第二十八.五話PART1 逃走劇の幕開け
本編をお楽しみにしている皆様、そして二話同時投稿を期待している皆様。
そんな人はいないかもしれませんが、謝罪させていただきます。
申し訳ございません。
っというわけでー!シリアスにコメディをぶっこんでみました。
修行が辛すぎた。
もう嫌になった。
故に。
『神樹シドラ』内部。
逃走者ユーズは爆走していた。
命と雷の合成魔法、身体強化。目でギリギリ追えるくらいの、本気の逃走だった。
途中でフィスィノシアの部下である『天使兵』と呼ばれる、どう見ても人間の人達にバッタリ会うことがあったが、全て「独裁者」で会わなかったことにしておいた。
魔法を使う時間にも限りがある。
魔法を使うために消費する魔力が切れるのだ。
なのでユーズは、魔力が限界を迎える前に隠れることにした。
兄の部屋に。
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捕獲者アンは探していた。
逃走者ユーズ。そして、朝から姿が見えない失踪者ルーミを。
かくいうアンも、一人だけで地獄に放り込まれるのは嫌なので探しているだけなのだが。
アンは樹を刳り貫くように造られた廊下を歩く。歩いていると十字路に差し掛かった。
その時だった。
アンの前を突風が吹いた。
正確には、風のように走るユーズ。
捕獲者が逃走者を捕捉した。となれば行うことはただ一つ。
「逃がさないッ!」
十字路を左に曲がると、突き当りに扉があり、ユーズはその中へと入っていった。
アンはそれを見るや否や、扉を突き破る勢いで飛び蹴りをかました。
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ユーズはルーミの部屋(フィーに使わせてもらっているだけ)に入ると、即座に扉にカギを掛け、息を整えるために、隣に大きな宝箱のようなものがある椅子に座った。
その時、ゴォン!!と、扉の外に、何か大きなものが思いっきり叩きつけられたような衝撃と音が聞こえた。
恐る恐る扉を開けてみると、そこには右膝を抱えて悶える、姉の姿があった。
「・・・だ、大丈夫?」
「い・・・いたくなんかないッッ!!」
言葉通り、痛くなさそうにヒョイっとアンは立ち上がる(涙目で)。しかし、やはり痛いようで右足を浮かせ、バランスをとるようにユーズの肩に掴まる。
「・・・姉ちゃん?」
「これは肩に手を乗せてるだけ!肩に手を乗せてるだけだからーっ!!」
それ以上、ユーズは何も言わなかった。
肩が重いな、と感じながらも、姉を先程まで自分の座っていた椅子に誘導する。
すぐ椅子に座ったアンは、
「さあ、捕まえたわよ、ユーズ!さっさと私と一緒に地獄に来なさいっ!」
捉え方によればプロポーズと受け取れないこともないこの言葉。更に言えば、片足負傷中の捕獲者と、少し休憩済みの逃走者。どちらが勝つかと言えば、答えは明白である。
それを理解しており茫然として立っているユーズは、満足気な表情で、右足を浮かせるように足を組んでいる姉を見て、どうしようか、と悩んでいた。
「ちなみに、何で姉ちゃんはここにいるの?」
「アンタたちを捕まえるために決まってるじゃない。っていうかお兄ちゃんは?」
「ここにもいないよ。そもそも姉ちゃん、修行は?今日は魔法の基礎知識学をやるとかって言ってなかったけ?」
「・・・。」
露骨に目を逸らすアン。
「つまり、僕と兄ちゃんを捕まえるっていう理由を作って、修行をサボって来たってこと?」
「ま、まあ、そう取れなくもなくもないということがあるかもしれない可能性はなきにしもあらずかもしれないことがないかもしれないということはないということね。」
つまり、そういうことだった。
ユーズがはあ、とため息を吐いた時、地獄の日々の中で獲得した「危険察知」というスキルが発動した。その名の通り、危険が迫っていることを察知することが出来るようになる能力である。
「やっ、やばいッ!」
「え、なに?」
「隠れないとッ!」
「え、えっ!?」
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(不覚でしたー。)
復讐者イリスは走っていた。
修行が始まるときに、ユーズの「独裁者」で動きを止められて逃げられたためである。
イリスはオルシオと同じく天狗族である。天狗族とは天使族が狗に受肉し、人化した種族である。性質は天使族とさほど変わらず、天使族には、精神生命体であるため精神を守るための壁が強く、精神攻撃があまり通じないという性質がある。
つまり、余程の全力でない限り、主に精神を操る命属性の「独裁者」ではイリスを従わせることなどできないはずであったが。
(まさか、あんな方法で止められるなんてー。)
ユーズの取った方法は、心のガードを一瞬だけでも崩して、そこに「独裁者」の催眠をねじ込むというものである。
つまり、
『さあ!修行を始めましょうか~!』
『・・・あ!そういえば、さっき兄ちゃんがイリスさんのためにケーキ作るっていってたよ!』
『えっ!本当ですか~!?』
『今だーッ!!』
『あっ、しまっ!』
こういうことであった。
(あの後、動けないと分かっていて、アンちゃんも居なくなりましたからねー。絶対に、逃がしませんからねーっ!!むっ、なにやら気配がっ!)
イリスはユーズの気配を感じ、十字路を勢いよく左に曲がった。
そしてその勢いのまま、突き当りの部屋へと突撃していく。
バァン!!という激しい音とともに、扉を開ける。鍵などはかかっておらず、勢いに任せて開けたような感じだ。
そしてその部屋には誰もおらず、何の気配もしなかった。
「あれ?おかしいですねー?確かに気配はしたのにー??窓から逃げたなんてことないでしょうけど、他のところに行っちゃったんですかねー?」
そう。この部屋が位置するのは、『神樹シドラ』でもかなりの上層部。よって、窓から逃げるなんてありえない。しかし、
「んー。でも窓から逃げれないような修行はしていないですし、念のため調べてみますかねー。」
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イリスが風魔法を使って浮遊しながら窓の外に消え去ってから、少し後。
椅子の横に置いてあった、海賊の使う宝箱のような巨大な木箱の中で、
「(行った、の?)」
「(うん。行った、と、思う。)」
逃走者に早変わりした捕獲者と純粋な逃走者がヒソヒソと話しながら隠れていた。
流石に箱の中で立つことはできず、座ったままだったが、座った子供二人が入っても少しは空きスペースが出来る程の巨大な箱だった。それでも入った側としては狭く感じる程度なのだが。
「なら、狭っ苦しいし、もう出ましょう?」
「そうだね。」
アンは体を立たせようとしつつ、箱の蓋を押した。
しかし、
「・・・。」
「どうしたの?」
「どうしよう。どうしよう。どうしよう!」
暗くてよく見えないが、ユーズの耳にアンの焦る声が聞こえる。
「どうしたのって!」
この時、不吉な予感がユーズの頭をかすめた。
そしてその予感は、見事的中することとなる。
「箱、が、開かない、のよ。」
・・・
・・・・・
・・・・・・・
「「・・・。」」
巨大な木箱の中で、逃走者達の心は沈んでいた。
ユーズは、箱の蓋が開かないため暗くて狭い空間に二人っきり事件発生から、かなりの時間が経っていると感じていた。
何故なら、出られないと分かった瞬間、姉の箱に対する暴力と大声の嵐。暗いため適当に殴っているのか、自分にまで被害が及び、大声を出されると狭いため、耳が痛くなる。更には、身体強化の魔法を使ってもびくともしない。
そんな時間が続いたため、ユーズもアンも心身ともに疲弊していた。
「もういい。」
アンはふと呟いた。
「全部光魔法で吹き飛ばす!!」
「ちょ、待って待って!姉ちゃんはともかく僕まで吹っ飛ぶ奴だよね!?」
「だから、何?」
「だからじゃないよ!?待ってって!!」
杖なしで魔法を構築し始めるアン。それを慌てて止めようとするユーズ。
その二人が狭い空間でもみくちゃになるほど暴れまわった結果。
カチッ、という枠の中に何かがピッタリと収まるような音がした。
直後、奇妙な浮遊感に襲われていると感じたら、落下が始まっていた。
どうでしたでしょうか。
お楽しみいただけたがいらっしゃるなら幸いです。
お読みいただきありがとうございました。




