第二十四話 動き出す者達
「もう!そこは私のセリフでしょ~、サリエルちゃん。あ、今はフィスィノシアちゃんだっけ?言いにくい名前だね~☆」
女神(仮)もとい『神の番』。
流れるような純白の長髪。異世界ではまず見ることがないと思っていたチャイナドレスを着ている。その胸の部分は服の内側から艶めかしい盛り上がりが出来ており、一言で表すと刺激が強い。
『村上 仁』が死に、『ルーミ=ナーヴァ』になる前に白い空間で会った時から全く変わらない口調で、無駄に一言多い。
そして容姿だが、あの時は美人という印象しか残らなかった。逆に何故それだけだった?あれだけ特徴のある人物だ(主に胸)。なら、何で美人というイメージしか残っていない?その答えは、過去の記憶をまるでビデオの再生機能のように見れる「走馬灯」でも導き出せなかった。
「何しに来たのじゃ?」
フィスィノシアのその声には、少し怒気が混ざっていた。
ピリピリとした空気が流れる。
「そんなに怒らないで、フィーちゃん☆ま~た、小皺が増えまくっちゃうよ?」
ピキ、という音がフィスィノシアのこめかみ辺りから聞こえた。
「お主は、人を怒らせるのが超得意じゃのう。」
「だから怒らないでって~。私が来た理由は~そこのアホ面に信託を授けに来ただけだから☆」
キャピ、という効果音でも聞こえそうなウインクをしながら、メタトロンはアホ面を指さした。
再度苛立ちを覚えるルーミだったが、ある単語が引っ掛かったため、目をつぶり流した。
「信託?」
「じゃあ言うわよ?記憶力皆無の脳みそに焼き付けといてね☆」
メタトロンはルーミの言葉など聞こえていなかったかのように、話を続ける。
「ポルトゥスへ行け。それが汝の〝道〟とならん。」
話し方が変わった。先程までとは別人のようだった。
数秒の静寂が訪れた。
何を言っているのかルーミには理解ができなかった。
「・・・それは、どういう・・・、」
「じゃあ、まったねー☆アホ面とゆかいな仲間たち☆」
天使の気配が音もなくかき消え、再び静寂が訪れた。
ありったけ罵られた挙句、罵った奴は速攻で帰りやがった。
ブチッッ!!
何かが千切れる音がした。
「何なんだアイツはァァァあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!」
「何なんじゃあ奴はァァァあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!」
ルーミとフィスィノシアは同時に声を上げ、この場にいる全ての人の言いたいことを代弁し、絶叫し、地団駄を踏んだ。
少しの間それを続けると、息切れをしながら席に着きなおした。
「全く、本当に一体何じゃったんじゃ?」
「アイツは一体何者なんだ?」
ようやく落ち着いて、元の重い空気に戻ろうとした、その時、
「言い忘れてたことがあったー。」
再び音もなく、天使が降臨した。
もはや全員立とうともしない。敵意のある視線で睨みつけるだけだ。
「なんじゃ今更、超帰れ。」
先程のルーミと同じように、まるで聞こえてなかったかのように話し続ける。
「アンタにあげたその能力、タダでもらったとかいう愚劣な考えしないでね。」
明るい雰囲気が一変、冷たい冷徹な重い物言いになった。
皆が呆気にとられ、固まっているうちに、
「今度こそじゃあねー☆」
「あっ、逃げた。」
再び気配がかき消えた。
「「「・・・。」」」
少しの沈黙があった後、
「あー、超疲れたのじゃ。」
「同感。」
全員が心底疲れた様子だった。
少し休憩を取り、休んだところで元の空気に戻った。
「ルーミよ。お主の言っておった女神(仮)とは、メタトロンということでよいのか?」
「ああ、あの顔は間違いなくメタトロンだった。」
その言葉を聞くと、顎に親指を当て、少し考えた。
「むう、メタトロンには何故、異界の魂を呼び寄せるなんてことができるんじゃ?『神の空』にでさえ無理じゃというのに。」
「何で無理なんですか?」
ここまで無言で話を聞いていただけだったシヴァが口を開いた。
「魔力が足りないのじゃよ。この世界と向こうの世界の間の『時空の壁』というものに穴を開けるには。それこそ、妾を含めた『大天使』全員の魔力を使ってもじゃ。」
その言葉を聞いて理解したのか、シヴァは少し俯いて黙る。そして他も『大天使』の強大さを知ってるが故に同じように俯く。
しかし、ただ一人だけ、
(・・・『大天使』の魔力がどれくらいわかんないけど、無理だってことはわかった。)
皆が黙り切った空間で、再びフィスィノシアが口火を切った。
「ルーミよ。お主、ポルトゥスへ行く気なのかのう?」
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「あ~あ、暇だなぁ・・・。」
と、少女は呟いた。
彼女が歩いているのは、長く白い通路だ。
赤いカーペットが敷かれ、両側には人が四人入れるほどの円形の白い柱が等間隔に天井を支えていた。その天井からは光魔法が使われている魔道具のシャンデリアがぶら下げられていた。その廊下全体が鏡のように磨かれており、宮殿のような作りになっていて、強い権力を持っていることを感じさせる。
そのような廊下を堂々と歩くあたり、少女の権力が強いことがわかる。
白いフリルの付いた、紫のゴスロリ衣装。そして額には二本の白色の角がある。
少女の〝名〟はエンヴィー。〝九罪王〟第九位にして、〝嫉妬〟を司る〝王〟である。
そんな彼女がいつもの煌びやかな装飾をされた豪華な扉を開けようとしたところ、内側から大きく扉が開け放たれた。
中から出てきたのは燃えるような長い赤髪の男で、額からは艶のある朱色の角が一本生えていた。顔の右半分には大きな傷があり、右目に眼帯をしていた。背はとても高く、二mは軽く越しているようだった。硬派のような顔をしており、鋭い赤の瞳はそれだけで人を射殺せそうな程だ。
「わぁ!もう!ビックリさせないでよ~!」
「む。すまぬな。」
身長差が一m以上あるが、エンヴィーは物怖じなど一切せず気軽に話す。
「そんな顔だからいつも怒ってるように思われるんじゃないの?ちょっと笑ってみてよー。ラースおじさん。」
そうエンヴィーから言われ、ラースと呼ばれた男はニッコリと笑ってみる。
しかし、その顔はニッコリとは程遠く・・・、
「あ、ごめん。ボクが悪かったよ。」
「む。そうであるか。しかし、何をしに来たのであるか?」
彼はその鋭い瞳で彼女をじっと見つめる。
「あ~・・・ちょっと報告にね。『革命軍』の支部を潰してきたから!」
エンヴィーはニコニコと、頭でも撫でて欲しいかのように満足気になる。
しかし、見た目と同じように、ラースは少女の仕草に気づかない。
「ふむ。であるなら、今は入らぬ方がいいのであるぞ。」
なんで?と、エンヴィーが聞くと、
「プライドとティアマトが自分達の空間を作ってしまっているのでな。」
「あ~それで~。」
エンヴィーはラースが二人のイチャイチャに耐え切れず出てきたのだと思い、扉に入る気をなくした。
「む。それとプライドから伝言である。例の『空中要塞』の試運転を兼ねて、兵を率いて『大森林』へと攻め込み、出来るならラストの救出をして欲しいそうなのである。」
「ホント!」
明るい笑顔を見せ、エンヴィーは喜ぶ。
「ついでに神樹の枝も取ってきて欲しいのである。」
「は~い!じゃあ、行ってきま~す!!」
外見と同じような幼い明るい返事をした。
そしてエンヴィーはクルリと踵を返し、鼻歌を歌いながら来た道を戻る。
今までの話を聞いて、そして今までしたことを振り返り、
(でも・・・あんな『試作品』使ってあんなオバサンを助けに行くなんてめんどくさいこと、なんでやるって言ちゃったんだろう?あと、なんでこんなにモヤモヤというか、寂しい気持ちなんだろう?)
エンヴィーは数秒う~んと悩み、
「ま、いっか!」
と、結論を出し、再び鼻歌を歌いながら歩いて行く。
やっと第二章半分終わった~!
でもまだ第二章の半分って・・・もう「いせふん」が終わるところまで考えてあるのに。
終わる気しないなー。




