二分の一話 とある家族の一日。
二話同時投稿!
これは二話目です。
~ルーミ~
「ほうら!お兄ちゃん起きて!」
俺はアンの声で起こされる。
俺は、ベッドから起き上がり、朝食を食べるためにまず顔を洗う。
ベッドは前世に比べたら、石の上に寝ているように感じるが、そんな生活を十四年も続けていたら流石に慣れた。
「ほらほら。ちゃちゃと朝食を食べるさね。」
「・・・。」
母さんがそう言いながら、朝食を出してくる。作ったのは父さんだ。
だけど父さんは、何も言わずに黙々と食べている。
今日のメニューは、パンと、何かは分からないけど焼いただけの肉。
正直言おう。マズい。
パンはパッサパサで硬いし、肉は硬くて調味料がないので味がしない。
しかし、これがこの世界の普通なのだ。
もし、俺が前世の知識をフル活動して料理をすれば、これより何倍も美味しい朝食が出来るだろう。
だけど、何故か父さんではなく母さんが許さない。理由は知らないが、恐らく自分よりも調理が出来たら困るんだろう。
朝食を食べ終わったら、アンやユーズ達と母さんに稽古をつけてもらう。
これがまたスパルタで・・・。
「ほらほら!脇が甘~い!足が遅~い!鋭くな~い!」
といったダメ出しを、ヒイヒイ言いながら受ける。
滅茶苦茶辛い。
だけど、これを六歳からやってきたからか、結構強くなったんじゃないか、なんて思っている。
まあ、魔法ありの家族内の模擬戦だったら、最弱なんだけど。
ちなみに家事は全て父さんがやっている。
「はあ。」
そんなことを考えながら、俺は玄関の扉を閉める。
既に太陽は真上だ。
スパルタな稽古が終わった後、朝食とほとんど同じメニューの昼食を食べ、川に釣りに行ってこい、と言われたので、村の北にある川へ向かうために、玄関から出たところだ。
ちなみに、アンとユーズもついてきている。
川へ行くためにはまず村を出る必要があるので、俺達三人は村の出口に向って歩き出した。
「リヴァイアサン釣れるかな~?」
アンがそんなことを呟きだした。
おいおい、そんなの川にいるわけ・・・
「川にそんな伝説級の大物いるわけないでしょ、お姉ちゃん。」
ユーズがアンに、笑いながらあきれたように言った。
さすがはユーズだ。俺に似てる。
「うるさいな~。ただのお願い事でしょ、お・ね・が・い・ご・と!」
そんなユーズの態度が気に障ったのか、アンがユーズの頬をつねった。
うん。アンは本当に母さんに似てるなあ~。
「いふぁい、いふぁいよ、へえちゃん。はふ、はふけて、ひいちゃん。」
ユーズは、頬をつねられているのでうまく声が出せていない。
ああ、あれは絶対お嫁さんの尻に敷かれるな。
なんて思いながら、温かい目と微笑みを二人に送った。
そんな感じで歩いていると、
「ほっほっほ、どこへ行くんじゃ?」
村のおじいさんに声をかけられた。
えっと・・・名前何だっけ・・・?
『神ノ瞳』発動。
そうだ!ウンベール=ナーヴァだ!
また、忘れてしまっていた。どうも、人の名前を思い出すのは苦手だ。
「ちょっと川へ釣りに。」
「ほっほっほ、そうかそうか、釣れるといいのお。」
俺は気さくに返し、別れる。
ウンベールさんと名字が同じ理由は、この村の決まりだかららしい。
村人全員が、名字にナーヴァとついている。
俺は昔、なんで皆の名字がナーヴァなのかと、だったらいっそのことナーヴァ村にしちゃえばよかったのに、と母さんに聞いたことがある。
すると、
『なんでもさね、300年くらい前にこの村を造った人たちのリーダーが、サーガ=ナーヴァって名前らしくてさね。最初は、ナーヴァ村になる予定だったさね、けどサーガ=ナーヴァ以外の村人が猛反対して、サーガ村になり、サーガ=ナーヴァの死んだ後で、ナーヴァの姓を受け継ごうって話になって、皆の姓をナーヴァにしたそうさね。』
と言われた。
俺は、その時一つ思ったことがあった。
この村って300年も前からあるのかと。
以外に長く続いていて、驚いた。
その後も、いろんな人に話しかけられた。
「気を付けてね。」
と言ってくれたのは、ロニエ=ナーヴァというおばさん。
「いってらっしゃい。」
と言ってくれたのは、ハクア=ナーヴァというおばあさん。
「大物釣ってこいよぉ!」
と言ってくれたのは、ガジット=ナーヴァというおじいさん。元気だなー。
見事にナーヴァだらけ。
元日本人だからか、未だに慣れない。
俺は会った人全員に、気さくに返した。
それを見たアンとユーズは、
「いい?ああやって話せばいいのよ。わかった?ユーズ?」
「わかってるって、というかわかってないのは、お姉ちゃんの方でしょ!いつも落ち着きがないじゃん。」
「わかってるわよ!生意気!」
「いふぁい、いふぁいっへ。ほひいひゃん、はふけへ~。」
などということを話し、ユーズはさっきより強めに頬をつねられている。
しょうがない。助け舟を出してやるか。
「ほら、二人とも行くぞ~。」
「は~い。お兄ちゃん。」
俺とユーズで態度変わりすぎだろ。
これが兄と弟の差か。
我が妹ながら恐ろしいな。
10分ぐらいかけて川に来た。
川と言っても、小さいし浅い。
恐らく地図にも載らないだろう。
というわけで、さっそく俺達は釣りを始めることにした。
・・・
・・・・・
・・・・・・・
陽が傾いてきた。
釣りを始めてから大体3時間ぐらいたっただろうか。
現在の成果はこんな感じ。
・俺、1匹 ・アン、0匹 ・ユーズ6匹
・・・いや、ユーズ多すぎかッ!天才かッ!
いや、もしかしたら、俺とアンが下手すぎなだけかもしれない。
それはそれでショックだけど。
「う~~~~~~。」
そんなうめき声が隣から聞こえた。
声の主は、当然アンだ。
始めてから、1時間ぐらいでイラつき始め、釣り竿と睨めっこしてたけど、今じゃユーズを睨みつけている。
ユーズは気づいているのか、アンと全く目を合わせようとしない。
マズい。何とかしないと。
「じゃ、じゃあ、もうそろそろ帰るかな~。」
俺はそう言うと、釣り道具を片付け始める。
ユーズはそれを聞いた瞬間に、俺より速くテキパキと片付ける。
「ま、待ってよ、お兄ちゃん。もうちょっと、もうちょっとだけ。」
アンは往生際が悪く、まだ粘ろうとする。
まあ、俺は1匹だけどな。
そしてユーズは、すぐに釣り道具を片付け、俺の陰に隠れる。
それを見たアンが、頬を膨らませ、片付け始めようとすると、
グイッ、とアンの釣り竿が引かれる。
「あっ!きた!」
アンは満面の笑みで、釣り竿を引く。
しかし、手ごたえがなかったのか、スッと釣り竿を引いた。
つまり、
「「「・・・。」」」
餌だけ取られていた。
俺達三人に、静寂が訪れる。
俺達は、無言で家に帰った。
・・・
・・・・・
・・・・・・・
「ってことがあったんだよ。」
俺は今、家族そろって夕食を食べている。
「はっはっは!そうさね、そうさね、それでアンがそんなに落ち込んでるさね。」
今日の釣りで起こったことを伝えると、母さんは大笑いした。
「もう!お兄ちゃん!言わないでよ~!」
アンは、恥ずかしそうに顔を赤くして、頬を膨らましている。
「まあまあ、明日またなんか獲ってくればいいさね。」
そんなアンをなだめるように、母さんは言う。
「そうだよねッ!」
アンが途端に笑顔になる。
「まあ、そうだな。」
俺は、素っ気なく答える。
「そ、そうだね。」
ユーズは、少し顔色が悪そうだけど、一応答える。
「・・・。」
父さんは、無言で笑みを浮かべている。
「ぼ、僕、もう寝るよ。」
そう言って、ユーズは席を立った。
「大丈夫か?ユーズ。顔色悪そうだが・・・。」
俺は、ユーズの顔色を心配して、声をかけておく。
「だ、大丈夫だよ!じゃあ、おやすみ。」
「お、おやすみ。」
やはりおかしい。「おやすみ」と言ったユーズの顔は、なにか隠しているようだった。
気になった俺は、『神ノ瞳』を使ってみるが、何も異常はなかった。
考えすぎか?・・・でもなあ。
そんなことを布団に入るまで考えていた。
布団に入ると、何故か今日のことが思い出される。
『神ノ瞳』を使ってもいないのに。
やっぱり俺は、この世界が好きだ。この村が好きだ。
前世の俺は、生きているようで死んでいた。ただの機械だった。
だけど、転生してから、村の色んな人に良くしてもらった。話しかけてもらった。
今日だってそうだ。歩いているだけで、話しかけられる。
こんなことは、前世じゃあ味わえなかった感覚だ。
ああ、このまま平和な時が進めばいいのに。
そして、いつかこの村を出て、冒険して、またこの村に戻ってきたい。
それぐらい、俺はこの村が、大好きだ。
そんなことを考えているうちに、ルーミの意識は、夢の世界へと誘われていく。
そして、この村にエンヴィーが訪れるのは、明日のことであった。
これにて、1章始まりの物語編が終わります。
次週は、「なりそこない」の方を投稿していきたいと思っているので、そちらもよろしくお願いいたします。




