第1章11幕 喫茶<cafe>
「ふーふー……。おまたせしました。こちらうちの従業員のフランさんとラビさんです」
「「はじめまして」」
「はじめまして。マリアナと言います」
「フランです」
「ラビです」
「突然来てしまい申し訳ございません」
「いえ。大丈夫です」
これまでの経緯を改めてフランとラビに聞かせました。
「なるほど。ではすぐにお店を開けるように準備しないといけませんね。ラビ、ポテトちゃん呼んできて」
あれ。また私の知らないとこで仲良くなってる。
「りょうかい!」
「【料理人】さん、【菓子職人】さん、【女給】さんが6人、【黒服】さんが4人ですね」
「はい」
「まずはお店の中に入りましょう」
「そうですね」
「かなり広いですね」
「ありがとうございます。ここを【料理人】さんと【菓子職人】さんで分けて使っていただきます。厨房は最大3つ用意できます」
「となると客席は一緒、ということですね」
「はい。レストランと言っていますが食事やお菓子が食べれるカフェに近いです」
「わかりました。ではすぐに厨房の準備と客席の準備をします。あなた達は客席をシュロイはお菓子の調理場を準備して」
「わかったよかあさん」
「では私はお菓子の調理場を手伝いますね」
そう言ってフランも右手奥の厨房に行きます。
なるほど。【菓子職人】の子はシュロイという男性だったようですね。
マリアナさんめっちゃ若く見えるのにこんなおっきな子供いるんだ……。
「つれてきました。ポテトさんです」
「はじめまして。ポテトと申します」
「はじめまして、マリアナです」
「では私はフランと一緒に準備を手伝ってきます。フランはどちらへ?」
「右手奥の厨房に。私は……マリアナさんをお手伝いしようかな」
「ありがとうございます」
「私は客席の準備でよろしいでしょうか?」
「おねがいねポテト」
「かしこまりました」
全員が散り散りになり、準備が進んでいきます。
「左手奥の厨房でいいですか?」
「大丈夫です。真ん中の厨房はどうするのですか?」
「あそこは飲み物を作ったり、【料理人】じゃなくても作れるお茶請けを作ったりする厨房にしようかと思っています。お煎餅とか作るときに同じ厨房じゃ大変でしょうし」
「ありがとうございます」
「ではすぐに準備しましょう」
私とマリアナは厨房を作るため移動しました。
「なるほど。いま倉庫から器具を取り出しますね」
「お願いします」
マリアナが大量の器具を取り出します。
「結構な量があるんですね」
「これでも少ない方ですよ。前は小さいお店だったので」
これで少ないのか……。
あっそうだ。こういう時こそ脳筋のでばんじゃん。
「驚かないでくださいね。≪召喚〔GGB〕≫」
『グルウゥォグルルン』
「わっ!」
「すいません。この子に重いものは運んでもらいましょう」
「力ありそうですもんね」
「おいゴリラ。それはそっちの奥だ。しっかりやれよお前」
『グルゥオグルルゥ』
「この分ならすぐ終わりそうですね」
「なるべく早く終わらせて、他のところにも貸してあげないとです」
私とマリアナさんの指示でテキパキ動くゴリラのおかげてスムーズに準備が進みます。
余談ですが、シンクなどを設置すると謎の力で水道が繋がります。便利。
「あとは小物ですので私のほうは大丈夫です。他のところ手伝ってあげてください」
「わかりました」
私は入口から見て右手奥の厨房まで歩いていきます。
後ろをついてくるゴリラにみんなちょっと驚いてるようですね。「きゃぁ」とか「うお!」とか聞こえてきます。
「手伝いに来たよ。どう順調?」
「チェリー! ありがとう! 小さいものは大体置けたんだけど、大きいものが持てなくて……」
「大丈夫。ゴリラに運ばせる」
『グマグカグセグヨ』
いま……任せろって言わなかった?
「ゴリラさんこっち! ……。そこ!いい感じ!」
「すいません設置まで手伝っていただいちゃって」
「いえいえ。大丈夫ですよ。うちでお店やっていただけるのはとてもうれしいです」
「俺はシュロイです。修行中ですが【菓子職人】です」
「私はチェリーです」
「チェリーさん……いい名前ですね」
そう言って白い歯をみせてきます。
こいつ多分タラシだな。
ゴリラパワーで二つの厨房が完成する頃には、客席も完成したのでひと息つけそうです。
「みんなありがとう。本店の方々もありがとうございます。軽いものですが何かおつくりしましょうか?」
「でしたら俺も何か作ってきます」
「お願いします」
私やフラン、ラビ、ポテト、【女給】、【黒服】のみんなが席に着きます。
数分して全員分の軽食が運ばれ、デザートにチョコケーキのようなものが振舞われます。
「ではチェリー音頭を」
ポテトにそういわれ、立たせられます。
えっ……。何言えばいいんだろう。
「えー……お疲れさまでした。乾杯……」
「か、かんぱーい」
少しの間が開きましたが、みんな乾杯と言ってくれました。
サンドウィッチのような軽食をつまみ終わりケーキを口に運びます。
うん……。疲れた体にしみますね。これは。
同じ席についているマリアナとシュロイに話しかけます。
「このサンドウィッチすごくおいしいです。ケーキもとても」
「ありがとうございます」
「ありがとう」
「ここで働けそうですか?」
「はい。【女給】の子も【黒服】の子もみんな生き生きしています」
「俺もです」
「よかったです。突然出てきた私のとこにきてくださって本当にありがとうございます」
「いえいえ」
「ところでお店の名前はなんというんですか?」
「先ほど息子と話したのですが、お店の名前は『喫茶セーラム』にしようと思います。
はぁ?
「ちょっとまってください。マリアナさん自分のお店の看板背負ってるんじゃないんですか?何勝手に名前変えてるんですか!」
「いえ。名前変えていませんよ?」
「へっ?」
「『ディレミアン』のあのお店、『セーラム』っていうんですよ」
うっそーん……。
こうして無事『喫茶セーラム』の開店準備が整い、従業員の部屋割りをフランに任せ、紅茶を啜っているとマリアナが話しかけてきます。
「何度聞いても驚きです。まさかお店の名前が同じとは……」
「私もびっくりです。被らないと思っていたんですけどね」
「運命だったのかもしれませんね」
「そこまでじゃないはずですよ」
「ふふ。そうですね」
「これからもよろしくお願いします」
「ええ。こちらこそお願いします。あっそうだ本店のほうに行ってもらう子が決まったのでご紹介しますね」
3人の【女給】を紹介してくれます。
「右から、ハンナ、カンナ、シドニーです」
「「「よろしくおねがいします」」」
「よろしくお願いします」
ハンナとカンナは姉妹なのかな?
すごく良く似てる。
「ハンナとカンナは双子なんですよ」
やっぱりー。
「私とカンナが夜の時間を担当させてもらいます」
「うちが昼担当させてもらうシドニーです」
「チェリーです。仕事はフランさんから聞いて覚えてください。あっ住む場所なんですが本店の上で大丈夫ですか?」
「「「大丈夫です」」」
「ではそのようにします」
部屋割りを担当していたフランを呼び3人を紹介します。
「よろしくおねがいします。では3人は後ほど部屋割りをしましょう」
「私とカンナは同じ部屋で大丈夫です」
「かしこまりました。こちらの部屋割りが終わったら本店にいきますので先にチェリーさんと本店にいっていてください」
あっまた厄介払いの予感ー。
「ではいきましょうか」
本店に戻って、軽く説明をしているとフランがもどってきます。
「ただいま」
「おかえり」
「「「おかえりなさい」」」
「ではお部屋のある3階へ案内いたしますね」
3階まで私はエレベーターを使い上ります。
ほんと楽ですね。がんばって作ったかいがあります。
「あれがエレベーターです。上階と下階をスムーズに移動できる外のアイテムです。後ほど使い方を説明しますね」
すごい。もうエレベーターまで習得してる!
「ではこちらの少し大きめの部屋にハンナさんとカンナさんがはいってください。シドニーさんはどこがいいですか?」
「うちはエレベーターの近くがいいな」
「ではこちらですね」
私いる意味ない。
あっそうだ。
置物もってこよう。
エレベーターで下に降り、像をもって再び上がります。
インベントリから像を取り出し置きます。
これで大丈夫ですね。
凄く動いて疲れたので、お風呂に入りにきました。
装備を全解除し、浴場に突撃です。
リアルでしばらくお風呂入っていないですが、こちらで入っているので問題ないでしょう。
あら? 先客がいるようですね。
「ラビ。入っていたんですね」
「うん。汗かいちゃったから」
「お疲れ様」
そういいながらお湯を浴び、湯船につかります。
「ふぅーきもちぃ」
「きもちいねー」
ラビとまったりお風呂タイムを過ごします。
「まだ仕事に慣れてないのに、いろいろやらせちゃってごめんね」
「フランちゃんは優しく教えてくれるし、楽しいから大丈夫だよ」
「そっか。ほんとフランっていい子だなぁ。もちろんラビもだけどね」
「えへへ……」
「お風呂あがったら新しい従業員の子に挨拶いこっか」
「うん! あっでも制服汗で汚れちゃってるから、新しいのをもってきますね」
制服……?
あっ。
「……」
「チェリー?」
「やらかした。制服が足りない!」
「えっ?」
「女性の制服が圧倒的に足りない!!」
「まぁ確かにたくさん雇ったしね」
「私ちょっと追加で注文してくる!」
バッっと湯船から飛び出し、駆け出します。
「チェリー!! 服着て! 服!!」
おっといけない!
びちゃびちゃのままでしかたありません。
メイド服を着用し、階段で駆け下り、『メイドらぶらぶ』に向かいます。
今日めっちゃ走ってる。
疲れる……。
『メイドらぶらぶ』に到着し、すぐにファーナを呼びます。
「ファーナ、さん、いますか?」ハーハー
「どうしたの?」
「こないだの、メイド服……追加を」ハーハー
「了解だよ。何着くらい?」
「えぇっと……ちょっとまってね」ふーふー
『フラン。足りない制服何着?』
『女性用が20着不足で、男性用がちょうどなくなる!』
『ありがと』
「えっと男性用15着と女性用35着おねがいします」
「これまた大量だね」
「いっぱい従業員が増えたので」
「そうだろうとおもってレシピ化してあるから1時間もかからず完成するよ。お店に届けるね」
「ありがとう。お代は?」
「500万金って言いたいところだけど、小剣が思ったより使いやすくてね。400万金にまけてあげる」
「わかりました」
「あっそうそう。雀卓手に入れたからあとで打とう。一人呼んでおくからチェリーも一人呼んで」
「わかりました。ではまたあとで」
「またあとでね。あ、あと次からはチャットで注文してきていいからね」
その手があったか……。
制服の注文を終えた後本店に戻り、注文したことをフランにチャットで伝えます。
『女性用35着と男性用15着頼んだよ』
『ありがとう! これでまた増えても足りそうだね』
『うん』
『部屋割り終わったから帰るね』
『はーい』
途中で上がってしまったお風呂に戻り、もう一度ゆっくり入ります。
to be continued...