第5話 凡人は道を選択する
道は見つけたものの、左右どちらの道のほうが街や村に近いかは全くわからない。
なんとか参考になるものはないかと木の上から道の両端を必死に眺める。
道の先にはなにも見えず、運に任せて木の枝でも立てて、倒れた方にでも行くかと思いかけていた時、偶然左の道の脇の草むらのに何か動いているものが目についた。
「なんだあれ? 緑色で草と同化してて良く見えないけどモンスターじゃないのか?」
異世界……
ファンタジー……
緑色……
「ゴブリンかな。どちらにしろ今の私は戦闘力たった5のゴミといっしょだ。右の道を目指そう」
木登りは登るよりも降りるときが危ない。登った時の2倍ほど時間をかけてゆっくりと地面まで降りた。
それから草原を警戒しながらこそこそ歩き2時間位で道まで到着した。
道は地面が踏み固められて出来ており、道幅は3メートルほどあって馬車が走れる程度の幅はあり、人の行き来を想像させた。
「馬車とか通らないかな? でも冷静に考えると言葉が通じるのか? それくらいは異世界転移した補正があって欲しいんだけどな」
そんな事を考えながら右方向へ延びる道を歩き続ける。
道を歩きながら今後について問題点を心の中でメモしておく。
取りあえず1つ目の問題として言葉が通じるのかどうかだ。このまま人にあえずに行けば街か村の門番で異世界人との初会話となるだろう。そこで言葉が通じれば良いがそれは出たとこ勝負にならざろう得ないだろう
もし言葉が通じなければ、そこでどうあつかわれるかはわからないが実際問題チートも持っていない私は一人では生きては行けない。ここは賭けに出るしかないのである。
2つ目の問題としては身分証を持っていないことである。テンプレに従えば、簡易的な取り調べだけで保証金を預けて、冒険者登録したあとに返してもらえるはずである。所持金はあるし、テンプレどおりなら大丈夫なはずだ。
3つ目の問題が冒険者登録をすることが出来るかである。身元、実力を問わず登録出来るのなら良いが、もし試験などがあった場合、非力な地球人でさらに凡人にあたる私など受かる気がしない。
心のメモに問題を上げながら対策を考えようとはするものの、こうだったらいいなといった希望的観測に基づいたものでしかなく考えれば考えるほど不安になってくる。
運が良かったのか、それとも道は冒険者によってモンスターが討伐されているのかわからないがモンスターに会うことはなかった。
歩き続けて数時間、異世界に来てからもう半日以上歩き続けていたがとうとう念願の物が目に入ってきた。
「やっと見えた」
2重の木製で作られた柵に囲まれた村である。
近づきながら良く観察してみると柵は外側に腰の高さ程の簡易的な柵があり、その中のに畑が広がっているように見える。その内側に人の高さを越える立派な柵が見える。
外側の簡易柵まで近付いて周りを見渡すが門番のようなものはおらず、そのまま外柵を通過し、道を歩く。
畑で育てられている作物をみるが、わかるのは小麦、他にはキャベツのような葉物野菜やトマトやピーマンのようなものが実っているのが見てとれた。
午後の仕事も終えた後なのか畑に見える人影は数人程度でどれも歩道から離れたところで腰を下ろして作業しており、話を聞くことは出来なさそうだ。
そうしてとうとう壁のようにさえ見える丈夫そうな柵の前にまでたどり着いた。