第十七話 オーダーメイド
12月9日のアクセス数が、150アクセスだったので驚きました!
これからも宜しくお願い致します!
「で、何を隠してるの?お兄ちゃん。」
俺は今、数時間にわたり着せ替え人形にされた挙句、硬い木の床に正座させられている。なので俺の格好は、黒のメイド服だ。
周りにはアン、ユーズの他に、フィー、イリス、オルシオさん、シドラさんが立っている。ちなみにイリスが〝さん〟付けではないのは、それでいいと本人から言われたからだ。
めっちゃ恥ずかしい。
「ええとですね。アンナベラさん。」
俺は、恐怖のあまり敬語になっている。それほどの〝圧〟があるのだ。怒気という名の〝圧〟が。
「まあまあ、そこまでにしておくのじゃ。アンよ。」
なだめるようにフィーが言う。
「だけどっ!」
「それよりもそろそろ服を変えたらどうじゃ。超美人、超似合っているがの。」
おお!今度こそ助け船が来た!
確かに、俺もユーズも女装中だもんな(無理やり)。
俺は、着せ替え人形にさせられる前に着ていた服に着替えようとしたが、そこであることが疑問として浮かんだ。
この服は一体、どうやって用意されたのだろう、という疑問が。
「おお、そうじゃ。お主たちの服をおーだーめいど?してやれるのじゃが、どうするかの?」
オーダーメイド・・・なんでこの世界にそんな言葉が・・・?
「どういうことですか?」
そう質問したのはユーズだ。
まあ、そうだろう。俺は、この世界に来てからそんな単語は一度も聞いていない。いや、村では使われていなかっただけで、村の外では使われているのか?むう、やはりこの世界は謎だ。
「まあ、いいからついてくるのじゃ。」
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『神樹シドラ』の通路を、俺達は歩いていた。
並び順は、先頭がフィー、その後ろを三人並ぶようにして、俺、アン、ユーズ。同じように、シドラさん、オルシオさん、イリスさんが、一番後ろに並んでいる。
やっと落ち着いた時間が出来たので、俺が眠っている間のことを聞いてみる。
「俺はどれくらい眠ってたんだ?」
「ええと、お兄ちゃんが眠ってたのは、六日ぐらいかな?」
あまり覚えていないのか、アンはユーズに尋ねる。
「うん。それくらいだと思うよ。」
六日か。随分と寝てたんだな。
「大変じゃったぞ。妾が見つけた時なんてのう、全身超大やけどで超ヤバい状態じゃったし、至る所が超炭化しておったしのう。」
そんなにヤバかったのか・・・。
「まあ、妾の命魔法や回復薬がなかったら超死んでたかものう。超危なかった。」
そう言いながら、ハッハッハッ~、と笑うフィー。
笑いながら話す内容かよ!と俺は内心ツッコむ。一応助けてもらったので文句は言わないけど。
「そういえば、ティーはどこにいるんだ?」
俺がティーのことについて触れた瞬間、シーンと辺りに静寂が訪れた。
「その、ね。お兄ちゃん。ティーは・・・、」
アンが言いにくそうに、言葉を途切れさせながら言う。
「安心せい。ちゃーんと、お主たちの村と同じように弔ってやったわい。」
村と同じように、ということは、ティーはあの場所にいたということだ。ただ、俺が会っていないということは俺が気を失っている時だけだ。つまり、サーガとの契約の時と、最後のエンヴィーの一撃の後。どちらにせよ、ティーは、エンヴィーに戦いを挑んだということだ。
・・・そうか、弔ってくれたか。本当にお世話になりっぱなしだな。
という意味と、亡きティーへの思いを込めて、
「ありがとう。」
フィーは俺の思いを察してか、俺に背中を向けたままヒラヒラと手を振った。
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俺達が案内されるがまま、連れてこられたのは、巨大な部屋だった。当然、『神樹シドラ』の内部なので、床も壁も木で出来ている。
薄暗い部屋で、至る所に蜘蛛の巣が張られている。そこには蜘蛛がいて、常にカサカサという動く音がする。その蜘蛛は一匹一匹が、地球のタランチュラ並みの大きさだった。そのぐらい大きな蜘蛛が無数にいるこの部屋は、蜘蛛嫌いな人が入った瞬間卒倒しそうだ。
その部屋の中央には、巨大な『何か』が蠢いている。
先頭を歩くフィーが、その『何か」に話しかける。
『クモ助よ。超久方ぶり、超元気じゃったか?』
フィーの声は、頭に直接響く声だった。『ような』ではなく、実際に頭の中に響いていた。
感覚で言えば、サーガが俺に話しかけるときと同じようなので、慣れているためかそこまで驚かなかった。オルシオさん、シドラさん、イリスも同様に慣れているようだった。アンとユーズは、何が起こったか分からない、という顔をしていて、驚いているようだった。
《これは恐らく、「思念伝達」だと思われます。》
「思念伝達」?
《はい。希少能力の一種で、脳内で考えた思念の内、相手に伝えたい思念のみを伝えることができるという、利便性の高い能力です。ちなみに、この能力を使われた相手も、同様のことが行えます。》
ほうほう、つまり、自分が伝えたいと思った、頭の中で考えたことや話したことを相手に伝えられるということか。
ってことは、今の心の中の会話はフィーには聞かれてないんだな?
《はい。ルーミ様がフィスィノシアに伝えたいという思念がないのであれば大丈夫です。》
そして俺は、サーガとの会話を終えた。
フィーに話しかけられた、クモ助と呼ばれた『何か』は、百八十度身体を回すと、その顔をこちらに向ける。
俺は今まで、巨大な熊、巨大な猪、鬼の少女などと戦ってきた。どれも恐ろしい〝力〟を持っていた。だけど、俺の目に飛び込んだその光景は、今までに見たこともないような、恐ろしい〝姿〟をしていた。
その『何か』は、八つ目の八本脚、黒々としていて毛むくじゃらな、二、三メートルはある、途轍もなく巨大な蜘蛛だった。
ヤバいヤバいヤバい。何がヤバいって、見た目がヤバい。それに鳥肌もヤバいくらい立ってる。
『どうも!お久しぶりです!フィスィノシア様!』
話しかけられた巨大蜘蛛は、器用に八本中、前の二本を使って、ペコリとお辞儀をした。
この巨大蜘蛛も、「思念伝達」を使って話しているようだ。
・・・何というか、物凄い軽い感じの巨大蜘蛛だな。
『それで・・・今日はどんなご用で来たんですか?』
チラリと、八つ目で俺、アン、ユーズを見た巨大蜘蛛は、フィーに尋ねた。
『うむ。今日はじゃな、こ奴らに服をおーだーめいどして欲しいのじゃ。』
『こ奴ら・・・?』
巨大蜘蛛は、首を傾げた。
『おお、紹介しておらんかったのう。』
今まで俺達に背中を向けていたフィーが、こちらを向いた。
『黒のメイド服姿の童がルーミで、赤毛のおさげがアン、そしてピンクのドレスを着ている小さい方の童がユーズじゃ。』
うっ。改めて言われると恥ずかしい。
さっきの、いかにも女子部屋って感じのところからここまで、ずっと女装のままだもんな。
『えっ、女の子だと思ってました!』
そう言いながら、カチカチと鋏を鳴らす巨大蜘蛛。
笑ってる・・・のか?
『んで、こっちが、クモ助じゃ。』
『あ、初めまして。』
『『初めまして。』』
フィーが巨大蜘蛛・・・クモ助を紹介して、俺とアン、ユーズが挨拶する。
『さて、服を作ろうと思うんだけど、どんなのがいい?』
八つ目で、俺達を見るクモ助。
『あ、その顔。服なんて作れるのって思ってるでしょ。』
思わずドキッとしてしまう。
アンも同じだったようだ。ユーズは違うらしく、何のこと?みたいな顔をしている。
『ふっふっふっ。見ててね。』
そういうと、口から糸を出し、八本中、六本を使い、目にも止まらない速さで何かを編み始めた。
勿論、「走馬灯」を使えば見えると思うのだが。
五分後。
クモ助が編んだものは、純白のハンカチだった。
サラサラとしていて、繊維がとても細かった。さらに、蜘蛛の糸を編んであるからか、とても丈夫だった。
アンとユーズが、わあ、という声を出す。
『どうかな?そんな感じで何でも作れちゃうよ?』
自慢げに言うクモ助。
そう言われた俺は、あることを思いついた。
『じゃあ、作ってほしいものがあるんですけど。』
書いた後に気づきました。クモ助の口調が、完全に僕と同じ・・・。




