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異世界で三兄妹が奮闘する話。  作者: G2
始まりの物語編
15/40

二分の一話 とある家族の一日。

二話同時投稿!

これは二話目です。

 ~ルーミ~


「ほうら!お兄ちゃん起きて!」


  俺はアンの声で起こされる。

  俺は、ベッドから起き上がり、朝食を食べるためにまず顔を洗う。

  ベッドは前世に比べたら、石の上に寝ているように感じるが、そんな生活を十四年も続けていたら流石に慣れた。


「ほらほら。ちゃちゃと朝食を食べるさね。」


「・・・。」


  母さんがそう言いながら、朝食を出してくる。作ったのは父さんだ。

  だけど父さんは、何も言わずに黙々と食べている。

  今日のメニューは、パンと、何かは分からないけど焼いただけの肉。

  正直言おう。マズい。

  パンはパッサパサで硬いし、肉は硬くて調味料がないので味がしない。

  しかし、これがこの世界の普通なのだ。

  もし、俺が前世の知識をフル活動して料理をすれば、これより何倍も美味しい朝食が出来るだろう。

  だけど、何故か父さんではなく母さんが許さない。理由は知らないが、恐らく自分よりも調理が出来たら困るんだろう。


  朝食を食べ終わったら、アンやユーズ達と母さんに稽古をつけてもらう。

  これがまたスパルタで・・・。


「ほらほら!脇が甘~い!足が遅~い!鋭くな~い!」


  といったダメ出しを、ヒイヒイ言いながら受ける。

  滅茶苦茶辛い。

  だけど、これを六歳からやってきたからか、結構強くなったんじゃないか、なんて思っている。

  まあ、魔法ありの家族内の模擬戦だったら、最弱なんだけど。

  ちなみに家事は全て父さんがやっている。


「はあ。」


  そんなことを考えながら、俺は玄関の扉を閉める。

  既に太陽は真上だ。

  スパルタな稽古が終わった後、朝食とほとんど同じメニューの昼食を食べ、川に釣りに行ってこい、と言われたので、村の北にある川へ向かうために、玄関から出たところだ。

  ちなみに、アンとユーズもついてきている。

  川へ行くためにはまず村を出る必要があるので、俺達三人は村の出口に向って歩き出した。


「リヴァイアサン釣れるかな~?」


  アンがそんなことを呟きだした。

  おいおい、そんなの川にいるわけ・・・

 

「川にそんな伝説級の大物いるわけないでしょ、お姉ちゃん。」


  ユーズがアンに、笑いながらあきれたように言った。

  さすがはユーズだ。俺に似てる。


「うるさいな~。ただのお願い事でしょ、お・ね・が・い・ご・と!」


  そんなユーズの態度が気に障ったのか、アンがユーズの頬をつねった。

  うん。アンは本当に母さん(イザベラ)に似てるなあ~。


「いふぁい、いふぁいよ、へえちゃん。はふ、はふけて、ひいちゃん。」


  ユーズは、頬をつねられているのでうまく声が出せていない。

  ああ、あれは絶対お嫁さんの尻に敷かれるな。

  なんて思いながら、温かい目と微笑みを二人に送った。


  そんな感じで歩いていると、


「ほっほっほ、どこへ行くんじゃ?」


  村のおじいさんに声をかけられた。

  えっと・・・名前何だっけ・・・?

『神ノ瞳』発動。

  そうだ!ウンベール=ナーヴァだ!

  また、忘れてしまっていた。どうも、人の名前を思い出すのは苦手だ。


「ちょっと川へ釣りに。」


「ほっほっほ、そうかそうか、釣れるといいのお。」


  俺は気さくに返し、別れる。

  ウンベールさんと名字が同じ理由は、この村の決まりだかららしい。

  村人全員が、名字にナーヴァとついている。

  俺は昔、なんで皆の名字がナーヴァなのかと、だったらいっそのことナーヴァ村にしちゃえばよかったのに、と母さんに聞いたことがある。

  すると、


『なんでもさね、300年くらい前にこの村を造った人たちのリーダーが、サーガ=ナーヴァって名前らしくてさね。最初は、ナーヴァ村になる予定だったさね、けどサーガ=ナーヴァ以外の村人が猛反対して、サーガ村になり、サーガ=ナーヴァの死んだ後で、ナーヴァの姓を受け継ごうって話になって、皆の姓をナーヴァにしたそうさね。』


  と言われた。

  俺は、その時一つ思ったことがあった。

  この村って300年も前からあるのかと。

  以外に長く続いていて、驚いた。


  その後も、いろんな人に話しかけられた。


「気を付けてね。」

 

  と言ってくれたのは、ロニエ=ナーヴァというおばさん。


「いってらっしゃい。」


  と言ってくれたのは、ハクア=ナーヴァというおばあさん。


「大物釣ってこいよぉ!」


  と言ってくれたのは、ガジット=ナーヴァというおじいさん。元気だなー。


  見事にナーヴァだらけ。

  元日本人だからか、未だに慣れない。

  俺は会った人全員に、気さくに返した。

  それを見たアンとユーズは、


「いい?ああやって話せばいいのよ。わかった?ユーズ?」


「わかってるって、というかわかってないのは、お姉ちゃんの方でしょ!いつも落ち着きがないじゃん。」


「わかってるわよ!生意気!」


「いふぁい、いふぁいっへ。ほひいひゃん、はふけへ~。」


  などということを話し、ユーズはさっきより強めに頬をつねられている。

  しょうがない。助け舟を出してやるか。


「ほら、二人とも行くぞ~。」


「は~い。お兄ちゃん。」


  俺とユーズで態度変わりすぎだろ。

  これが兄と弟の差か。

  我が妹ながら恐ろしいな。


  10分ぐらいかけて川に来た。

  川と言っても、小さいし浅い。

  恐らく地図にも載らないだろう。


  というわけで、さっそく俺達は釣りを始めることにした。


 ・・・


 ・・・・・


 ・・・・・・・


  陽が傾いてきた。

  釣りを始めてから大体3時間ぐらいたっただろうか。


  現在の成果はこんな感じ。


  ・俺、1匹 ・アン、0匹 ・ユーズ6匹


  ・・・いや、ユーズ多すぎかッ!天才かッ!

  いや、もしかしたら、俺とアンが下手すぎなだけかもしれない。

  それはそれでショックだけど。


「う~~~~~~。」


  そんなうめき声が隣から聞こえた。

  声の主は、当然アンだ。

  始めてから、1時間ぐらいでイラつき始め、釣り竿と睨めっこしてたけど、今じゃユーズを睨みつけている。

  ユーズは気づいているのか、アンと全く目を合わせようとしない。

  マズい。何とかしないと。


「じゃ、じゃあ、もうそろそろ帰るかな~。」


  俺はそう言うと、釣り道具を片付け始める。

  ユーズはそれを聞いた瞬間に、俺より速くテキパキと片付ける。


「ま、待ってよ、お兄ちゃん。もうちょっと、もうちょっとだけ。」


  アンは往生際が悪く、まだ粘ろうとする。

  まあ、俺は1匹だけどな。

  そしてユーズは、すぐに釣り道具を片付け、俺の陰に隠れる。

  それを見たアンが、頬を膨らませ、片付け始めようとすると、

  グイッ、とアンの釣り竿が引かれる。


「あっ!きた!」


  アンは満面の笑みで、釣り竿を引く。

  しかし、手ごたえがなかったのか、スッと釣り竿を引いた。

  つまり、


「「「・・・。」」」


  餌だけ取られていた。

  俺達三人に、静寂が訪れる。

  俺達は、無言で家に帰った。


 ・・・


 ・・・・・


 ・・・・・・・


「ってことがあったんだよ。」


  俺は今、家族そろって夕食を食べている。


「はっはっは!そうさね、そうさね、それでアンがそんなに落ち込んでるさね。」


  今日の釣りで起こったことを伝えると、母さんは大笑いした。


「もう!お兄ちゃん!言わないでよ~!」


  アンは、恥ずかしそうに顔を赤くして、頬を膨らましている。


「まあまあ、明日またなんか獲ってくればいいさね。」


  そんなアンをなだめるように、母さんは言う。


「そうだよねッ!」


  アンが途端に笑顔になる。


「まあ、そうだな。」


  俺は、素っ気なく答える。


「そ、そうだね。」


  ユーズは、少し顔色が悪そうだけど、一応答える。


「・・・。」


  父さんは、無言で笑みを浮かべている。


「ぼ、僕、もう寝るよ。」


  そう言って、ユーズは席を立った。


「大丈夫か?ユーズ。顔色悪そうだが・・・。」


  俺は、ユーズの顔色を心配して、声をかけておく。


「だ、大丈夫だよ!じゃあ、おやすみ。」


「お、おやすみ。」


  やはりおかしい。「おやすみ」と言ったユーズの顔は、なにか隠しているようだった。

  気になった俺は、『神ノ瞳』を使ってみるが、何も異常はなかった。

  考えすぎか?・・・でもなあ。


  そんなことを布団に入るまで考えていた。


  布団に入ると、何故か今日のことが思い出される。

  『神ノ瞳』を使ってもいないのに。


  やっぱり俺は、この世界が好きだ。この村が好きだ。

  前世の俺は、生きているようで死んでいた。ただの機械だった。

  だけど、転生してから、村の色んな人に良くしてもらった。話しかけてもらった。

  今日だってそうだ。歩いているだけで、話しかけられる。

  こんなことは、前世じゃあ味わえなかった感覚だ。

  ああ、このまま平和な時が進めばいいのに。

  そして、いつかこの村を出て、冒険して、またこの村に戻ってきたい。

  それぐらい、俺はこの村が、大好きだ。


  そんなことを考えているうちに、ルーミの意識は、夢の世界へと誘われていく。


  そして、この村にエンヴィーが訪れるのは、明日のことであった。













 



これにて、1章始まりの物語編が終わります。

次週は、「なりそこない」の方を投稿していきたいと思っているので、そちらもよろしくお願いいたします。


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