第3話 凡人はスライムと戦う
初めてモンスターと遭遇した私だったが、そこで私が思ったことはやっぱり異世界なのだなということだった。
なぜ未知のモンスターと向かいあっているのにそんな事を考える余裕があるかと言うと、このスライムは思った以上に動きが遅かった。
スライムがぴょん、ぴょんとこちらに近づいてきたら、私も一歩、二歩と後ろに下がる。
私は目を離さずに一定の距離を保ちながらスライムと対峙していた。
私とスライムとの戦闘は膠着状態に入っているが倒せる気は一切しなかった。
否、倒そうとすら思っていなかった。
だいたいラノベの主人公達は何故最初から詳しく知りもしないモンスターと自信満々に戦えるのであろうか?
実際、今私はこのスライムと対峙しながらいろいろな状況を想定している。
もしスライムが急に飛びかかってきたり、謎の体液を飛ばしてくる可能性に考慮し、もしこちらから攻撃を仕掛けてこのスライムの体液が酸性だったり、毒を持っていたらどうしようなど想像を膨らませていた。
他にモンスターが近付いていないかと周りをチラ見した瞬間、スライムが私に向かって飛びかかってきていた。
「ぎゃー! さっきまでのちょっとしか跳ねてなかったのに! 筋肉もないくせにどうやってそんなに飛び跳ねることが出来るんだよ!」
想定していたくせにスライムに文句をいいながらなんとか斜め後方に回避した。
後ろに回避しなかったのは目測を誤り、万が一にもスライム本体やもし飛び散った時のその水滴に触れる危険性を避けたためである。
飛びかかってきたスライムは地面に激突したが、飛び散るようなことはなくグミのような弾力があるのかぽよんと跳ねた。
それを見た私はすかさず回れ右をし、
草原を風になり走り抜けた。
スライムから逃げただけです。