第二十五話 出発
時間がなくて少なくなってしまい申し訳ありません。
『ルーミよ。お主、ポルトゥスへ行く気なのかのう?』
試すような、それでいて結論をすべて丸投げしたような言葉だった。
そんな言葉を投げかけられたルーミの腹は既に決まっていた。
『行くさ。メタトロンの言った言葉も気になるし、それに・・・俺はこの世界をよく知らないからな。』
おさらいするようだが、ルーミの思っている精神年齢は、『村上 仁』+『ルーミ』で五十三歳。しかし、ルーミの実際の精神年齢は十四歳である。つまりは、日本を基準とすると、中学二年生の男子である。
異世界故に、地理の教科書などない世界故に、未知の世界を冒険したいという探求心は少年を抑えることができなかった。
そのことに、ルーミは気づかない。
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という会話があった数日後。
サーガ紹介したルーミは、アン、ユーズと共に、『神樹シドラ』の根元に立っていた。
「それじゃあ、行くか!」
「「おー!!」」
三人の服装は特にいつもと変わらず、ルーミとユーズは護身用に新調した刀を、アンも杖を持っていた。
ちなみにそれ以外に持っているものはない。何故なら、闇魔法に『闇ノ渦』というものがあり、それに全ての荷物を放り込んでいるからだ。服装が変わらないのは、クモ助の糸は下手な鎧より硬く、軽く動きやすく、気温に応じて糸が伸縮するため暑くても寒くても着れるという便利な服だからである。
「それじゃあの。」
「お気をつけて~。」
見送り役を務めるのはフィーとイリス。
二人とも不思議なくらいに寂しいとか悲しいといった感情が表面上読み取れない。
「それじゃあ、何から何まで世話になったな。」
「なあに、良いのじゃ良いのじゃ。」
「じゃあな。」
「「ばいば~い!!」」
三人は仲良く笑顔で深い深い『魔の大森林』を歩いて行く。
(あの時、メタトロンから言われたからという理由も何故か世界を見たかったという理由もあった。だけど・・・、)
村を滅ぼした。
両親を殺した。
ユーズとアンに危害を加えようとした。
全ての元凶はエンヴィーだ。
そのため。
だから。
故に。
(エンヴィーが憎い。)
少年は右の拳を握りしめる。
復讐を果たすために。復讐をすることを誓う。
(・・・そういえば・・・昔、誰かに・・・。)
『過去のものの為に、今のものを捨てるな。』
それがどうした。
思い出した言葉も少年の心には届かない。
そう。届かない。
兄の少し後ろを歩く妹もまた別の思いを抱いていた。
(あの時、私が村に戻らなければ、お兄ちゃんは怪我なんてせずに済んだ。私がしっかりしないと。私自身が変わらないと。そうじゃないと、そうじゃないと、二人の荷物になる・・・。)
少女は変わることを誓う。
今、この時、少女がまた一歩、大人に近づき成長した。
姉の後ろを歩く弟もまた思いを抱いていた。
(あんな悲劇起こさせない。兄ちゃんも町のみんなもみんなみんな死ぬ。あんな悲劇起こさせてたまるか。僕が、僕が、必ず。未来を変えて見せる。)
幼き少年は過去になど囚われない。
今後、起こるであろう悲劇を変えるために。
未来を変えることを心に誓う。
復讐のために。
変わるために。
変えるために。
三人は、それぞれの思いを、誓いを胸に、未来へと歩いて行く。
ここから三兄妹の旅は始まるのであった。
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三人の兄妹たちが森へと消えていった頃、見送り役の二人は残されていた。
「あのまま行かせて良かったんですか~?」
「どういう意味じゃ?」
「警告しなくてよかったんですか~?」
少女は不敵な笑みを浮かべた。
「なあに、大丈夫じゃよ。どうせ、超早く帰ってくるじゃろうからのう。」
ここは『魔の大森林』。
世界一広いと言われているこの森。
では、何故『魔の大森林』という名が付けられたのか?
答えは簡単。
魔王フィスィノシアが治める森にして、町すら滅ぼすという凶悪な魔物たちの巣くう、超危険区域だからである。
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ルーミたちの前にはあり得ないような光景が広がっていた。
三メートルは超えるであろう巨大熊が、巨大なウツボカズラのような植物に、頭から溶かされているという光景が。
これが動物系の魔物であるなら良かったかもしれない。
ユーズの「独裁者」によって従えられたから。
しかし、これは植物系である。
故に負けた。
〝九罪王〟であるエンヴィーを退けたルーミであっても。
ここは『魔の大森林』。
世界一巨大な魔物の巣窟である。
結論から言うと、三兄妹の旅は終わったのであった。
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「と、いうわけで。どうじゃったかの?」
『神樹シドラ』の根元で、三兄妹は正座させられていた。ロリッ娘(?)魔王によって。
何故こうなったかというと、三兄妹はウツボカズラのような植物系魔物と出会った。
ツルで巻き付けられた。
そのまま来た方向に吹っ飛ばされた。
からである。
「さて、実力も超理解したじゃろうし、修行といくかの。超ビシバシのう。」
その幼女(?)の不敵な笑みに、三兄妹の背中には嫌な汗が流れるのであった。




