第十一話 全力の一撃
歴代最長となっております。文字数も費やした時間も。
一章最終局面!
~???~
『魔の大森林』
それは、ケントロン大陸の最西端に位置する森林のことである。最西端とはいえ、ケントロン大陸の半分を占めている途轍もなく巨大な、世界一の広さを誇る森林。
その中心には、新緑に染まる樹冠を広げた、天をも貫くような世界最大の神木、『神樹シドラ』がそびえ立っていた。
その木の幹の内部は空洞になっており、そこには世界中全ての植物が季節、気候に関係なく栽培される、『庭園』となっている。
「嫉妬王が攻めてきたじゃとッ!?なんて超面倒、超迷惑なんじゃッ!」
声の主は、口調に合わず外見に合った幼い少女の声をした、庭園の主だった。
年の頃は十二、十三といったところだ。
まだ幼さは残るものの、大きな瞳は強い意志を持つようにトパーズのような色と輝きを放っていた。その瞳の強さで、少女が只者ではないことが分かるだろう。
しかし、今の彼女の瞳にはそんな面影などさらさらなく、目元に涙を浮かべていた。
紅葉色で地面に着きそうな長い半そでのワンピースを着ている。
髪は服と同じ紅葉色で、頭の右側で流すようにサイドテールで纏められて、魅力的な輝きを放っていた。しかし、そんな可憐な印象を吹き飛ばすように、少女は頭を抱えてワナワナと震えていた。
「ン、ン、ン~♪た~しかに不味いですね~。ですがフィスィノシア様。落ち着いてゆっくりで行きましょう~♪」
鼻歌まじりで少女に話しかけるのは、隣に立つ2mは超えていそうな高身長の老人だった。
老人とはいえ、初老に差し掛かったぐらいの見た目で足腰もしっかりしており、膂力も衰えているようには到底見えない。
整えられた白髪に、これまた整えられた立派な白いガイゼル髭を生やしていた。
左目には縁が紅葉色の片眼鏡をしており、執事服を着ていた。しかし、色は執事服に似合わず洋緑色だった。
「お主は相変わらずまいぺーすじゃな・・・じゃが、そうじゃな、取り乱してはいかんのう。はあ・・・超面倒、超苦労、じゃが、森の守り手として、神樹シドラを守らねばのう。」
と、落ち着いたフィスィノシアと呼ばれた少女は答える。
そして隣にいる老人から、何所から取り出したか分からない、木が二本絡み合ったような杖を受け取る。
「さあて、我が森を犯す超愚者、超蛮人にお灸をすえてやろうかのう。」
そう言って少女は口元に不敵な笑みを浮かべる。
少女の〝名〟はフィスィノシア。
『魔の大森林』の守護者統括であり、この世界の頂点に立つ者たちの一柱、自然の魔王フィスィノシアだった。
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~ルーミ~
ヤバい。
激ヤバい。
超ヤバい。
めちゃヤバい。
かなりヤバい。
マジでヤバい。
ガチでヤバい。
超・超・超ヤバい。
超ベリーヤバい。
チョベリバー。
《・・・ルーミ様。集中してもらえますか?》
はい。すみません。
でも、実際ヤバいじゃん。良い意味と悪い意味で。
悪い意味は、エンヴィーの猛攻を受けているということだ。
現在俺・・・いや俺たちは、約30本の鎖の攻撃を受けている。
その鎖一本一本が、先程の赤い炎ではなく黒い炎を纏っている。
恐らく、エンヴィーのスキルである、「黒炎」と「炎熱操作」を使っているのだろう。
そのうえ、滅茶苦茶速い。
サーガによる補助がなかったら、俺は一瞬で死んでいただろう。
対して良い意味とは、勿論サーガの補助のことだ。エンヴィーの鎖と大体同じ数の〝闇〟の触手のようなものが、俺のさばききれない鎖や死角からくる鎖をすべて防いでくれているのだ。約30本すべてをだ。
更に、〝闇〟を纏った俺の刀は、何度防いでも壊れない。しかも、恐らくだけど切れ味も増しているだろう。
サーガが補助してくれるって言うから、どんなものかと思ったら、良い意味で予想外だった。
だけど、これで勝てると油断しない方がいいと思う。
エンヴィーは、まだ全力を出していない気がするから。あくまで気がするだけであって、現在のが全力ならいいんだけどなあ~。
そんなことを考えている間も、俺は向かってくる鎖をはじき、サーガは俺の頭上や足元からくる鎖を防いでくれている。
だけど駄目だ。
完全にエンヴィーのペースだ。
エンヴィーは、絶え間なく攻撃してきているが、俺たちは、ずっと防ぎっぱなしなのだ。
「あっれ~どうしたのかな~?防いでばっかりじゃ、僕を倒すなんてできないよっ!」
エンヴィーは、外見に合った幼い子供のような笑みを浮かべて、自らも日傘で攻撃をしてきた。
強く左脚で地面を蹴って、日傘をつくように鋭い一撃を放ってくる。
俺はそれを何とか、刀で防ぐ。
速すぎだろッ!
これは俺の率直な感想だ。
『走馬灯』を使っても少ししか見えない、そしてその少し見えたところを反射的に防いでいるだけだ。
マズい。このままだと負ける。押し切られる。
『創造力』で地面を操り、土の棘を造ったところで避けられる。
速すぎる。強すぎる。
まったく・・・日本では考えられないな・・・。
なんて弱音を吐いてる場合じゃない!
勝つ。勝ってやる。その為には、この状況を打破しないといけない。
考えろ。考えろ。考えろッ!
《ご提案させていただきます。一瞬だけ、私がエンヴィーの攻撃を止めますので、そこを叩いて下さい。》
俺は考えた。
どのようにして叩くのか、と。
俺は思考を巡らせる。
より最適を目指すために。少しでもエンヴィーを倒す確率を上げるために。
そして、俺は答えを導き出す。
それは、最適じゃないかもしれない。それは、確率が低いかもしれない。
だけどやる。この状況を打破できるのなら。エンヴィーを倒せるものなら。
危険な賭けだ。
それでも俺はやる。やってやる。
《3・2・1で合図します!3・2・1ッ!》
俺は、左足で地面を思いっきり踏んで、刀を振り上げ前に出る。
その瞬間、エンヴィーの全ての鎖が〝闇〟によって捉えられる。
エンヴィーは、一瞬驚きの表情を隠せなかったが、前に出て俺の身体目掛けて日傘を突く。
その日傘の速度は、音速までも達していただろう。
しかし、それすらも〝闇〟が防ぐ。
目に見えるように焦ったエンヴィーは、地面を蹴って後ろに下がる。
しかし、下がった所には既に俺の罠が発動している。
『創造力』の利便性は、その自由度にある。
創っても創っても、足元に創ったんじゃあ、エンヴィーが速くて避けられるだけだ。
なら、創っている途中のところに誘い込んでしまえばいい。
そう思った俺は、踏み出した瞬間、エンヴィーが下がることを予測して、エンヴィーの一、二歩後ろの土の壁を創り始めた。
壁で倒せるなんて俺は思っちゃいない。
エンヴィーの態勢を崩すだけでいい。
そして、エンヴィーは俺の予測通り、少し下がった。
下がったエンヴィーの足元から土の壁が創られる。
俺の予測では、エンヴィーのすぐ下に創られるはずだったが、少しずれてしまった。
しかし、本当に少しだけだった。
土の壁は、エンヴィーの顎に思いっきり当たった。
普通の人間では、即気絶コースだろう。
だが、エンヴィーは違った。ダメージなど一切なかった。恐らく『多重結界』を使ったんだと思う。
それでも、俺の狙い通りにエンヴィーの態勢は崩れ、仰向けに倒れた。
俺はそこに畳みかけるようにして、土の壁でもう一度踏み込み、刀を振り下ろす。
そこにサーガの補助がさらにかかり、〝闇〟によって刀身が伸びて、〝闇〟の上に『範囲結界』が発動、より耐久性と切れ味が増した。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおらあああああああああああああああああああああ!」
俺は、ここぞとばかりに力をかける。
エンヴィーの『多重結界』によって、刀が押し戻されそうになる。腕が折れそうになる。刀が歪んで見えるし、腕からはミシミシといった嫌な音がする。
それでも俺は刀を押し込む。
徐々にエンヴィーの『多重結界』が割れ始める。
1枚2枚と割っていき、全て割り終えて届いたと思ったら、エンヴィーの日傘が刀とエンヴィーの間に入る。
「くうううううう!りゃあああああああああああああああああああああ!」
エンヴィーは、歯を食いしばって叫ぶ。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
俺も叫びながら、刀を押し込む。
さっきより、強い反発力が刀にかけられる。
はじかれる。
そう思った瞬間、刀を握っている手から腕にかけて、〝闇〟で覆われる。
途端に力をかけるのが楽なる。しかし、刀にかける力は強まる。
目が充血し、血涙が流れる。
しかしそんなことはお構いなしに、俺はその一撃に全力をかける。
その結果、
「はああああああああああああああああッッ!!」
エンヴィーの日傘が真っ二つに斬られ、俺の刀は、エンヴィーを斬った。
こんな終わり方で申し訳ありません。キリがよかったもので。
感想、評価、コメントの方、存分にお待ちしております!
あらすじを書き直してみました。 アドバイスをくださったらうれしいなあ~なんて思っています。




