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第4章52幕 魔力刀<katana with magic>

 少し深呼吸をし、気持ちを落ち着けてから私は発信ポタンを押しました。

 4.5回のコールの後、幼馴染の桃子が電話に出ます。


 『智恵理先輩。お久しぶりです』

 『桃ちゃん久しぶり。どうしたの?』

 『特に理由はなかったんですけど最近どうしてるのかなって思って』

 『ぼちぼちやってるよ。桃ちゃんは?』

 『私もぼちぼちって感じです』

 『そっか。昔みたいに話してくれていいよ。少し元気がないけどどうかした?』

 『わかった。ちょっと色々あって』

 『聞くだけならできるよ』

 『じゃぁせっかくだし聞いて』

 そう携帯端末越しに声が聞こえ、次に呼吸を整えるように深呼吸をしているのがわかりました。

 『オンラインゲームにはまって辛い』

 ん?

 『んん? ちょっと待って? それって何か悪いこと?』

 『一日5時間くらい遊んじゃって……』

 『短くない?』

 『えっ?』

 『えっ?』

 少しの沈黙が永遠にも感じられ、やばいと思った私は話を続けます。

 『なんのオンラインゲームやってるの?』

 『今は<Imperial Of Egg>ってゲームやってるよ』

 『…………』

 耳が言葉を理解できず、一瞬思考が停止ます。

 『智恵理ちゃん?』

 『ごめん。私もそれやってる。一日12時間くらい』

 『…………』

 『…………』

 私がそう言うと、再び無言の時間がやってきます。

 『まじ?』

 『まじ』

 『世界って狭いね』

 世界って狭いんですよ。

 『うん。第二陣ログインだったの?』

 『ううん。第一陣でログインできたよ。端末買えなかったんだけど仲良かったフレンドがいくつか買ってたみたいで貰ったの』

 『あー。私が前いたギルドのギルマスがそういや複数買ってたなぁ』

 『ギルマスは考えることたくさんで大変そうだね。智恵理ちゃんは向こうで何やってるの?』

 『いま精霊駆動を使って乗り物作ろうかなって思って。桃ちゃんは何してるの?』

 『レンジャー兼情報屋だからいろんなとこ回りながら素材収集しながら情報収集してるかな』

 『レンジャー兼情報屋か。楽しそうだね』

 『楽しいよ。智恵理ちゃんの武器は?』

 『私は魔法系だよ』

 『そうなんだ。向いてるかもね』

 『かもね。元々は【暗殺者】だったんだけど』

 『ん? 元【暗殺者】で今魔法系? ちょっとまって人違いかな?』

 『どうしたの?』

 『もしかしてプレイヤーネームってチェリー?』

 『えっ? そうだけど?』

 『あー。うん。向こうであったことある』

 『えっ?』

 『覚えてないかナー? エルマの知り合いの情報屋のプフィーなンだけドー』

 聞き覚えのある口調に変わった桃の声を聞いて私ははっとします。

 『あっ!』

 思い出しました。

 私達が〔流体金属傀儡 L・M・D ディージー〕と〔流体金属操者 L・M・P エムティー〕を倒した時の情報を提供する代わりに精霊駆動式二輪車の入手クエストの情報をくれたあの情報屋を思い出します。

 『思い出した』

 『世の中狭いね』

 『本当にね』

 『機会があったら向こうでも遊ぼうよ』

 『そうだね』

 そのあとは当たり障りのない話や、大学の話、就職活動の話をしたりしました。

 『あっごめんそろそろバイトの時間だからしたくしなきゃ』

 『わかった。がんばってね』

 『うん。頑張ってくる』

 また一つ楽しみを増やした私は、食事をとり、<Imperial Of Egg>へログインします。

 

 宿屋のベッドで目覚めた私は、パーティーリストを確認し、すでにエルマがログインしていることを確認しました。


 『エルマいる?』

 『いるよん。どったの?』

 『こないだの情報屋のことで話があって』

 『ほうほう。んじゃぁいまチェリーの部屋までお姉さんが行くからまってなさい!』

 『わかった』


 数分もしないうちにエルマが私の部屋にやってきます。

 「そんで話って?」

 「あの情報屋さん私の幼馴染みたい」

 「はぇ?」

 エルマもびっくりしているようですね。

 「プフィー? ジュンヤが端末あげた女の子でしょ?」

 「えっ?」

 ジュンヤが端末あげたの桃ちゃんだったんだ。

 「知らなかった。驚いた」

 「あたしも驚きでいっぱい。まさかプフィーがチェリーの幼馴染だとは」

 「世の中狭いね」

 「だね。あっそうだ。チェリー精霊駆動で乗りもの作るんでしょ? 二輪車」

 「そうだよ」

 「腕の良さそうな職人さん何人か見つけておいたよ」

 「ありがとう。助かる。じゃぁ行こうかな」

 「待ちなさい。お姉さんを置いていくつもりかな?」

 「置いてかないよ。一緒に行こう」

 「うん!」

 なぜか喜ぶエルマを連れ私は宿屋を出ました。


 「『エレスティアーナ』でデュレアルって【鍛冶職人】が腕利きだって聞いた」

 「あー。あたしが見つけてきた腕利き職人のリストにも入ってるよ」

 「じゃぁまずそこに行こうかな」

 「おっけー」

 そう歩きながら話し、エルマの案内に従い【鍛冶職人】デュレアルの店へとたどり着きます。

 

 「ごめんください」

 「おう。どうした? 武器か?」

 「えっと『エレスティアーナ』でデュレアルさんが腕利きと聞きまして」

 「おっ。かーちゃんに会ってきたのか。格安にしといてやるぜ。何を作ってほしいんだ?」

 「えっと。これを使って乗り物、二輪車を作ってほしいんです」

 私はそう言ってインベントリから精霊駆動を二つ取り出します。

 「二つか。やったことねぇから保障できんな。ちょっと待っててくれ」

 立ち上がったデュレアルが裏口からどこかへ行ってしまいました。

 「結構品揃えがいいね。普通にユニーク武器が売ってる」

 「言われてみれば。これなんか普通に強力」

 棚に陳列してある【月影斬 クレッセント・アンピュート】という魔法剣を手に取り確認します。

 「うっわー。それすごいね」

 「ね。長刀として普通に私欲しいかも」

 「チェリー魔法剣は使ったことあるの?」

 「ないよ」

 「ならばそのうちお姉さんが練習に付き合ってあげよう」

 それにしても本当にこれはいい装備ですね。

 「待たせたな。紹介するぜ。俺の鍛冶仲間、アインとリベラルだ」

 「お初だぜ」

 「よろしくなぁ」

 パット見で誰が誰だか分からないです。皆いい感じの髭ですね。

 アインとリベラルから挨拶をされたのでこちらも返しておきます。

 「チェリーです。こちらはエルマ。よろしくお願いします」

 「よろしくね」

 「早速だが打ち合わせに入りたいんだが。おっとそいつが気に入ったのかい?」

 「はい。とても良い装備効果とスキルですので」

 「ならそいつの代金込みで二輪車を作ってもいいぜ? 正直そいつは売れ残りだしな」

 これが売れ残り……?

 「なんで売れ残るんだろう?」

 同じ疑問をエルマも感じていたらしく、素直に聞いていました。

 「それは簡単だ。燃費が悪いからだ。使えば分かるさ。良しじゃぁまずそっちから行くか。ついてきな。アイン、リベラルちょっと待っててくれっか?」

 「いや。これは面白そうだぜ。俺も見せてもらおう」

 「俺も興味あるな」


 近くにある【鍛冶職人】たちの合同試射場までやってきました。

 「準備はいいか?」

 「はい」

 「念のため聞いておくが魔力剣の使い方は?」

 「あらかた知っています。実際使ったことはありませんが」

 「ちょっと俺離れててもいいか?」

 「どうぞ? では少し素振りさせてもらいますね」

 「まずは魔力を込めないで振ってみろ」

 「はい」

 言われた通り魔力を込めずに一閃します。

 抵抗をまるで感じず、シュッと空気を切り裂きます。

 「おお。流石だな。刃が薄いから結構苦戦すると思ったんだが」

 「そうですか?」

 「よしじゃぁ次は魔力を刃に流してみてくれ」

 「はい」

 魔力を手のひらから柄へ流していきます。

 すると私の魔力を吸った刃が次第に黒く変色していき、厚みを増します。

 「なるほど。闇属性の魔法になったか」

 「すいません。特に意識して魔力を流さなかったので普段一番使ってる属性になってしまいました」

 「いや。気にすんな。良しじゃぁそれを向こうの的に向かって振ってくれ」

 「わかりました」

 上段から斜めに振り降ろします。

 刀身が伸びたような錯覚を覚えた私は慌てて的を確認します。

 すると的は真っ二つに分かれ、地面に落ちていました。

 「その魔法剣、いや魔法刀といった方がいいか。基本術式は≪刀身延長≫だ」

 そうですよね。日本刀と同じ感じですもんね。

 ≪刀身延長≫はなかなかいいですね。

 「こめた魔力で刀身の長さを調節できる。そしてもう一つ術式がある」

 「それは?」

 「≪斬撃停止≫。つまりは斬った部分に込めた魔力に比例する時間斬撃を残しておける。これはスキルに含まれているな」

 そう言われた私は改めてスキルを確認します。

 確かに≪斬撃停止≫があります。

 「ところで嬢ちゃん。魔力は残っているか?」

 「えっ?」

 私は自分の魔力を確認して絶句します。

 残りの魔力は1000をきり、今も急速に減少しています。

 「なるほど。燃費が悪いとはこういうことですか」

 魔法剣を扱う人は魔力は基本的に少ない傾向にあります。しかし、純粋な【剣士】などに比べ明らかに多いのですが、一太刀で枯れてしまうなら確かに使い手はいないでしょう。

 「元々は魔法剣を刀で作り、そこに属性の付与と別のスキルを組み込んだ試作品だ。そのせいで燃費が最悪になっている。それでも嬢ちゃんが欲しいというならそれはタダにしてやってもいい。調整も無料でしよう。ちなみに納刀状態なら消費はしない」

 「ではこちらをいただきます。使いどころがきっとあると思うので。それにここで出会ったこの刀に、私は惹かれてしまったので」

 納刀しながらそう答えます。

 「そう言ってもらえると助かるぜ。じゃぁ工房に戻ろう。精霊駆動を二つ積んだ乗り物を作るんだ。気合いれねぇと」

 そう自分の顔をペシっと叩きながらデュレアルは工房に向けて歩き出しました。

 そのあとを追うように私とエルマも歩き出します。

                                      to be continued...



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