第7話 凡人は冒険者登録をする
冒険者ギルドと思われる建物を改めて眺めてみる。
周りの建物と比べて一際大きく作られているので色々な施設が中に入っているのかもしれない。テンプレとして酒場は外せないだろう。
まずは冒険者登録をしなければならない。そこで問題になるのは私がここに住む人たちにとって異世界人であるということである。異世界人が私以外にも来ているのかはわからないし、もし、来ていたとして、この世界でどんな扱いを受けているかまったくわからない。俺TUEEしたチートバカが問題を起こしていたり、モンスター無双をして勇者認定とかされている可能性も考えられる。
しかし私は知ってのとおり、おそらく討伐難易度の底辺にあるであろうスライムから逃げ出したヘタレである。ここは現地人として登録することにしよう。
後は登録試験があるかどうかだ。これは受付で聞いてみてから判断するしかないだろう。
いざ冒険者ギルドへ!
冒険者ギルドの扉を開けて中に入るとそこは想像通りのTHEギルドが広がっていた。
入って正面に受付カウンターが並んでおり、左手には宿泊所の受付、右手には酒場が広がっており、何人かの冒険者達が酒を飲みながら騒いでいた。
カウンターには二人のギルドが職員が受付を行っていた。1人は綺麗な20前後のブロンド白人系女性で冒険者の対応をしていた。もう1人は子供にしか見えないポニーテールの褐色ロリが退屈そうに頬杖をついている。
もしかしてドワーフなのだろうか?しかも女性、ドワ子である。
先に言っておくが私はロリコンではない。だがキレイ系女性だと緊張して集中して話が聞けない恐れがある。
つまりドワ子のカウンター前に並んだのだ。
「……。 用件は?」
ドワ子よ、その接客は大丈夫なのか?心の声を隠し、真面目な顔で用件を伝える。
「冒険者登録をしたいのですが……。」
ドワ子がカウンターの引き出しから登録用紙を取り出し、私の前に置く。
「冒険者登録をすると、商人ギルド、職人ギルド、農業ギルド、教会の所属ができなくなるけどいい?」
そういう決まりなのか。試験はないらしいが、複数のギルドには所属できないようだ。一度深く考えてみる。
商人ギルド……冒険者よりは安全そうな気はするが元手がたいして有るわけではない。三万円で商売?商人をなめるな。
職人ギルド……考えるまでもなく手に職をつけてないためこの年からは無理だろう。知識チート?ポンプとか作れるはずがないだろう。
農業ギルド……土地なんか持ってるはずもなく買える金もない。小作人などやってられるか。
教会……宗教に興味はないし、奉仕活動できるほどの人格者ではないしな。
結局ゲーム好きの私としてはチートがなくてもファンタジーしたいのだ。
「大丈夫です。登録お願いします。」
登録用紙を受け取り、確認する。
日本語で名前、種族、性別、年齢の項目が書かれていた。
名前をどうするか。定番では漢字の英語化などだろうが同じ日本人に見られでもしたらと考えると厨二っぽくて恥ずかしい。
ふとメモ帳が頭に浮かんだ。メモ、ポストイット、チラシ……レジュメこんなとこだろう。
名前にレジュメと記入する。
種族は人族、性別、男、年齢30と記入する。
用紙をドワ子に渡すと、ドワ子はカウンターの後ろの棚から白いバインダーを取り出し登録用紙を束ねた。
高機能でファンタジーなマジックアイテムっぽいギルドカードは存在しないようだ。
バインダーを棚に戻したドワ子はカウンターの引き出しから金属のタグと金属片のようなものを取り出して、タグの上にちっちゃい手のひらを当てる。
「彫金」
手をあげるとタグに文字が掘られおり、左側にタグと同じ色の石のようなものが装飾されているのがわかった。
ドワ子がタグにチェーンをつけて私に手渡す。
「これがギルドタグ、冒険者の証だから首からかけて」
私はギルドタグを受け取り、表面にはこう書かれていた。
レジュメ 人族 男 30才
・無職
・Gランク
・スライムクラス
ナニコレ!?