第二十一話 ヒマ人、またの名をユーズ
なんか調子乗って書いたら5000字超えてました。
ズルズルズルバクバクバクガシャガシャガシャガシャムシャバクゴクガリボリバリバリゴクリ
こんな効果音を見た、もしくは聞いたことがあるだろう。
例えば、ワ◯ピースのル◯ィ達の食事シーン。
例えば、ドラ◯ンボールの悟◯の食事シーン。
例えば、今目の前に広がっている、漫画ではない実際の光景。
そんな◯フィや◯空のような光景を生み出しているのは、〝魔王〟カーリー。
彼女は、俺の作ったラーメンを二十人前どころか五十人前食った上、大量の果物を追加で食べている。
「うみゃあ。うみゃあ。」
何故か名古屋弁の彼女ともう一人、
「こら!!カーリー!!食い過ぎだ!!フィスィノシアさんに失礼だろうが!!」
シヴァ。彼は〝魔王〟ではなく、ただの魔人らしい、さらにカーリーの保護者的立ち位置だとか。
「うみゃんだからいいじゃん!!それにシヴァ、フィーのことさんづけする。いみわかんない!!シヴァとフィー、としいっしょ!!」
え!?こいつら同い年なの?
そもそもこいつら何歳だよ!!
「う~ん。やっぱり、ラーメンもっかいたべたい。おかわり!!」
カーリーは無邪気な子供のようにラーメンを要求してくる。
「おまえは食い過ぎだ!!迷惑だろうが!!おれが作ってやるから、ちょっと待ってろ。」
そう言ってシヴァは何かを作り始めた。
数分後。
彼が作って持って来たのは鮭のムニエル。まるで日本の高級料理店のように鮮やかに盛り付けてあり、とても美味しそうで料理が光っているように見える一品だった。
余談だが、実はその料理、いつもよりも丹精込められて作られている。
理由は勿論、シヴァの、ルーミに対するライバル心。
長年(少なくとも千年以上)カーリーの食事を作り続け、うみゃあと言わせてきた彼は、カーリーの舌を一番満足させられるのは自分だと自負してきた。そしてそれこそが彼が彼女の隣にいられる理由だと、彼は思っていた。
もし、その理由がなくなったらどうなるだろうか。その座を取られてしまったらどうなるだろうか。
だからこそ、彼はその座を脅かすルーミにライバル心を燃やした。
もちろんそんなことをルーミが知るはずもなく、結果は、
「う~ん。ラーメンおかわり!!」
その言葉を聞いた時、彼の中で何かが砕け崩壊した。
次に彼の取った行動は、
「な、名前を教えていただけませんか?」
「え、ああ、ルーミ=ナーヴァです。」
「ルーミさんッッ!!敬語とかいらないんで、師匠と呼ばせてくださいッッ!!」
「は?」
シヴァがこのような暴挙に出た理由は、彼の頭の回転の良さにある。
まず、自分の作った自信作である鮭のムニエルがルーミのラーメンに負けてしまった。つまり、カーリーに必要とされなくなってしまうかもしれない、と彼は思った。
↓
なら、必要とされるにはどうしたらいいのか?
↓
答えは単純、ルーミのラーメンに勝てばいい。
↓
だったら、どうすれば勝てるのか?
↓
ルーミのラーメン以上の味を出せる料理を作り、カーリーに美味いと言わせればいい。
↓
どうしたらそれが出来るのか?
↓
美味しい料理を作るための修行をする。
↓
それをするためにどうしたらいいか?
↓
カーリーと一緒にいても、今のまま変われない。
↓
なら、彼女と離れる。彼女を一人にさせる。
↓
絶対に嫌だ。
↓
ならば、彼女と離れずに、かつ彼のラーメンに勝てるような修行をする。
↓
どうしたらその目的が達成されるか?
↓
例えば、米の品種改良。それは簡単に言えば、既にある米の品種と別の品種を合わせる、つまりアレンジすることによって、既にある米の品種より良い米を作るということだ。
なら、自分が彼と同じくらいの味を出せるようにしたうえで、その味にアレンジを加え、彼を超えればいいのではないか、とシヴァは考えた。
↓
彼と同じくらいの味を出すためにはどうしたらいいのか?
↓
彼女は美味しい物のある所に留まる性質を持っている。その彼のそばで修業し、教えを請い、その教えを盗めばいい。
↓
そしてシヴァの出した結論が、ルーミの弟子になるということだった。
※ここまでで1秒未満。
_____________
シヴァがルーミの弟子になり、数日が経過した。
『神樹シドラ』。その内部に存在する、魔王フィスィノシアの自室に、ある少年が寝転がっていた。
ユーズ=ナーヴァ。
ルーミ=ナーヴァの弟であり、特殊能力「独裁者」を獲得している九歳の少年である。
彼は、最近では日常になってしまった光景を目にしながらうなだれていた。
彼の目線の先にあるものは、例えるなら秘密の花園。または女子会といった、女の子(?)達がキャッキャウフフなどと言いながら、話したり戯れたりする、男子禁制の集まりだ。
なので男であるユーズは、完全に仲間外れになっていた。
彼は仲間外れにされているとはいえ、同じ部屋にいるわけなので、女の子(?)達の会話がイヤでも聞こえてしまう。
「ねえ、カーリー。」
「なに?姐さん。」
「なんでいつもシヴァくんと一緒にいるの?」
「そうじゃ、何故なんじゃ?超興味津々なのじゃが。」
「気になりますね~。」
「いっしょにいるから。」
「「「・・・。」」」
といった、恋バナのようで恋バナではない女の子(?)達の会話が。
ちなみに、何故カーリーがアンのことを姐さんと呼んでいるかというと、シヴァがルーミの弟子になった、少し後の話まで戻らなければならない。
シヴァがルーミの弟子になってから、シヴァはルーミに何度も料理について教わっていた(カーリーが一人ではない時限定で)。つまりシヴァがカーリーと共にいる時間が減った。
故にカーリーはというと、
『ウ~~~・・・。』
ルーミ→シヴァを獲った→だけど美味しいものくれる、というメリットとデメリットがせめぎあい、結果何もできず唸っているという状況に陥っていた。
そんな時にアンが、
『・・・どうでもいいけど、カァァァリィィィ、お兄ちゃんに何かしたら容赦しないから、ね?』
『ビクッ、・・・は、はい。』
その時の姐さんからは、能力でも魔法でもない〝圧〟を感じたとカーリーは後に語った。
そんなこんなで、その時完全に上下関係が決まったのであった。
話を戻そう。
現在、ユーズは退屈している。
理由は簡単、村は両親と共に消滅、姉であるアンは女の子(?)達とキャッキャウフフ中、残った兄であるルーミは弟子と共に料理開発中。つまり、構ってくれる人がいないのである。しかも、ユーズはヤンチャ系かおっとり系どちらかというとおっとり系で、知らない人と話すのは抵抗があったりする。
面倒くさい奴だと思われるかもしれない。でも、ユーズはまだ九歳。暇だったら暇としか言えないお年頃なのだ。
そこでユーズは『神樹シドラ』を探検することにした。
目的が決まったら即実行。ユーズは、ピンク一色の一見娼館の一室に見えなくもない部屋を後にした。
ちなみに、ユーズが部屋から出ていったのを、キャッキャウフフ中の女の子(?)達は、誰一人気が付かなかった。
ユーズは探検の途中、兄が構ってくれないかという淡い期待を抱いて、厨房を覗いてみた。
そこには、
「おおっ!!師匠!これが味噌という調味料ですか!!」
「うむ、これがあるだけで料理のレパートリーの幅が格段に上がるのだよ。」
キラキラと尊敬した目つきで、味を盗むという当初の目的をすっかり忘れたシヴァと、自分を尊敬した目つきで見てくれている人に、嬉しさを感じながらドヤ顔で教える兄、ルーミの姿があった。
ユーズはそれを見て、嬉しさ三割、悲しさ七割といった感じでその場を後にした。
ユーズは退屈といった感じで『光り苔』を照明としている廊下を歩いていく。
時折、何人もの人(?)と出会った。『神樹シドラ』にはフィーやシドラの他に、部下のような役割の人が何人も住んでいるようだった。
(うーん。こんなことしてる場合なのかな。あの夢の通り、〝聖人〟に進化?いや昇華だったけ?にならないといけないのに。)
ユーズの(心の中で)言うあの夢というのは、彼が、サーガ村消滅の日の前日の夜に見た未来の自分からのメッセージのことである。それが本当に未来の自分から送られたという確証はないが、結果的に兄と姉を救ったことになった。
(でも、僕があの日、あの夢を信じて、みんなを逃がせれていれば、みんなを救えたかもしれないのに、みんなが死なずに済んだかもしれないのに。ああなるってわかっていたのにっ。)
そんな罪悪感が少年の心を押し潰す。
後悔の念に苛まれる。
あの時死んでしまったみんなが、自分を恨んでいるんじゃないかと、恐怖を覚える。
あやまりたい。ごめんなさいと言いたい。そのうえで、償いがしたい。
だけど、その相手はもう、二人以外いない。しかも、その二人には謝ることができない。必要以上に未来の自分のことを言うのは、悪い意味で過去を変えてしまうかもしれない、と未来の自分から言われたからだ。だから、二人には償うことしかできない。
そのために少年は、もう二度と同じ失敗はしない、あんな未来をもう起こさせない、と心に誓う。
(そのためには、〝聖人〟になるまでの通過点、〝仙人〟にならないといけない。)
少年は、誓いを胸に突き立て、その誓い為のことをする。
(でも、『僕』は人間の限界を超えろ、としか言わなかった。そのために、僕はなにをすればいいんだろう。人間の限界を超えるためには、どうすればいいんだろう・・・。)
実は、ユーズ自身も〝仙人〟や〝聖人〟について詳しく知っているわけではない。だから、人間の限界を超える方法など、分かるはずもない。彼はまだまだ九歳なのだ。そのような意味不明な単語を並べられても理解が追い付かない。
よって、彼は、彼なりに答えを出した。
それは、
(まあ、強くなればいいってことだよね。)
という至極単純で、効果的な答えだった。
(だったら、一番強そうな人に教わるのがいいのかな?)
彼は数秒考えた。
その中で、名前を出された人々の心に(悪い意味で)刺さる言葉が使われたのは言うまでもなかった。
(・・・やっぱりオルシオさんかな?ちょっとヘンだけど強そうだし。)
この日、この時、この瞬間。
彼の、暇を持て余すための探検が、オルシオさんを見つけるための冒険へと変わった。
(ようし!オルシオさんを探すぞーーっ!!)
ユーズは、どこぞの海賊王になる男がワ◯ピースを探すような心構えで、オルシオを探し始めた。
しかし、彼は主人公補正がかかるような人間ではないし、幸運な人間でもない。むしろ不幸体質の人間だ。それも、朝飲んだ牛乳が腐っていて一時間以上トイレに籠り、遅刻寸前で焦って階段から転げ落ち、鳩の糞をかけられ犬の糞を踏み、車に轢かれ、無駄に軽傷だったもんだから学校に行かなければならなくなった挙句、一時間目が持久走でしかもテスト、その上轢かれた時に体操着を落とし鬼教師だったもんで学ランのまま走らされ疲労困憊な後、眠たすぎる社会の授業が昼休みまで続く、といったぐらいに不幸なのだ。
そんな人間に、全500階層以上ある『神樹シドラ』から一人の人を見つけ出すのは非常に非常に困難なもので、まるで怪人赤マントに一日で三十回以上遭遇して生還したり、夜空の星を掴むようなものぐらい難易度の高いミッションなのだ。
しかし、それも冒険の醍醐味だ、と少年は思いながら、探し続ける。
結果、少年がオルシオに出会えたのはそれから八時間後。完全に迷子になった後だった。
おまけ
ユーズ「結局、ユーズは今日何してたんだ?」
アン「・・・さあ?」
次回予告
「さて、本題に入ろうか。君の額の『黒い宝石』の秘密・・・というより、そもそもの正体について。」
ついに明かされるサーガの正体。それを知ったルーミは・・・
※次回、投稿できるか難しいです。




