第十六話 やっぱり親子
ストレスのせいで胃と頭が痛いです。
解消法などありましたら、教えてください。
「あ、案外、似合ってる、な。」
俺は今、自分の格好を鏡で見ている。
白い長袖のワンピースに白い唾付き帽子(白いリボン付き)をしている。自分で見ても女子にしか見えない。
何故俺がこのような恰好をしているかというと、話はアンに鳩尾を殴られうずくまっていた時に遡る。
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「お返しだから。」
目が覚めて感動の再開かと思った俺にアンから言われたのは、そのような冷徹な言葉だった。
「言っておくけど、あれ結構痛かったんだからね!」
アンの言っているあれというのは、俺がエンヴィーからアンを遠ざけようとしたとき、言うことを聞かないアンを無理やり気絶させた鳩尾パンチのことだろう。
いや、まあ、強めにやったけど・・・
「何であんなことしたの!」
俺はその一喝で、うずくまっていた態勢から正座へと変わる。
母さんに怒られている時と同じ状況だな・・・。母さんがアンに変わっただけで。
「え、ええとですね・・・最初は首トンにして気絶させようと思ったんですけど、首トンって割と危険らしく、打ちどころが悪いと身体が動かなくなるらしいので、ちょっとぐらい痛くても鳩尾にパンチした方がいいかなーって・・・。」
ヤバい。怖い。目を合わせられない。気づいたら敬語になっている。
というかいつの間にか、俺の後ろにいたはずのユーズがオルシオさんの隣にいるんだけど!
くそぉ、あいつ逃げたなぁ!
ユラァとアンが俺に近づき、俺の目の前に立っている。
何、何、何!?何されるの!?・・・もういいや、全てを受け入れよう。って思っているけど実はここからが感動のシーンだったりし、デヘッ!!。
殴られた。
それも顔面に。鼻血は出ていないが結構強めだった。
俺は殴られた衝撃で、正座の姿勢から後ろに倒れて、木の床に大の字で寝転ぶ形となった。
やっぱりこれも悪意のない攻撃だったんですか、サーガ先生。
《はい。》
そうですか・・・。割とマジで痛かったんですけどね。
そんな状態の俺に、アンは馬乗りになって胸倉を掴んでくる。
今気づいたけど、俺の服まったくデザインとか変わってないけど新品だ。あまりにも変化なさ過ぎて気づかなかった。よくよく見ると服に使われている糸が上質なものに変わってる。
そんなことを考えていると、
「お兄ちゃん。」
低く、重々しい声。
これは、確実に怒っている。
「はい。」
「いつも何か隠してるよね。」
え、まさか、俺が前世の記憶を持っていることを気づいていたのか!?あのアンが!?何やらせてもポンコツな、あのアンが!?
俺はゴクリと唾を飲み込み、
「はい。」
と、下を向きながら言った。
「私たちって兄妹だよね。」
「はい。」
「だったらさ、嫌なことも悲しいことも一緒に背負っていくべきだよね!」
俺はその時、気が付いた。
アンの声が若干震えていることに。
「・・・はい。」
俺は顔を上げて、アンの顔を見た。
アンの瞳は、涙で潤んでいた。
そして、その瞳から涙が零れ落ち始めた。
「ひぐっ、私ね、イリスさんに運ばれて神樹シドラで目を覚ました時ね、うぐっ、なんで戦わせてくれなかったんだろうって思ったんだよ。ひっく、なんで一緒に戦わせてくれないんだろうって思ったんだよ!私たち兄妹でしょ!だったら背負わせてよ!一緒に背負わせてよ!お兄ちゃんの背負ってるもの、一緒に背負わせてよ。私たちも一緒に背負うから。おねがい・・・。」
涙はずるいわ。
ほんと、ずるい。
「ひっぐ、うぐ、いい話、ですねえ~。」
ポロポロと涙を流して泣いているのは、巨乳の女性だ。
「感動的ですな。」
ハンカチを取り出して泣いているのは、オルシオさんだ。
「感動的じゃな。」
瞳に涙を浮かばせて笑みを浮かばせているのは、サイドテールの少女だ。
「そうだね~。」
暖かい目で俺達を見ながら笑みを浮かべている緑色の髪の男性は・・・誰!?
気づいたら皆感動しちゃってるし、人増えてるし!!
「さ、お兄ちゃん。何を隠してるの?」
「え!?いつの間にか人が増えてるのは、スルーなの!?」
俺は誰もツッコまないので、尋ねてみる。
「あ、ええと、あの人は・・・」
「そういえば、自己紹介がまだでしたな。」
アンの声にかぶせるようにして言ったのは、オルシオさんだ。
取り敢えず俺はアンがどいてくれたので、立ち上がる。
俺から見て右から、緑色の髪の、いつの間にか現れた男性。サイドテールの少女。巨乳の女性。オルシオさん。ユーズ。といった感じに並んでいる。
「それでは右から、音楽記号に表すと、」
ん?この人今、なんて言った?
「レゲーロ。」
《レゲーロ・・・つまり、軽く優雅に、という意味です。》
「コン・ブリオ。」
《コン・ブリオ・・・つまり、生気に満ちて、という意味です。》
「エスプレッシヴォ。」
《エスプレッシヴォ・・・つまり、表情豊かに、という意味です。》
ありがとうございました。サーガ先生。
うわー、ホントに音楽記号で表したよ。この人。
そんなオルシオさんを、コン・ブリオと呼ばれた少女が杖で叩いた。
「そんな紹介があるか!!この超阿呆、超音楽バカ。」
少女は「まったく、」と言いながら息を深く吐くと、
「改めて、妾の〝名〟はフィスィノシアじゃ。」
ニヤリと不敵に笑い、言った。
「私の〝名前〟は、イリスですっ!」
満面の笑みで言ったのは、巨乳の女性だ。
「俺の〝名〟はシドラです。」
そう言ったのは、緑色の髪の男性だ。
そしてシドラと名乗った男性の腕を、フィスィノシアが掴むと、
「シドラは妾の婚約者じゃ!」
俺はその自己紹介を聞いて、三秒ほど固まってしまう。そして再び動き出すと、
「え、ええ!?フィスィノシアってことは・・・、」
「うむ、妾は〝魔王〟フィスィノシアじゃ。気軽に、フィーと呼んでくれて構わん。」
まさかこの少女が、魔王だったとは・・・俺の中の魔王のイメージが崩れていく音がするぞ。
「じゃあ、お兄ちゃん。自己紹介も終わったことだし、何を隠してるか話してくれる、よね?」
アンが、「よね?」の部分を強調して言った。
「え、いやあ、でも、まだ俺の紹介が・・・。」
「大丈夫だよ。あらかた話してあるから。」
「え。」
「さあ、何を隠しt・・・、」
「待て待て、アンよ。」
おお、魔王フィスィノシア様から、助け船が!
「よく見るとお主、ユーズに似て、女物の服がよく似合いそうじゃのう。」
魔王フィスィノシア・・・もう、フィーでいいや。フィーは、イタズラをする時の子供のような笑みを浮かべた。対して、俺の顔からは血の気が引いていく。
俺は即座に、逃げようとして立ち上がったが、壁や床から何本もの、生きているような木の枝が現れ、俺の四肢に絡みついて、俺の動きを封じてしまう。
「フフフ、さあ、これを着て、ハーマイオニーと名乗るんじゃあああああああああ!」
「そうだよ、お兄ちゃん。これは、罰ゲームってことで。」
「お二人とも、やめましょうよ~。まあ、確かに、似合いそうですけど~。」
三匹の野獣が襲ってきた!!
ルーミは逃げられない!!
なんていう、ドラ◯エのような回想をしながら、
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今に至る。
「次はこれにしようよ。フィーちゃん。」
「いやいや、今度こそ、これを着て、ハーマイオニーと名乗らせるのじゃ。」
「次は私にも選ばせてくださいよ~。」
三匹の野獣が、次に何を着せるかで話し合っている。
くそう、もう何着目だ?何十着、俺に着せるつもりなんだ?いつの間にか男性陣がいなくなってるし!ユーズも一緒に行っちゃたし!
もう、勘弁してほしい。
「あの~そろそろ解放して欲しいんですけど・・・。」
試しに聞いてみるが、
「逃がさないよ。」
「逃がさんぞ。」
「逃がしませんよ~。」
「・・・はい。」
帰ってきた答えはこのようなものだった。
もう、やめてくれぇ~!!
そう俺は、心の中で絶叫するのだった。
タイトルの意味を、第六話のヒューズ→ルーミ・イザベラ→アンと、とるか、他の意味でとるかは、読者の皆様方にお任せします。




