第二十七話 騒乱の始まり
本日は二部同時投稿。
こちらは二部目です。
「・・・で、何でテメェはこんなトコに居んだァ?」
(ホッ、良かった。悪い人じゃないみたいだ。)
『魔の大森林』のとある場所で、ユーズは先程出会ったスメルトという少年と話していた。
ルーミと同い歳に見えるその少年の髪は黄金色で、その髪をかき上げ額を隠すように額あてのような布を当てている。目つきは悪く赤い瞳は見たもの全てを威圧するかのようだ。
最初はその目つきとどことなく敵意を持った雰囲気で、悪人かとユーズは思ったが、話していくと特に何もせず、質問をするだけだった。
「えっとね、フィーさんから自給自足してくるのじゃー!って言われてね。」
「そうか。」
先程からこの調子だ。
ユーズは事情聴取でも受けるかのように質問を返しているが、スメルトは特に興味を示していないように見えた。
そこでユーズは自分から進んで話すことにした。
「なんでスメルトさんはこんなところにいるの?」
スメルトは少し考えた後、
「ババァに会いに来たからだ。」
「ババァ?」
首をコキコキと鳴らした面倒くさそうに、
「まァ、どォでもいい。テメェ、親とかは居ねェのかァ?」
「・・・うん。いないよ。」
何かを察した様子で、スメルトは質問を続ける。
「・・・他に家族は居ねェのか?」
「あっ!それはいるよ!兄ちゃんと姉ちゃんがね!!」
そのユーズの明るい様子を見て、少しスメルトは安堵した雰囲気になった。
「その・・・兄はどォいうヤツ何だ?」
しかし、その雰囲気はここから一変することとなる。
「うん!えっとね、兄ちゃんは・・・」
それからユーズはルーミのことを細かく言って言った。
ルーミのすごいところ。
ルーミの良いところ。
ルーミを尊敬するところなど。
「・・・ってことぐらいかな!」
「そォか。じゃあ、最後になァ、テメェはその兄に逆らえるか?」
「・・・う~ん。出来ない・・・かもしれない。いつも迷惑かけちゃってるしさ。」
スメルトの表情が暗くなっていくのを、ユーズは気づかない。
「・・・そォか。なら、オレが救ってやるよ。」
スメルトがユーズの頭に手を当てると、
特殊能力発動
ユーズの意識はそこで途切れた。
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ルーミは『魔の大森林』内を疾走していた。
数分前、シドラからルーミへと「思念伝達」が届いていた。
その内容は、
〝九罪王〟が攻めてきた。そして、ユーズが〝魔王〟と共にいる。とのことだった。
「一体どういうことなんだ!何が起こってるんだ!!」
ルーミは〝魔王〟その言葉を聞いてもユーズの元へ行くことを諦めなかった。
むしろ、より早く行こうとした。
アンのことも気がかりだ。
しかし、自分の力じゃ二人同時に救うことは不可能だ。そのことをルーミはよくわかっていた。
だからこそ早く。
恐怖などそこらへんに捨てておけ。
少年は家族を救うために走り続ける。
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『神樹シドラ』外部。
「不味いですぞ。こちらの戦力は天使兵が三百弱。今は何とかシドラ様の植物軍団で守っておりますが・・・。」
「・・・くッッ!」
いつものふざけた口調ではなく普通に話しているオルシオの焦りは目に見えるほどだった。
シドラもまた、拳を固く握り、苦悶の表情をしていた。
何故そのように焦っているかなど、聞くまでもなかった。
二人の瞳に移る光景は、あり得ないものだった。
波のように迫る、人間の手のようなものが何本も身体から生えたドラゴンのような魔物、口が完全に裂けてその間からは数百本もの歯をのぞかせているカバのような魔物、七色の光輪を背負った巨人型魔物、蜘蛛のような目と刃のようなヒレを持った空飛ぶ魚のような魔物、球体で全身に目玉がありそれらすべてから血と光線をまき散らす魔物など、他にも多数の統一感の欠片もない魔物達が西の大地を埋め尽くしていた。
さらに極めつけは、西の空をお覆いつくすほどの巨大な空中要塞。
それはまるで島がそのまま浮かんでいるようだった。
「こうなったら・・・俺が本気を出す。地上にいる全ての天使兵を下がらせてくれ。」
「ハッ!畏まりました。」
(不味い不味い。アンさんにはイリスを念のため向かわせたけど、問題はルーミ君の方だ。相手は〝魔王〟。正直協力したいところだけど・・・あのスメルトだしなあ・・・。フィー、早く帰ってきてくれよ。)
「準備が完了いたしました。」
そうオルシオが告げると、シドラの身体がかき消え始める。
「指揮権を君に移す。フィーが来るまで頼むよ。」
「畏まりました。」
そしてシドラの身体が完全にかき消えると、『神樹シドラ』が動き出す。
ドオッッッ!!!
という激しい音を立て、『神樹シドラ』の根が迫りくる魔物達の、生命の源である、魔核を貫いた。
『神樹』が動き始めた。
これより始まるは、一夜限りの騒乱劇。
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ドオッッッ!!!
『魔の大森林』に激しい音が鳴り響いた。
それにより、アンも森に起こっている異変に気付いた。
そしてアンの口から言葉が漏れ出る。
「なにが・・・起こっているの?」
その言葉は単なる独り言だった。
しかし、返答があった。
「ヒャヒャヒャヒャ、オレラが攻め込んでんだよ。ヒャヒャヒャ。」
「アン、タ、誰?」
下劣な笑い声。血のような赤い髪。ギザギザの歯。
すなわち、
「ヒャヒャヒャ、オレか?ヒャヒャ、オレは〝血鬼将〟ヘイグだ。ヒャヒャヒャ、って言ってもオマエみてェなガキにャわからねェか。ヒャヒャヒャ!」
背中から変な汗が出る。
漠然と、重圧や緊張がのしかかる。
声を発しずらい。
「アンタ、は・・・何しに来たの?」
訝しむアンの前で、男の唇が、より一層裂けたように見える。
狂的に、邪悪に、歪む。
「ヒャヒャヒャ、決まってんだろォ?オレはなァ、女をいたぶるのがダイスキなんだよ。ヒャヒャヒャ。だからよォ、精々ピーピー泣きわめいてくれよなァ!!ヒャヒャヒャ!!!」
音が飛んだ。
色彩がなくなった。
そう思った瞬間に、アンの身体は吹き飛ばされていた。
二十六話を長くし過ぎましたね。
二十七話が少し短くなってしまった。
あと、展開急すぎてすいません。
早くルーミのメインヒロイン出したいんですよ!!!




