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異世界で三兄妹が奮闘する話。  作者: G2
始まりの物語編
6/40

第五話 嫉妬という名の災渦

毎度毎度不定期で申し訳ありません。

今回で記念すべき第五話、そして10000字突破です!


少女が発するような幼い歌声が聞こえた瞬間、俺の「神ノ瞳」の能力の一つである「未来視」が発動した。

「未来視」とは、その名の通り未来を見る力だ。だけど、操作(コントロール)ができない、不定期で発動する上に映像しかわからない。音声の入っていない、かなり扱いづらい能力(スキル)だ。

そして、俺が見たものは、


________________


村に落ちる巨大な光の玉とそれを上空で見て、顔に笑みを浮かべる、額に角を持ち、日傘を持った少女。


村に落ちた光の玉は激しい閃光を放ち、爆発する。


爆発によって起きた粉塵が晴れると、そこにはクレーターのような跡があるだけだった。


そして、クレーターの中心に少女は降り立つ。


何かを見つめて、少女は走り出す。


何か言葉を発しながら。


________________


ルーミは考える。

今聞こえる、少女のような歌声。そして「未来視」の映像。その二つを合わせたら、誰でもわかる。


サーガ村(この村)は、その少女によって消滅させられる。


そんなことあるはずがない。

そう思った俺は、「神ノ瞳」の「遠透視」を使い、村の東口を見る。

そこには、「未来視」で見た、鋭い白色の角が額から二本突き出ている、紫の短い髪と瞳。白いフリルのついた紫のドレスに紫の靴、そして紫のヘッドドレスとどうみてもゴスロリ衣装だ。さらに、紫色の小さい日傘のようなものを持っていた。と、見事なまでにほとんど紫いろで埋め尽くされている。


「・・・っ!!」


嘘だろ・・・。

恐怖を感じ、一瞬声が出なかった。


「なんだい?余所者でも来たのかい?」


「にっ逃げないと!!」


「どうしたんだい?なん」


ドガァァァァン


俺が取り乱したのを見た母さんが、なんで、という前に爆音とともに東口に一番近い家が消し飛んだ。


「どうも~ボクは、九罪王の~嫉妬の~エンヴィーちゃんだよっ!人間(ゴミクズ共)には、九守王とかゆうダッサ~イ名前で呼ばれてるんだ~よろしくねっ!」


明るい声で話した後、日傘を持っていない手でピースサインをつくり、自分の右目の前にかざして、決めポーズをその少女・・・エンヴィーはした。


「そして、さようなら。」


さっきとは全く違う、低い声で言った。

それと同時に全身に悪寒が走る。鳥肌が立つ。体が震える。

感じるのはとんでもない重圧(プレッシャー)と殺気。

この場のエンヴィー以外は、恐怖にかられて声が出なかった。

正直、重圧でショック死してもおかしくない、と思えるくらいだった。


「・・・ルーミ、アン達を連れて逃げな。」


母さんと父さんは、冷や汗をかきながらエンヴィーと俺の直線上に立ち、母さんが絞り出すように言った。


「でもっ!」


「いいから行けっ!」


初めて聞く父さんの怒号だった。

こんな声今まで聞いたことがない。だって、父さんは怖い顔してるくせにものすごい気が弱く、喧嘩をしているところなんて俺は一度も見たことがなかったから。

そんな会話をしている内も村の人間が、エンヴィーによって殺されていく。



まるで、災渦。


俺は、目からこぼれそうになった涙をぬぐい、俺の後ろで立ったまま動けなくなっていたアンとユーズを抱えて無理やりティーに乗せた。

ティー、お前よく逃げなかったな。

なんて思う余裕なんてないので、ティーに逃げてもらうように頼もうとしたら、すでに一心不乱に逃げていた。

後ろ・・・さっきまで俺がいた方向から声がする。


「まったくも~逃がさないよ~」


ほほを膨らませながら、エンヴィーは右手に光の玉を作り、俺達めがけて飛ばした。

マズい。そう思った瞬間、


「「霊装!!」」


光の玉が斬られて、弾ける。

弾けたことで粉塵ができる。

そして、粉塵が晴れ、そこに立っていたのは、


「・・・ここから先には、」


「行かせんさね」


紅蓮に燃えたマントを着た母さんと藍色の深い海のようなマントを着た父さんだった。

二人とも剣を握っている。

俺はそんな姿、見たことも聞いたこともなかった。


「・・・15秒いや、20秒は稼いで見せる。」


「いいや、30秒さね。」


そう言った、母さんの顔は少し笑っていた。


「ちぇ~すこしめんどくさいな~」


エンヴィーは、少し口をとがらせて言う。


「「はぁあああああああああああああ!!」」


二人は同時に雄叫びをあげ、エンヴィーに向かって剣を繰り出す。

それをエンヴィーは、空中に飛んで避ける。

二人はエンヴィーに追撃するために飛びあがる。


母さんの後に間髪入れずに父さんが斬る、という素晴らしいコンビネーションだった。

それはまるで、赤と青の光が紫を追い詰めているように見えた。


それが、俺が見た、父さんと母さんの最後の姿だった。


ティーは、森の中に入って逃げた。

森に入って少し行ったところで、我に返ったのかアンが村に向かって飛び出した。


「なっ!?アンっ!?」


止めようとしたら、風の魔法で飛んで行ってしまった。

今までは、ユーズと同じように固まって動けていなかったのに。


「くそ!・・・戻ってくれティー。」


俺は一瞬迷った。

俺とユーズ、ティーと、アンの命を一瞬天秤にかけてしまった。

だけど俺は、兄妹そろって生き延びたい。兄妹一緒で死にたい。

そう思い、戻った。

一瞬、ティーも迷ったが、すぐにアンを追ってくれた。


~ヒューズ~


ガン ガキン ガン


僕と母さん・・・イザベラちゃんの本気の攻撃が全部、エンヴィーの閉じた日傘で防がれる。

精霊使いの真骨頂にして奥の手の「霊装」をもってしても。


「「だぁあああああああああああ!!」」


イザベラちゃんが日傘の先を剣で受け止めた。そのすきを狙って、僕の剣は日傘の下から振り上げる。

下からの衝撃でエンヴィーは手ごと、日傘を振り上げてしまう。


今だっ!!


今、エンヴィーは腕も振り上げてしまっているので胴ががら空きの状態だ。

そこを狙って、全力の一撃を放つ。


僕が放とうとすると、全く同じタイミングでイザベラちゃんも放とうとしていた。

やっぱり、考えることは同じだなぁ。昔と何も変わらない。


「「複合魔法!!炎と水の英雄の投槍(シューラ・ヴァラ)ァァァァァァァ!!」」






お読みいただきありがとうございました。

シューラ・ヴァラというのは、ヒンドゥー教の聖典である、ラーマーヤナというのに載っている、英雄ラーマの投槍のことです。

ちなみに、意味は「鋭利な投槍」だそうです。

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