第二十八.五話PART2 逃走者の末路
先週は一話だけで申し訳ございません。
今回こそは・・・と思ったのですが、ストックが足りないため一話のみとさせていただきます。
落下したユーズは、気が付いたら明るい場所でひっくり返っていた。
ぼやけた視界の先には、四角形の穴とそこに続く梯子があった。恐らく、あそこが箱の底面だったのだろう。しかも、今いる位置と箱の穴はかなり離れていた。では何故落ちたときに背中が痛くならなかったかというと、パンパンに綿を詰めた袋の上に落ちたからだった。
どうして箱の下にこのような仕掛けがあるのか、と考えながら、視界が戻ったユーズは立ち上がると、そこに広がっていたのは、部屋・・・というより大きなリビングだった。
壁の表面は薄いベージュを塗った煉瓦造りになっていて、床はよくわからないが木で出来ているようで、薄っすらと顔が表面に写るほどピカピカに磨かれている。
リビングの中央には、この部屋と同様に円形のテーブルがあり、その周りにイスが四つ置かれている。
テーブルの向こう側にはまっすぐな廊下が続いていて、そこには左右三対となるように扉があった。
「ここは・・・どこ、なの?」
「こんな場所、兄ちゃんの部屋の下にあったっけ?」
「なかったはず、よね?」
戸惑う二人の耳に、カチャリ、という音が聞こえる。
見ると、テーブルの向かい側にある廊下の、一番手前の扉の取っ手が回っていた。
見知らぬ場所、そして修行(という名の地獄)を乗り越えてきたアンとユーズは、すぐさま臨戦態勢を取った。
緊張感が走る。
ユーズはゴクリと喉を鳴らした。
扉を開けて出てきたのは、
「な、なんで、お前らがここにいるんだ?」
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「作業部屋」から出てきたルーミを待っていたのは、質問の嵐だった。
ここはどこか、何故ここにいるのか、どうして朝からいないのか、など、矢継ぎ早に尋ねられたため、一旦落ち着こうと、リビングで話し合うことになった。
「・・・で、ここは一体どこなのよ、お兄ちゃん?」
「あー、ここはサーガの魔道具の中だ。」
サーガは、〝原初〟の悪魔であり、研究者であり、最も残忍な悪魔と呼ばれている。
その理由は、彼の探究心にあった。
彼の探究心は、とにかく異質。知りたいと思うことがあれば、とことん調べつくす。一度人体について探究しようとすれば、何千何万もの人々を虐殺するし、魔法について探究しようとすれば、たとえ何千年かかったとしても真理を見つけるまで止まらない。
そんな彼が探求心を持ち、研究したものの一つが、魔道具である。
魔道具とは、魔法が使えぬ者でも、魔力の続く限り一種類のみの魔法を行使できるという代物である。
「属性魔石」という、魔力を流し込むと火の属性なら蝋燭程の火が、水の属性なら手ですくえる程の水の出るものが存在する。それを行使したい魔法の象徴たる基盤に組み込み、一種類のみ魔法を設定し、魔力回路を構築することによって、魔道具というものが出来上がる。
象徴と言っても、そこは魔道具製作者の意志によって変わる。人を傷つけたいと思ったらナイフや剣に。水の魔法をより強力にしたいというものであれば、おわんや水瓶に。
近年では、魔力を用いぬとも、魔力の結晶である魔石を魔道具の魔力回路に組み込むことによって、使用することのできる魔道具が開発され、主に実用されている。
「この魔道具は空間属性の魔道具で、この場所は異空間にあるんだよ。で、現実世界とこの異空間を結ぶ扉のような役割を持っているのが、この魔道具本体の宝箱。」
「ふーん。つまり、お兄ちゃんはこれを私たちに隠した上で、一人でここに潜んでたってことね?」
ルーミの身体がギクリ、と固まる。
「いやいやいや、べべべ別に一人で籠って隠れようとか思ってないよ!?ただ、『闇ノ渦』の中がどうなってるのかなーとか、凄い量の何かが入ってたから整理した方がいいかなーって思っただけで!!というか、お前らもここにいるってことは、お前らもサボったってことなんじゃないのか!?」
変な汗を出しながら、妙に早口で弁解するルーミ。
そして痛いところを突かれたために、黙り込んでしまうアンとユーズ。
この傷の抉り合いには、誰一人として得をしない。
よってユーズが先陣切って、話の話題をそらす。
「そういえば何を整理してたの?」
「ああ、ええと・・・、」
そう言いながら、ルーミは空中に黒い縦の渦のようなものを出現させる。
すると、その中から、鉄製の手袋や刃先のない剣、琥珀に花が入ったお守りなど、様々な道具が出てきた。
それぞれ、性能を確認するように、ルーミは「解析鑑定」していく。
「・・・アン、ちょっとこれ持ってくれ。」
そう言って、ルーミがアンに渡したものは、先がピンクのハートで出来ている、魔法少女の使うようなステッキだった。
「これ、一体何?」
怪訝そうな顔でアンが尋ねるが、
「まあまあ、いいからボタン押してみろって。」
悪いことでも企んでいるかのようにニヤニヤしている兄を見ると、嫌な予感がしないでもないが、とりあえずアンは柄の部分にあるボタンを押した。
「それで、これは一体どんな魔法道具なの?」
「これはな・・・、」
尋ねるユーズに、答えようとしたルーミだったが、その言葉が止まる。
アンの持つステッキから、突然眩い光が溢れ出し、彼女を包み込んだ。
そして光が収まった時、そこに立っていたのは・・・
「あるときはナーヴァ家長女、あるときはユーズの姉、またあるときはお兄ちゃんの妹。しかしてその実体は・・・アンーフラッシュ!!愛の戦士キューティーアンさ!」
魔法少女のような恰好をした、愛の戦士キューティーアンだった。
「魔法少女なりきりステッキだ。ステッキを持ってボタンを押した者を、空間魔法で一瞬にして変身させ、命魔法で身体を強制的に操り、ほぼ強制的に魔法少女になれてしまうという代物だ!」
「・・・???????」
ドヤ顔で言い放った兄の言ったことと、姉の現状が理解できず、頭の上に?を浮かべまくるユーズ。
そしてその手を握ったのは、
「大丈夫。絶望を感じることはないわ。いつでも終焉と共に、破壊と再生があるのだから!!」
イスから転げ落ちて、腹を抱えて笑うルーミ。
状況についていけず、思考停止したユーズ。
魔法少女の真似をしながら、思考停止状態のユーズに手を握ったまま話しかける愛の戦士キューティーアン。
現場はまさに、カオスだった。
・・・
・・・・・
・・・・・・・
魔法少女の使うようなステッキ型の魔道具に内蔵された、魔石の魔力が切れた。
それは、愛の戦士キューティーアンから少女アンへと戻ることを意味していた。
この魔道具、一つ欠点がある。
それは、外は強制的に操られても、内は意識があるということだ。
身体の主導権を取り戻したアンに、今までの出来事がフラッシュバックする。
アンの周りに拳大の閃光がいくつか現れ、放たれる。
無差別に。加減なしで。
怒りと羞恥で赤くなった顔のアンは、止まらない。
「なぁぁぁぁにさせてくれんのよォォォぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「ストップ!アン、ストップ!!部屋は壊れないだろうけど、俺達が壊れるぅぅぅぅぅ!!」
止まらない。止まらない。止まらない。
ルーミとユーズはなんとか光線の雨を避け続け、宝箱へと続く梯子を上る。
「待ぁぁぁぁてぇぇぇぇぇ!逃がすわけないでしょうがァァァぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
下から、元魔法少女の怒声が聞こえるが、それに構わず、宝箱の蓋を開ける。
そして。
そして。
そして。
そこに待っていたものは、
「おお、久しぶりじゃのう。ルーミ、それにユーズも。イリスから聞いて来てみれば、こんなところにおったとはのう。超驚愕、超不思議じゃ。」
捕獲者。
「さあて、修行を再開しようかのう?超・超・超地獄級でのう。」
顔が青ざめていくのが、ルーミには明確に感じられた。
逃走者、捕獲者により確保。
よって勝者、捕獲者。
アンの魔法少女を書くときに、真っ先にイメージしたのが、何故か「ドラえもん」の魔女っ娘しずかちゃんという話でした。
そしてその後も、キューティーハニー→おじゃ魔女→まどマギ→魔法少女サイト→オブ・ジ・エンド→セーラームーン→プリキュアという謎な順番で頭に浮かびました。
私の脳は古い→鬱→古い→ニチアサ番組となっているのでしょうか?
不思議です。




