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プロローグ
窓を開けると、大きな立ち雲が見えた。11月の少し乾いた風が頬を撫でる。
いつからなのだろうか、空が自分を見ているように感じ始めたのは。
子供の頃から何事にも無頓着で、友達も少なかった。そして、よく空を見ていた。
中学生になり、人並に人付き合いも出来るようになった。だが、見返りを無意識に求めてしまう自分に辟易した。
こんな人生を生きて何になろうか、とも思ったがそれすらもすぐに忘れた。
高校に進学した。親は大学までは世話を見てくれるようだし、まあまあいい学校に合格したからである。一応進学校ではあるようだが、生徒の自主性を尊重するだとか言う話で、自由な校風で知られている学校だった。
そこで、出会ってしまった。
はっきり言って高校時代の記憶など殆ど無い。ただ、あの時のことだけは、はっきりと思い出せる。
あれは初めて自分の欲求が生まれた瞬間であり、呪いにかかってしまった瞬間でもあった。
空がかけた残酷な呪いに。