第十四話 目覚めると・・・
活動報告にも書きましたが、本当にすみませんでした。
今日は二本立て。
こちらは、一本目です。
~ルーミ~
ちゅん、ちゅん、ちゅん・・・
小鳥のさえずりが聞こえる。
俺は、うっすらと目を開ける。
顔の目の前に、何かがある。
最初は、目の前がぼやけてしまっていてよく見えなかったが、目が慣れてきてハッキリと見えるようになってきた。
そこにあったものは・・・初老に差し掛かったぐらいの、立派な白いガイゼル髭を生やした、縁が紅葉色の片眼鏡をしていて、執事服を着ている、スラッとしたかなり高身長の老人だった。
「わあああああああああああ!!」
俺は、俺の顔のすぐ目の前にある老人の顔に驚き、咄嗟に大声で叫んでしまう。それと同時に右横に体をのけぞらせる。
どうやら俺は、ベッドの上で布団をかけられて寝かされていたらしく、布団と共にベッドから転げ落ちてしまう。
俺が状況についていけないのもあって目を回していると、いつの間にか俺の前にあの老人が立っていた。
「ド、ド、ドォ~♪どうやらコン・ブリオのようですなァ~♪」
老人は、少し発声練習のようなものをすると、意味の分からない単語を言った。言葉の最後も、なぜか上がっている。
「コン・・・なんですか?」
老人がなんて言っているのかがわからなかった俺は、思わず訪ねてしまう。
《コン・ブリオ・・・つまり、生気に満ちて、という意味の音楽記号のことです。》
それを返答した男のような声は、頭の中で響いた。
「うわッッ!!」
俺はその声に驚き、再び大声を出してしまった。
なんだ・・・・・・・?あっ、そうか、サーガか。
声の正体は、原初(?)の悪魔のサーガだった。村がエンヴィーという般若に消滅させられ、俺やアン達が襲われた時、サーガと契約しなかったら、俺はアンとユーズを守れなかった。そして俺も死んでいた。
いわゆる命の恩人とヤツだ。いや、命の恩悪魔というヤツかな?
《・・・。》
おっと、サーガさんは、俺が少し忘れていたことが不服なようだ。
「どうかしましたかなァ~?」
老人が、俺の顔を覗き込むようにして尋ねる。
「いっ、いえ、大丈夫です。」
危ない危ない。万が一、変人扱いでもされたら困るからな。
っていうか、俺が変人だとしたら、日常会話に音楽記号ぶっこんでくるこの老人は超変人だよな。
・・・にしても、やっぱりあれは夢じゃなかったか・・・。
あれというのは、エンヴィーとの一件のことだ。
俺は目が覚めた時に、そんなことは起こっていないのではないか、夢だったのか、なんて考えていたが、どうやら全て現実らしい。
ポタッ、ポタ、ポタ・・・
目から涙が零れ落ちる。
「大丈夫ですかな!?ヴィヴァーチェでいきましょお~♪ヴィヴァーチェでェ~♪」
なんて言っているか分からないが、励ましてくれている、ということは分かる。
《ヴィヴァーチェ・・・つまり、元気に機敏に、という意味の音楽記号です。》
あ、うん。なんか冷めた。一切悲しくなくなったわ。
《ありがとうございます。》
褒めてないからねッ!!
「それで・・・ここは?あなた、一体・・・?アン達はッッ!!」
俺は、人前で泣いたことを誤魔化すように言った。
「おっと、申し訳ございません。私としたことがァ~♪私の〝名〟は、オルシオ。魔王フィスィノシア様の執事を務めさせていただいておりますゥ~♪」
〝魔王〟。
その言葉を聞いた時、俺はゴクリと、唾を飲んだ。
俺は幼い頃、〝魔王〟について載っている本を読んだことがある。
なんでも、〝魔王〟は複数おり、合計で八柱いるらしい。
一柱一柱が圧倒的な力を持っていて、その力は一柱で国をも墜とせるほど。
なので、この世界最強の存在とされている。
そんな魔王が、なんで俺達みたいな村人を・・・?
「ちなみにご妹弟様達は、ア二マンドとしていますよォ~♪」
アニマンド?
《アニマンド・・・つまり、生き生きと、という意味の音楽記号です。その他にも・・・》
つまり無事ってことか!!
安心した俺は、「ふう」と息を吐いた。
あ、ごめん。遮っちゃた。
《・・・その他にも、アニマート、アニメ、レブハフト、ヴィヴィッシモ、ヴィーヴォ、ビヴァーチェなどがあります。》
そんなにあるのか。
なんてことを思っていると、
「そしてここは・・・」
そこで老人・・・オルシオさんは切ると、少し光の洩れる木製の扉へと歩いて行った。
そして、バァァァッンという音を立て、開け放った。
強い日差しが入り込んできたが、眩しくはなかった。『神ノ瞳』を持っているからだ。
オルシオさんは、扉の横に立った。
俺は立ち上がり、オルシオさんに導かれるまま、扉の向こうへと足を運んだ。
そこはバルコニーだった。
そしてそこから見える風景は、一瞬言葉を失ってしまうほどのものだった。
青空が果てしなく広がっていた。遮るものは一つもない。それもそのはず、バルコニーから下を覗くと、雲があった。つまりこの場所は、雲の上だということだ。
さらに、雲の切れ目から見えるのは、緑色の絨毯。ではなく、そのように見える巨大な森だった。その森は果てしなく、地平線の彼方まで続いている。
まるで天空の城にいるようだった。
しかしここは、空に浮いているわけではなかった。
雲の切れ目をよく見てみると、この場所に何かが伸びていた。
それは樹の幹。
それも大樹という言葉では表せないような、とてつもなく巨大な樹の幹だった。
今いるこの場所、そして部屋は、この巨大な樹の中に造られていた。
しかもこの巨大な樹は、この部屋が頂点ではなかった。
上を見上げてみると、さらに・・・いや、遥か上に、生い茂る緑の葉が見える。
そして再び前を向く。
自然と笑みが浮かんだ。
「気に入ってもらえたでしょうかなァ~♪」
オルシオさんが話を続ける。
「・・・はい!」
俺は、オルシオさんが話しかけてきても構わずにこの風景を見続ける。
さらにオルシオさんは、話し続ける。
「ここは、魔王フィスィノシア様の領域である『魔の大森林』~♪その中央に位置する『神樹シドラ』の中ですよォ~♪」
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『神樹シドラ』内部。
女物の服を着ているユーズは走っていた。いや、逃げていた。
「た、助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!兄ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
彼を追いかける、野獣達から。
というわけで第二章が始まりました。
これからも「いせふん」をよろしくお願いいたします。




