表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空の名前  作者: フォーマルハウト
2/3

綿雲


 雨だ。

 

 リズム良く屋根を打つ水の音で目を覚ました。

午前五時。

いつもより30分程早い。

ひと通りの身支度を済ませたあと、パソコンを起動した。

鈍い音を放ちながら起動する様子を横目に、窓の外を眺める。



 昨日の時点での降水確率は70%だった。

今日も、空は不思議な表情を見せていた。

霞む視界の向こうに見える風力発電所が、風の強さを伝えていた。



天気予報は終日雨であると伝えていたが、きっとそうではない。 

今日は午後4時から晴れるだろう、空の表情がそう告げる。

昨日も、一昨日も、その前からずっとそうだった。空はいつもこちらを見ていて、それに気が付いた者だけが視線を感じる、それだけのこと。



 空は鏡なのだ。惑星の表面にへばりついた膜ではなく、外界と繫ぐ門であると。

門は常に開かれ、見ている者を映し、その状態を常に晒す。

故に、鏡を通した光は鏡からのことばだ。ことばは力となって綿を紡ぎ、流す。


 

 

……それは17のとき、強風で飛んできた何かに頭をしたたかにぶつけたことだと思う。

その場では何もなく、せいぜい痣と痺れがあった程度だったが、三日後。

高熱にうなされて数日休んだあと、目覚めた瞬間に何かが切り替わった。



 一時間ほど、身動きすら取れなかった。あまりの情報量に脳は耐えられず、ただ呆然とするしかなかった。指先が、わき腹が、うなじが、全身の皮膚がすべて、痛い。ようやく落ち着いてきたころ、窓から差した夕日と雲の流れが否応なくわからせた。








 この触覚は(・・・・・ )空だ(・・ )


 






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ