ち着きます。

 「指名手配が間に合うたのはうちのおかげやで」

 「そうなの?」

 「副長に即時連絡をして、取ってもらったんや。罪人判定を取るのが精いっぱいだったみたいやけどな。でも困ったんはここからや。アリスもホームにとりあえずいくで」

 そう言って歩き出すもこちねるに続くべく、立ち上がろうとすると、エルマとマオが私のことを起こしてくれました。

 「ありがと」

 「ううん。お疲れ様」

 「おつかれ、さま」

 ちょっと頑張って良かったかもしれませんね。


 「アリスさん。ありがとうございました。私が気絶している間の時間稼ぎを……」

 「ううん。私はそんなに長い時間稼いでないよ。頑張ったのはステイシー君」

 「そうだな。攻撃魔法を一度も使わず、完全に相手の攻撃を打ち消し

時間を稼いでいた。だが」

 「でかい攻撃を止めるために封印魔法を使ってデスペナだよー」

 アリス、ムンバ、ステイシーの順でセリフリレーを行い教えてくれます。

 「私が気絶している間にそんなことが……」

 「ところで、最後に使った魔法はなんだったんや?」

 「俺にもわからねぇ」

 ムンバが首を横に振りながら答えます。

 「チェリーは?」

 「私もよくわからないけど、≪サンライズ・セパレート・チャプター≫って言ってた気がする」

 「聞いたことあらへんな。あとで副長にも伝えておくわ」

 その後、内部での出来事を詳細に説明し、顛末を語ります。

 「なるほどなー。とりあえずチェリーはお手柄やな。言うてもこの惨状がどうにかなるわけやない」

 もこちねるが壊れた街並みを見ながらそう言います。

 するとマオが何かを言いたそうにもこちねるを見つめ始めました。

 「マオ? どうしたの?」

 私がもこちねるの代わりにマオに問うと、少し悩んだ末に言葉を述べました。

 「昔の、『猫姫王国』の、建物を作った、【最上級建築家】にあてが、あるわ」

 そう言うとすぐにもこちねるが食いつきます。

 「ほんまか? そいつよんでくれへんか? 副長に国王と交渉してもらって金はたんまり出させる。うちらは『マスティア』に恩が売れる。ウィンウィンや!」

 そう言いながら虚空を見つめもこちねるがぴょこぴょこ飛び跳ねます。

 「問題はもう一つあるよー」

 ステイシーが、恐らくは私と同じことを考えているはずですが、そう言ったので聞きに徹します。

 「マーリンがデスペナで情報が入らなくなった」

 「問題はそこなんよなー」

 すぐにこちらの会話へと意識を戻したもこちねるがそう言います。

 「罪人判定だよね? なら5日後だね」

 アリスがそう言うと、もこちねるを含めた私達はコクリと首を縦に振ります。

 「なら他にも少し話を聞いてみる? これだけのことをしたんだから責任追及をしてもいいとおもうし」

 そう言ってアリスが虚空を見つめチャットを開始したようでした。

 「正直さ」

 エルマがそう口を開いたので私が「ん?」と聞き返すと、オホンと咳払いをして語り始めます。

 「あたしにはここまでが筋書きにしか見えないんだよ」

 「つまりー?」

 「誰かが裏で糸を引いているんじゃない?」

 エルマがそう言った瞬間、場の空気が急に重くなり、皆が口を閉ざしてしまいました。

                                      to be continued...

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