第2話 凡人は初めて敵と遭遇する
新たな黒歴史を増やした私はとりあえず現状を確認することにした。
柔軟運動をして体をほぐし、とりあえずその場でジャンプしてみたり自分の姿かたちを確認してみたりしたが今まで30年間連れ添った、何も変化のない自分の姿があるだけだった。
「体型も変わってないし、身体能力も変わってない。変わったのは服装と持ち物だけか」
次に持っていたバッグの中身を確認することにする。
バッグは肩にかけるタイプで背中側をベルトで固定できるようになっており身に付けても動きやすいようになっていた。
とりあえずベルトに引っ掛けてある固定具を外しバッグを降ろし地面に座り込んで中身を確認することにした。
「中にはメモ帳と鉛筆、巾着、水筒、折り畳まれた布か」
もしかして私のカバンに入ってた物が違和感がないように変化しているのだろうか。
メモ帳は少しザラザラした質感の紙に2つの穴が開いており、紐で束ねてあるだけで、鉛筆は太めの芯を2枚の木の板で挟み込んで上下2ヶ所を細い紐で縛ってあるといった構造をていた。
この巾着は財布か?中を確認すると銀の硬貨が3枚、銀の硬貨より一周り大きい銅の硬貨が6枚枚入っていた。
今日の朝のことを思い返してみたところ、コンビニ弁当とお茶のペットボトルを買って3万円弱入っていたはずである。
「銀貨が1万円で銅貨が百円とかなのかな?とすると金貨は百万円とか?もしそうなら都合が良すぎだよな」
水筒がペットボトルのお茶でこの布切れがハンカチかな。
メモ帳が手帳で鉛筆が万年筆だっただろうし、異世界転移の可能性が高まった気がする。
荷物の確認も済んだし今の時間がわからないが日が暮れるまでに人が住んでいるところか、少なくとも寝泊まりできる洞窟のような場所を探さなくては。
そう考えていた時すぐ後ろの草むらから草が倒れる音がした。
緊張と驚きからバッと振り返り後ろを確認すると2~3メートルほど先の草むらに不自然な水色の球体ある。
観察していると本当にわずかに跳ねながらこちらに近づいてくる。
これってあれだよな……。RPGによく出てくる一番最初の敵でゲームによっては強さがかなり変わる有名なモンスター。
そういわゆるスライムである。
これが私が出会った異世界初モンスターであった。