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ケモノの王  作者: 橘 ロネ
5/10

カコとイマ

  携帯が鳴り彼女からのメールが来ていた。

 《もう別れよう、君とは付き合えない》

  そんな文面のメールが届いていた。

  手音篤はそんな短い文面にデジャブを覚えていた。

(これ、どっかで見た気がするんだよな。どこだっけ?)

  彼女からの突然の別れのメールに手音篤は冷静だった。

(そういえば、俺は誰と付き合っていたんだ?)

  その名前を思い出す為に手音篤はメールの差出人の名前を見た。だが、そこには

 《差出人:不明》と、書いてあった。

(おかしい。さっき俺はこれで彼女と判断した理由があるはずだ。何故、名前が不明となっているのに彼女と分かったんだ?)

  手音篤が彼女と判断した理由を考えていると、また同じ宛先からメールが届いた。

 《差出人:不明》

 《なんで、止めないの?》

  と、書いてあった。

(自分から言っておいて図々しい奴だな。こんな奴と俺は付き合っていたんだ。にしてもなんで差出人が不明なんだ?)

  手音篤はまるで他人事のようにメールを見つめていた。

  するとまた、メールが届いた。

 《差出人:不明》

 《なんで、気付かないの?》

(なんだこいつ?恐ろしい女だな。けど、これが届いてホッとしたな。なんでだ?)

  手音篤は少し鳥肌が立っていた。だが、心のどこかで

  これを見たかった。と、思っている自分もいた。

  次は時を置かずにまた届いた。

 《差出人:不明》

 《なんで?なんで?なんで?なんで?なんでるなんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?》

  流石にこれを見た手音篤はビビった。だが、これで終わりではなかった。少しずつ遠くから

「なんで?…………なんで?…………なんで?…………なんで?」と、声が聞こえてくるのだ。しかも、着実に少しずつ、少しずつその声は大きくなり近くなってくる。

  だが、不思議と手音篤はその声をいつまでも聞いていたいと思っていた。そう、いつまでも、いつまでも。

  その声は少しずつ少しずつ近付いてくる。少しずつ、少しずつ、少しずつ少しずつ少しずつ少しずつ。

  気付いた時にはもう、すぐそこにいるような声の大きさになって

「なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?」と、連呼していた。

  だが、その姿は見えない。

  手音篤は不意に後ろを振り向くと女性が立っていた。顔は青白く、首には少し痣がついていた。そして、その女性がなんで?と、連呼している正体だった。口が微かに動いていた。

  手音篤は逃げていた。走って、走って、走って走って走って走って走っていた。

  どこへ向かっているのかも分からない。ただ、ただ走っていた。

  だが、その女性は付いてくる。

  手音篤はその女性と一緒に居たいような居たくないような矛盾した気持ちが心を交差していた。

  だが、手音篤は足を止めない。その内に、目の前に扉があった。

  手音篤はその扉を開けて外へ思いっきり出た。足を止めてはならない、早く逃げないと。そう思いながら。

  だが、手音篤は足を止めた。正確には足を止めざるを得なかった。扉の向こうはビルの屋上だった。しかも、自分が飛び降り自殺をしたビルの屋上だった。

(まだ、間に合う。今なら引き返して別の道に行ける)と、思い、後ろを振り返ってみると、そこには女性が立っていた。

「なんで?なんで?なんで?〜〜」と、連呼しながら。

  手音篤は自分を見てみる。するといつのまにか自分の服が部屋着からスーツに変わっていた。

  そして、女性はその内にどんどんと近づいて来る。ゆっくり、一歩、一歩。

  手音篤はビルの縁に追い詰められていく。

「ち、近づくな!」

  手音篤が怒鳴るがその女性は止まる気配を見せない。少しずつ、少しずつ少しずつ少しずつ近寄ってくる。

  手音篤も少しずつ少しずつ少しずつ少しずつ後ずさっていく。そして、遂に縁のギリギリに追い詰められてしまった。

  手音篤はビルの下を見る。

  だが、下にはコンクリートの地面も鉄の車も無かった。何も無かった。正確にはあったのは黒のみ。真っ黒な世界があった。

  そして、手音篤はまた女性を見た。女性は笑っていた。しかも、さっきのような青白い肌ではなく、白く透き通った肌だ。さっきのような無機質なただの物体のような様子ではない。人間の最高傑作と言うべき女性になっていた。手音篤はその女性に飛びつきたくなった。だが、その感情を理性が抑えこんだ。そして、このビルから飛び降りなければと思った。今回は理性は止めようとしない。

  そして、手音篤はビルの縁から足をさらに一歩後ずらせてバランスを崩した。

「愛してるよ、永遠に」

  手音篤は何故かその言葉が咄嗟に出た。

  すると、声は聞こえなかったが女性が

「わたしも」

 と、言った。確実に言った。絶対に言った。

  手音篤はそれを見ただけで天にも昇りそうな嬉しさというものを知った。何故嬉しいのかは分からない。ただ嬉しかった。このまま、天に昇っていけたらなと、思った。

  だが、手音篤には翼も生えていない。手音篤は自分が行きたい空とは逆に黒い世界へと堕ちていった。ただ、落ちていった。地面がどこにあるかが分からない。ただ、落ちてゆくだけだった。光のない世界をただ、ただただただただ落ちていった。

  少しずつ気が遠くなっていった。

(ここで俺は死ぬのか。だが次はない、絶対に守り抜く)

  そこで、手音篤の記憶は途切れた。


「ハッ」と、テオンは目を覚ました。昨日の夜から昼あたりまで寝ていたよ。と、太陽の高さが告げていた。

(なんだ、夢か。アイツは元気にやっているだろうか)

  テオンは寝惚け眼を強制的に開き1日の始まりを体に叩きつけた。

(ギルドカードを門番の人に見せに行かないとな。これ以上迷惑を掛けるのもなんだしな)

  テオンはベットから降りて身支度をした。

  そして部屋を出て階段を駆け下りていった。階下からは楽しそうな声といい匂いがテオンの耳と鼻に届いた。

(なんか、食べないとな。今、貰えるかな?)

  テオンはそそくさと階段を降りきり、受付へ向かった。そこには昨日と違って、10代前半くらいの女の子が受付をやっていた。

(こんな子供がやっていて大丈夫なのか?いや、俺が言えることじゃないか)

  テオンは自分が子供のような見た目になっているのを思い出して苦笑した。

「なんで、笑ってるの?お兄さん怖ーい」

  受付の子が声を掛けてきた。

「なんでもないよ、ただちょっと昨日の事を思い出しただけだよ」

「何?その話面白いの?教えて、教えて!」

  女の子は予想以上に食いついてきた。

  テオンが反応に困っていると、自分の後ろの方から声がした。

「ソフィーナ、お客さんを困らせちゃダメだよ」

  テオンが後ろを振り向くと昨日の受付のおばさんが立っていた。

「すいませんね。うちの娘は好奇心が旺盛で面白い話とかに食いついちゃんですよ。友達が少ないんでもし、暇な時があれば構ってやって下さい」

  この子は昨日の受付のおばさんの子供らしい

「はい、分かりました」

「ありがとうございます。これから、どちらかへご用事ですか?」

「まあ、そうなんですが、少し小腹が空いてしまって。何か食べ物を食べさせてもらえませんか?」

「分かりました。あちらに食堂兼酒場がありますので、そちらで食べ物を食べれます」

「ありがとうございます」

「いえいえ、朝の6時から夜の9時までやっているのでお好きな時にお使い下さい」

「分かりました」

  と、テオンは言って食堂に向かった。

  食堂に入ると、そこには大人達が数名いて大きな声で話していた。

(さっきの声と匂いの正体はここか)

  テオンは早速食べ物を注文した。

初めてホラーぽいのかいたんですがどうでしたか?

手音篤の過去を少しずつですが夢かなんらかの形で出して行きたいと思っています。

今回は少し短めです。もう少し進めたかったけどこの後の文量がかなり増えてしまうのでキリのいいところで今回は切らせていただきます。

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