第二十六話 修行!修行?修gy・・・
先週はすみませんでした。
今回の話は時間や人物がコロコロ変わるでそこんとこご了承ください。
今日は二部同時投稿。
こちらは一部目です。
修行三十日目(太陽が一回昇ったら一日とする。)
「ほ~れほれ!あと十周じゃぞ~!」
「ぜえ、ぜえ、はあ、うっ、はあはあ。」
三兄妹は『神樹シドラ』の根元の周りを走っていた。
この三十日間の午前中(太陽が真上にくるまで)、三人は走って、走って、走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走り続けた。
一周明らかに十kmはある『神樹シドラ』の周りを。
それだけ走れば当然吐き気を催す。というか吐く。
しかもその後はすぐに昼食だ。吐き気の収まらない状態で食べられるはずなどないが、なにせフィスィノシアは〝自然〟を司る魔王だ。自然と自然の恵みを大切にする。それ故に、食事の時間は地獄だ。吐き気を無理矢理抑え込んで食べる。
そして午後(陽が沈むまで)は、懸垂、腕立て、腹筋、ケラヴノウサギ(魔物)跳びなどの体力づくりがメインのメニューばかりだった。しかも、目標を達成できなければ、容赦なくフィスィノシアに雷魔法された。
そして夜は倒れ込むようにして(実際倒れて)寝る。
そんな辛いサイクルを毎日欠かさず守り、続けた。いや、続けさせられた。
走って鍛えて走って鍛えて、そんな毎日を続けるうちに、身体には限界が訪れる。筋線維が切れ始め、関節からは鈍い音が聞こえ、身体は重く動かなくなっていった。しかし、それでも良かった。休めると思ったから。ならば何故、毎日続けることができたのか・・・いや、出来てしまったのか。
答えは、フィスィノシアの命魔法や回復薬によって治されてしまったからだ。
走らせ続けられ身体に限界が来ようとも治される。
それはもう、地獄としか言い表せなかった。
しかしそれは、始まりでしかなかったのだった。
「さあ!修行の第二段階と行こうかのう!その内容は主に稽古じゃ!超がんばるのじゃぞ!!」
そのフィスィノシアの宣言により、更なる地獄をルーミ達は見ることとなった。
そしてさらに三十日の月日が経った。
修行六十日目
この三十日間は、最初の三十日間よりも地獄だった。
午前中は最初の三十日間のメニューを圧縮し、午後は稽古を立てなくなるまでしたり、生命の源である魔力を倒れるギリギリのラインまで使ったりと、とにかく辛い日々だった。
何度も、何度も、何度も、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も休みたいと心から願った。
願わなかった日はないというくらいに。
夜は寝れているし、休めたのでは?と、思ってフィスィノシア達は稽古をつけていたのだろう。
しかし実際は違うのだ。ベッドに倒れ込んだと思ったら朝が来ている。そんなことを休んだに入れていいのだろうか?
だがフィスィノシア達はそんなことは気にしない。
そんなある日のこと。
「さあて!お主ら、今日からは『森』で自給自足生活じゃ!時間は無制限でのう。異論は超認めぬからのう、超がんばってくるのじゃぞ~!!」
修行六十一日目。ルーミ、アン、ユーズ。魔物の巣窟『魔の大森林』にて、水、食料なし、更には制限時間もなしのサバイバル生活開始。
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(もう!ほんっとーにっ!フィーちゃんいい加減にしてよッッ!!)
魔物の蔓延る『魔の大森林』で、その場所には合わないような少女が心の中で叫んでいた。
アンナベラ=ナーヴァ。
紅葉色の見えそうで見えないラインを追求したワンピースを着て、恥ずかしくて短パンを履くという何とも矛盾している格好をし、赤毛を三つ編みにして動きやすくしている少女だ。右手には彼女の身長の半分ほどの杖が握られている。
その少女は六十一日前に同じく森に入り、兄と弟、三人がかりで瞬殺されたというトラウマを持っているため、身を低くして歩いている。
そこら辺の判断ができるようになったのは、単純に少女が一歩大人になったというべきか、それとも地獄のような日々の中で自然と覚えていったというべきか。
もう一度言うが、アンは三人がかりでウツボカズラのような植物系の魔物に瞬殺されるというトラウマを持っている。
そしてそのウツボカズラがアンの前に現れる。
考えるより先に足が動いた。
立ち向かうという選択より逃げるという選択が勝った。
故に、アンは全速力でその場から離れる。
この六十日間、毎日走っていたので、アンの走る速度は上がっている。しかし相手は魔物。人間とは違う化け物。
そしてここは『森』。真っ平らなグラウンドでなければ草原でもない。
故にアンは盛大につまずいた。
いきなりトラウマと遭遇したことによってパニック状態になっていたことにも原因はあるが、足元の木の根の確認がおろそかになっていた。
しかし、幸か不幸か、アンが転ぶことはなかった。
何故なら、つまずいて転ぶ瞬間、ウツボカズラのツルがアンの脚を掴み、地面に接触するより早く上空へと持ち上げた。
結果的にはアンが転びそうになったところをウツボカズラが助けたと見てもおかしくはないが、パニック状態のアンはそんなことお構いなしだ。脅威は去っていない。
故に彼女は、本気で、全力で、手加減など考えず、思いっきり、無意識に修行の成果を発揮する。
上級魔法 残酷な光線
魔法には階級が存在する。
下級、中級、上級、そして一番上が超級と言われている。
アンが六十日間で会得したのは上級まで。
つまり、彼女は自分の使える最上級の魔法を放ったのだ。
杖から百以上の光が放たれる。
それらの光は、遮蔽物などお構いなしに一直線に突き進む。
思わず目を閉じてしまうような激しい閃光が止んだ後、その場に残ったのは、穴だらけの地面と、同じく穴だらけで原型が何だったのかさえ判別不可能な植物だけだった。
そしてアンは力魔法で浮遊しつつ、その場に降り立った。
しばらく放心状態になっていたが、
(ハッ!こんな時こそお兄ちゃんから教わった女の子だけが使えるという最強呪文ッッ!!)
アンは片目を閉じ、下を少し出して、頭をコツンと叩くような動作をしながら、こう言った。
「てへぺろ♡」
その場には何かの残骸と無数の穴の開いた地面、そして、一人の少女のみ立っていた。
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『魔の大森林』アンとは違う場所にて、額に黒い宝石をつけ紺色のパーカーを羽織った、一見人間に見えるが半悪魔族の少年が不敵な笑みを浮かべていた。腰には、新しく創り出した刀を提げていた。
ルーミ=ナーヴァ。
〝九罪王〟第九位である〝嫉妬〟エンヴィーから家族を守るため、〝原初の闇〟と契約したナーヴァ家長男である。
(クックックッ、フィーのアホロり魔王め!俺には『闇の渦』というチート技があることを忘れたか!!水も食料もこん中に入ってるんだよ!!)
そこまで考えて、とうとうルーミは笑いをこらることができなくなってしまった。
「ハァーッハッハッハッ!!」
その笑い声は『魔の大森林』に木霊した。
その声に反応するかのように怪物たちが動き出す。
異変を感じ取ったルーミは、自分が何をしたかすぐに理解した。
何故なら、そこには、ハエトリソウ、ネペンテス、サラセニア、モウセンゴケ、ムシトリスミレ、ウツボカズラなど、地球の食虫植物によく似た植物系魔物たちが迫っていた。
そしてルーミの声は、笑い声から叫び声へと変化した。
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『神樹シドラ』最上階層、『自然の楽園』にて、フィスィノシアとシドラがガーデンテーブルに向かい合って座っていた。
一見すればカフェのテラスでお茶をしているカップルようにも見えるが、兄と年の離れた妹にも見える。
そんな二人は、サバイバル生活中の三兄妹について話していた。
「それで、三人の様子はどうなっておるのじゃ?」
フィスィノシアは〝魔王〟とはいえ、地球でいう北海道約十二個分の『魔の大森林』の全てがわかるわけではない。
しかし、シドラは独自のある方法を使うことで、『魔の大森林』の状況を知ることができる。
フィスィノシアは〝魔王〟という立場に立っていながら、『魔の大森林』の守護者統括。
本当の支配者はシドラである。
「う~ん。ちょっと皆やりすぎちゃってるかな。あ、ルーミ君は不正が発覚したから、超地獄級にしておいたよ。」
「うむ。まあ、それくらいが超妥当じゃろう。」
いくら『魔の大森林』とはいえ、入ってすぐに魔物が襲ってくるなど、余程不幸でなければあり得ない。そこのは必然的に、誰かかが糸を引いている。
それすなわち、ルーミ達を襲っている魔物達は、全てシドラによるものである。
「そういえば、シヴァ君達は何所へ行ったんだい?」
「少なくとも『魔の大森林』内には居るまい。まあ、カーリーは一か所に留まっていられない性格じゃからのう。シヴァはあ奴に付いて行ったのじゃろう。逆にあれだけ居ったのが奇跡じゃわ。超驚愕、超奇事じゃ。」
「シヴァ君達も二十日後の『魔王会議』に参加するのかな?」
「むう、正直言って、あ奴らはスロウスやスメルト以上に欠席回数多いからのう。ま、妾は出席するがのう!!」
フィスィノシアは大してすごくもないことをすごいように、(ない)胸を張って言った。
「わかったよ。じゃあ、その間は警戒を強めておくよ。あ、〝超〟強めておくよ。」
「うむ!超よろしく頼むぞ!!」
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そして、二十日後。
『魔の大森林』のある場所で、茜色のマフラーをした二振りの日本刀を持つ少年が、熊肉を焼いて食べていた。
ユーズ=ナーヴァ。
未来の記憶と特殊能力「独裁者」を持つ少年である。
辺りは既に暗く、焚き火が風でゆらゆらと揺れていた。
その焚き火の光は、ユーズともう一つ、別のものを薄っすらと照らしていた。
照らされていたのは一匹の熊。それもユーズの体の何倍もある巨大熊だ。
(はあ、まだ終わらないのかな。もう結構立ったと思うんだけどな。)
そんなことを思いながら手に持った熊肉を食べていると、何かが近づいてくる音がした。
妙なプレッシャーを感じた。
魔物の巣窟『魔の大森林』で二十日間も過ごしてきたが、こんなことはなかった。
全身から変な汗が噴き出る。
本能が警告音を発している。
まるで、〝九罪王〟エンヴィーと出会った時のような。
そして『それ』は現れた。
「何でこんなトコにガキなんかがいるんだァ?」
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『魔の大森林』近海の上空。
巨大な空中要塞『クスィラ』にて、紫のゴスロリ衣装を身にまとった少女が、大人でも吹き飛ばされるほどの強風に吹かれながら一歩たりとも動いてはいなかった。
そして少女は眼下に見える『魔の大森林』を見て呟く。
「さあて、オバサンを助けに行こっかなー。」
そう言いながら、手をグーっと伸ばす。
「アヒャヒャヒャヒャヒャ!アヒャヒャヒャ!オバサンって、ヒャヒャ、いくら〝九罪王〟サマでも、ヒャヒャヒャ、オレラのボスに、ヒャヒャ、ヒつれいッスヨ、アヒャヒャヒャヒャ!!」
そう笑いながら少女の隣で言うのは、血のような赤髪でギザギザとした歯の男だ。
「ちょっと笑い過ぎじゃない?ラスト隊〝血鬼将〟ヘイグちゃん?」
「ヒャヒャヒャ、ちゃん付けとか、アヒャヒャヒャヒャ!!」
ヘイグと呼ばれた男の声が、広い夜空へ響く。
「あ~あ、オバサンのイカれた部下とバカの魔獣軍団、引きこもりの空中要塞か~。戦力としてはいいけどメンドくさいな~。ホントなんでこんな仕事引き受けちゃったんだろ?」
少女は首を傾げて呟く。
しかしその声に反応するものはいない。
あるのは下劣な笑い声だけ。
魔王フィスィノシアが不在の『魔の大森林』には脅威が迫っていた。
脅威の正体は〝九罪王〟第七位の部下、第三位の魔獣軍団、それらを率いるはサーガ村を滅ぼした第九位。
つまりはエンヴィー。
陽の落ちた世界で。
第九位の軍勢と『魔の大森林』が。
激突する。
さあて!第二章も後半戦ですよ!!
ちなみにルーミ達は地獄の特訓のせいで少し壊れてます。




