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短編(超短編)

Moments

作者: 芝田 弦也

誰かに呼び止められた気がした夏の夜。

頭を包むオーバーヘッドフォンを外して後ろを振り返ってみても人の姿は人っ子一人として見当たらない。

視線の先に見えるのはシャッターを閉め切った静まり返る商店街と軒先を照らす街灯の連なりだけ。


ヘッドフォンから零れでる、けたたましいドラムのフィルインの音だけが静かなこの場所で寂しく響き渡る夜。独り静かに声が聞こえた方を見つめていた。


昼間は人込みでごった返し、数メートル先すら人の頭で隠されて見えないメインストリートもこの時間帯なら心置きなく存分に眺めていられる。


確かにいたはずの犇めき合う人々の群れが嘘の様に居なくなって、遮るモノが何一つ無い開放的な空間が目の前に広がり昼間には見る事の出来ない、何処までも一直線に続いてるこの景色にしばし放心していた。



昼間の喧騒とは随分と掛け離れた静かすぎる今。

人も街も眠りについて緩やかな時間が流れ始めている。今、この空間で息をしているのは自分一人だけ。

何もかもが眠りについて寝息を立て始めた。


誰も踏み入れる事の無い、自分だけが感じ入る事の出来る無の場所。

何もかもが起きる事を忘れてしまった、この時。

たった独り、この瞬間の景色と空気を胸に刻んだ。

誰にも邪魔されない自分だけの場所を。


ヘッドフォンから溢れる音が静寂な時をほんの少し色付け、自分で刻む足音だけがこの空間で反響して、誰にも聞かれずに小さくなっていく。

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