第三十四話 現れたのは・・・
すいません。
投稿したとばかり思ってました。
それは、まるで竜巻だった。
轟!!という激しい音とともに、木々を吹き飛ばし、大地をめくれ上げ、敵を完膚なきまでに排除する横向きの竜巻。
しかし、それを食らってなお、ルーミはひびが入って崩れそうな土壁に身体を預けながら生きていた。
「はあ、はあ・・・。」
何十メートル吹き飛ばされたのだろうか、魔王の姿が先程より小さく見える。だが、その背中から生える羽は、徐々に大きくなっていくようだった。
そもそもルーミ自身、生きていることに奇跡すら感じていた。
四枚の羽の攻撃を受ける瞬間、羽に向けてありったけの〝闇〟をぶつけて衝撃を緩和しようとし、普段は身体を覆うようにして展開していた「範囲結界」を前方と後方のみに集中させ、何十枚もの土壁を背後に造り出したのだ。
そこまでしても止めることはできなかった。〝闇〟は吹き飛ばされ、「範囲結界」は粉々に砕け散り、身体を預けている土壁も数枚しかない。加えて、ルーミは無傷ではない。突き刺さっていたはずの剣はいつの間にかなくなっていたが、左手は動かず右手もかろうじて刀を握れている状態だった。その刀も、もはや斬るという本来の機能が失われるほどの長さしかなかった。左目も血が入り込んだのかよく見えなかった。
次の一撃で終わる。
「くかかかかかかかかかかかかかかかかかかか!!」
もはや魔王は何も見えていない。
その背中の羽は、小刻みに震えながら巨大化していく。
そして、その内の一枚が、ルーミを叩き潰すために、振り下ろされる。
『避けてくださいッ!ルーミ様!!』
頭の中でサーガが叫ぶが、ルーミの身体は一切動くことが出来ない。
大地の震動と、轟!!という激しい音で、少年は目覚めた。
「な、にが・・・。」
一瞬考えた後、少年は目撃する。
それは、夜の闇より黒かった。
それは、月明かりによって照り輝いていた。
それは、四枚の蝶のような羽だった。
少年の周りには、破壊の痕跡があった。
どんなことがあったかなんて、想像もつかない。
だけど、とてつもなく嫌な予感がした。
何故か、行かなければならないような感覚が。
何故か、何か大切なものが失われてしまうような感覚が。
頭で考えるとか、そういうことじゃない。
心が身体を引っ張っていた。
ある人物に関する記憶を失った少年は。
胸の内にあるその異様な感覚に従い、夜の森で走り出す。
今まで高見の見物をしてきた、少女のような見た目の怪物が言った。
「ふふっ、なんだかとってもおもしろそう!」
彼女の目に映るのは、巨大な羽。
「やめてっ!!」
死を覚悟し、瞳を閉じたルーミの耳に聞こえてきたのは、とても聞きなれた声だった。
瞳を開け、その光景を見る。
そこに立っていたのは、弟。
両手を大きく広げ、ルーミを背中に庇うように立っている、ユーズだった。
そして、ルーミに振り下ろされている最中だった黒い羽は、ユーズの手前で停止する。
魔王の放った攻撃は、見えない壁に阻まれていた。ユーズの頭の数センチ上で、止まっていた。
当然ながら、ユーズに魔王の一撃を止められるような能力は存在しない。
その大きな力を止められるとすれば、それはその力を生み出した本人だ。
「何で・・・、」
魔王の顔は苦悶の顔に変わり、ユーズの頭上にあった黒い羽は、彼の元に戻る。
「何で・・・、」
ヨロヨロと魔王は近づいてくる。
「何で・・・、」
そして、咆哮するように叫ぶ。
「何でそこでオマエが出てくんだよ!オレはオレの母親みてェなそこのクソ野郎からオマエを救おうとしてんだ!オレはオマエのためにやッてんだ!!」
その言葉を受けたユーズは震えていた。
それが恐怖なのか、それとも他の何かなのかは、ルーミにはわからなかった。
だが、ユーズはこう言ったのだ。
「・・・もう、やめて。もう、僕のためにこんなことしないで。この人を、傷つけないで。」
その声は、泣いていた。
「何で、何でだ!何でオマエはそこまで言えんだ!オマエはそのクソ野郎の記憶なんてねェはずだろうが!!」
「そうだよ。僕にはこの人のことがわからない。誰かも知らない。だけど、それはスメルトさんだって同じはずだよ。だから・・・、」
「だからなんだッてんだ!オレがオマエに会ったとき、オマエは昔のオレと同じことを言ッたんだ!オレがあのクソみてェな母親に心を支配されてる時と同じことを言ッたんだ!!」
「確かに僕は言ったかもしれない。だけど、同じ気持ちかはわからないじゃないか!僕は、この人についての記憶がないよ。それでも、この人が大切な人だったってことはわかるよ。いなくなってほしくない人だってことはわかるんだよ!」
「オレが、間違ッてたッて言うのかよ。」
ユーズは、コクリと一回頷いた。
「ふざけんなよ。オレが間違うはずねェだろうが!!」
「間違ったっていいんだよ!生き物はみんな間違うんだよ!仕方のないことなんだよ!それをどう取り戻すかが大切なんだよ!」
ユーズは、だから、と言葉を一度切ると。
「まだやり直せる。ここで止まれば、やり直せるんだよ!」
魔王・・・スメルトは、顔を俯けると。
「ふざけんな、ふざけんな、ふざけんじャねェ!!」
その言葉を聞いて、ルーミはボロボロの身体に鞭を打って立ち上がった。
「ふざけてんのは、お前だよ。俺がどんなに傷つけられようとかまわない。だけどな、いい加減返してもらうぞ。ユーズの記憶を!!」
「もォ、いい。オレは、オレ自身の理由で、勝手にやらせてもらうぞ。」
もはや、スメルトはただの機械だ。
理由なんてわからない。ただ自分がそうしたいからする。
ある意味絶対的強者・・・魔王の言葉だった。
今度こそ、ルーミを叩き潰すために、ユーズを避けるようにして、四枚の羽が襲い掛かる。
その時だった。
ユーズ、ルーミとスメルトの間に、巨大な赤い炎の柱が現れた。
その炎は、スメルトの羽をも燃やした。たまらず羽を戻してしまう。
そして、その炎がかき消えたかと思うと、その中心に立っていたのは、額に二本の角、紫のゴスロリ衣装、片手に閉じた状態の日傘を持った、
「やあっ!久しぶり、ルーみん!」
村を滅ぼした元凶だった。
さあ、主人公補正vs.主人公補正の戦いが始まるぞ・・・




