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第4章38幕 懐古<reminiscence>

 「メイド服超似合うよね!」

 エルマがそう愛猫姫に言います。 

 「ありがとう。お気に入り、なの」

 愛猫姫の返事を聞いたエルマは右手を顎の下に持っていきうーんと唸ります。

 「どうしたの?」

 私がエルマに聞くとまじめな顔で返してきます。

 「あたしもメイド服買おうかな」

 「あ、うん」

 そう話をしているとエレベーターが一回に到着します。

 宿から出てご飯を食べに行っても良かったのですがエルマ曰く「ここの宿ほうがおいしいらしい!」だそうなのでこちらの宿のレストランで食事をすることになりました。

 入口の前で待っているとウェイターらしき人物がこちらにやって来て人数を問うてきます。

 「5名様でよろしいでしょうか」

 「はい」

 「でしたらこちらでございます」

 そう言って歩き出すウェイターについて席まで案内されます。

 「こちらのお席をお使いください。こちらの食事は他の国からくる方も多いので多少お味が濃いかもしれません。もし濃い味が苦手でしたらおっしゃってください。厨房に伝えてこちらの都市の味付けでお出しさせていただきます」

 あっ。薄味というか無味なの知ってるんですね。

 「分かりました」

 そう伝えると人数分のメニュー表を渡してくれます。

 「ではお決まりの頃お伺いいたします」

 ウェイターはそう言うと下がっていきました。

 「どれもおいしそうだね」

 写真のようなものが付いてはいませんが名前からしておいしそうなものばかりです。

 「きーめた」

 「ぼくもー」

 「マオも」

 すでに三人が決めたようですね。

 この子たち注文決めるの早い。

 「私も決まりました」

 あー。私が最後かー。

 じゃぁこれにしましょう。『アマトリチャーナ』

 「お決まりですか?」

 皆がメニューから目を離したのを確認すると先ほどのウェイターが戻ってきました。

 「はい。『アマトリチャーナ』を」

 「僕は『アラビアータ』」

 「あたし『プッタネスカ』」

 「マオは『カルボナーラ』」

 「私は『ポモドーロ』をお願いします」

 見事にみんなパスタになりましたね。

 ウェイターも少し困惑気味でしたがすぐに復唱して下がりました。

 「まさかみんなパスタだとは思わなかった」

 「だねー」

 ステイシーがそう返します。


 食事が運ばれてくるまでの時間、クルミに色々聞いたり、こちらからも色々話したりと落ち着いた時間を過ごすことができました。

 食事が運ばれてくると皆無言で食べ、注文したデザートも食べきり、レストランから出ました。

 「ふー。ちょっと食べたりないなー」

 ステイシーがそう言うと、エルマが反応します。

 「じゃぁどっか散歩いく?」

 「さんせいー。皆も行くー?」

 「マオは、遠慮、しとくわ」

 「私も疲れちゃったからパス」

 「すいません。私も疲れたので今日はもう寝ます」

 「了解ー。じゃぁまた明日ねー。エルマいこっかー」

 「あいよ!」

 そう言って元気に二人は宿から走り出していきました。

 「では私達は部屋に帰りましょうか」

 「そう、ね」

 エレベーターに乗り4階まで登ります。

 そして部屋の前で挨拶をし、各々の部屋へ引っ込んでいきます。


 私は部屋に戻り、ベッドにピョンと飛び乗り、もぞもぞと掛布団の中に入っていきます。

 今日は疲れたのでもう寝ることにします。


 寝る前に無意識で設定していたアラームが鳴ります。

 このアラームは9時になるアラームですね。

 個人的にあまり寝た気がしないのですが、12時間も寝ていると周りからは長いと言われます。私にとっては12時間でも短いんですけどね。

 最近現実に帰ってから寝る方が多かったので少し新鮮です。

 そして一度現実に戻り、いつもの通り用を済ませすぐに戻ってきます。

 パーティーメンバーの欄を見るとステイシーだけまだログインしていないようです。


 『おはよう』

 私はパーティーチャットで起床を伝えます。

 するとすぐにエルマから返信がありました。

 『おはよ! 精霊神像を昨日の夜見つけたよ!』

 『ほんと!?』

 『あたぼーよ。お姉さんを信じなさい』

 『どこにあるの?』

 『落ち着きなさい! 今まだ部屋にいる?』 

 『いるよ』

 『おっけ! 迎行(むかい)く!』

 迎えに来てくれるそうなので待っていましょうか。


 十数分程すると扉がコンコンと叩かれます。

 「どうぞ」

 「失礼します。ってちゃうわい。迎えに来たよ」

 「わかった」

 一応の装備を確認して部屋から出て、エルマと合流します。

 「一般公開されているお城の一階にあるのだよ!」

 「どうやって見つけたの?」

 「えへへ。忍び込んだ」

 「えっ」

 「ウソウソ。精霊神像こちらって電光掲示板があったのだよ」

 自慢げに胸を張っています。

 「そっか。じゃあ案内して」

 「おまかせ!」

 私達は宿屋を出ました。


 昨日到着したときは夜間だったので、電気の灯りがまぶしいなと思いましたが、この時間ですと、電気はあまりついておらず、『アクアンティア』と町並みはあまり変わらない感じでした。

 違う点を述べるとすれば、人通りが多いことと、何かのエネルギーで動く乗り物のような物がたくさん走っているくらいでしょうか。

 「これ車かな?」

 私がそう呟くと、エルマがちっちっちと指を立て、訂正してきます。

 「チェリーさんのお目当て精霊駆動だってさ」

 「ふぇ! あれが!?」

 「そうらしい。昨日酒場のマスターが言ってた」

 「なるほど。つまりこれを手に入れるためのクエストってわけか」

 「そこの情報もひとつ貰ってきたよ」

 「どんな?」

 「精霊駆動獲得クエスト完了後に別のクエストがあってそこで乗り物とか武器とかに昇華させるんだってさ」

 「へぇ。武器とかにもできるんだ」

 「らしいね。っとお城見えてきたよ」

 エルマが指をさした方を見ると確かに城っぽいものがあります。

 城……。城……?

 城は城でしょうけどなんていうかゲームのお城みたいですね。ここゲームの中ですけど。すいません。私の説明が悪かったです。昔懐かしいドット絵に近い感じですね。

 「ドット絵……」

 「あっそれあたしも思った」

 エルマの同意も得られたので恐らくみんなそう思うんでしょう。

 「えっとね、特に手続きとかも無いらしく、すぐに入れるみたいだよ」

 「それは助かるね」

 「じゃぁいこ」

 そういってエルマがそそくさと行ってしまったので私も続いていきます。


 城の内部は観光客と思しきNPCやプレイヤー達で溢れかえっていました。

 「結構混んでるね」

 「だね。こっちこっち」

 エルマが表札のようなものを発券したようで私の手を掴んで連れて行ってくれます。

 「これだ!」

 キキッと立ち止まったエルマが私の手をパッと話し指をさします。

 少し投げ出されそうになりましたが私も何とか踏ん張りその精霊神像を見ます。

 パチパチと電気が表面を走っていますね。

 足元には電気を遮断するマットのようなものが引いてあります。

 私が精霊神像に手を伸ばすとすぐに『精霊神像5/11』というウィンドウが出ます。これにも慣れたものです。

 「いけた?」

 「うん」

 「よしじゃぁあとはお城の中で行けるとこまで探検しよう!」

 そう言ったエルマに腕を捕まれ、連れまわされることになりました。


 「エルマ! これ! 懐かしい!」

 私は発見したものをエルマに指さして知らせます。

 「あー! 懐かしい! チェリーも持ってたんじゃない?」

 「持ってた持ってた!」

 私の親の世代に大流行し、何故か私達が中学生くらいの頃にも再び大流行した、持ち運べる小さい機械でモンスター等を育成するおもちゃが置いてありました。

 「やばい! 実家に帰って久々に遊びたいかも!」

 「すっごいわかる!」

 このお城には、プレイヤーが懐かしいと思うゲーム機やおもちゃが置いてあり、私達は童心に帰ったような気持ちでこのお城を探検することができました。

                                      to be continued...

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